6話「元ニートのおっさん、改めて目標を定める」
まるで鍛冶師が適当に金稼ぎの為に作り上げたであろう、ぐらいの品質だということが素人の俺ですら何となく分かるほどに微妙な剣である。
だがそれでも何か隠された能力的なのがいつか開花されるのではと思い、今の今まで使い続けているのだが一向にその傾向は伺えない。
やはりこの二本の剣はただのショートソードなのだろうか。
というかこんな粗悪品を送りつけてきたモニカには一発重めのグーパンチをお見舞いしてもいいのではないだろうか。
軽くギフト詐欺だぞこれは。訴えたら間違いなく俺が勝てるレベルだ。
そのうえ俺にはどうにもこの剣が魔王に通用するとは思えないのだ。
理由としては既に刃こぼれを起こしているからである。
使い方が悪いと言われればそれまでなのだが、どうにも信用ならないのもまた事実。
……しかしながらギフトについては全く外れという訳でもなくちゃんと良い部分もある。
まずこの二刀流最強セット一式には剣技の才能や戦いの知識、身体能力などのありとあらゆる面を底上げして常人を遥かに凌駕する能力も含まれているのだ。
これについては本当に感謝していて元引きこもりの俺が初めて肉食の魔物に遭遇した時は、体中が震え上がり怖くて怖くて食い殺されるのではないかと心底怖気づいたものである。
だがいざ魔物に剣を向けるとこの体は戦い方を熟知しているような動きを見せて、一瞬の間に魔物を二本の剣で捌くと綺麗な三枚下ろしを作り上げることができたのだ。
「まあ能力に関してはモニカに感謝するが、やはり剣に対しては適当に済ませた感が否めない」
彼女のことを考えてしまい右手が握り拳を作り上げると、ぷるぷると震わせて込み上げる怒りを何とか堪えようと心を落ち着かせる。
「まっ、剣に関してもそうだが今はとにかく仲間だ仲間! 全てはそこから始まるッ! よし……そうと決まればさっそく近くの村か街に行くしかねえなぁ!」
腰を落ち着かせていた岩場から降りて意気揚々と呟くと、色々と考えた末に仲間集めの方を優先的に行う事にした。そして同時進行で試練の塔についての情報を探したり、魔王に対抗できうる可能性を秘めた剣を探すことも目標に。
「うぉぉぉ! やる気が満ち満ちと溢れてきたぁぁぁ! 俺の冒険はこっからだぁぁあ!」
勇者一行から突然追い出された身ではあるが、次の目標を無事に定める事ができると、周囲には女性冒険者が数人ほど歩いていたが、そんなこと気にせずに叫び散らかして右手を天に掲げると自身の冒険を仕切り直すことを宣言した。
「な、なにあれ……?」
「しっ! 絶対に目を合わせたら駄目だよ! ああいうのが魔物よりも一番危険なんだから!」
俺の横を通り過ぎていく女冒険者の二人がそんな会話を小声で繰り広げて暫く歩みを進めたあと立ち止まり、いきなり前傾姿勢を取ると全力疾走の如く走り出して姿を消すのであった。
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