5話「元ニートのおっさん、粗悪品の剣を託される」
「……よし、ことは成した。あとはこれからどうするべきかを本気で考えないとな」
自家発電の為に多少の時間を消費すると今は恐らく昼を過ぎての14時ぐらいであろう。
性欲という沸き立つ衝動を抑えてから近くの岩場に座り込むと、今後のことについて思案を巡らせることにした。
「そもそもの話しだ。俺が正式な勇者にさえなってしまえば万事全て解決なのではないか?」
顎に手を当てながら独り言を呟くと、もしそれが可能であれば面倒な勇者を手助けするという前提の縛りが無くなるので随分と楽になる。それに一年ぐらいこの異世界を旅していたが勇者というのは血筋で選ばれる者ではなさそうなのだ。
「んー……どっかの酒場でおっちゃんが酔っ払いながら言っていたから本当かどうかわからないが、試練の塔と呼ばれる場所が何処かにあってその塔を攻略すれば誰でも勇者になれるとかなんとか言っていた気が……」
ならばその試練の塔さえ見つけてしまえば現状で抱えている問題は解決される訳なのだが、そもそも出処不明の情報に加えて情報提供者が泥酔した中年男というなんとも信憑性に欠けるものであるのだ。一番楽なのは直接勇者のセシールに聞くことなのだが、追い出された手前そうもいかない。
「まあ深く考えても仕方ないし、今は試練の塔がある前提で物を考えるとするか。……となれば今の俺に足りないのは圧倒的に仲間だな」
これは自画自賛するつもりではないが正直に言うと俺は強いのだ。だが幾ら強いと言えどそれにも限度がある訳で、実際魔王がどのぐらいの実力を有しているのかも分からない事から下手な慢心は命取りとなる。
……ならば必然的に仲間は必要だろう。それも俺と肩を並べられるぐらいの最強の仲間を!
一々雑魚を狩らなくとも個々の力で全てを熟せるような理想の仲間を集めないといけない。
「現状やるべき候補としては試練の塔についての情報探しと仲間集めだな。んで時間に余裕があれば俺の剣を……」
やるべき事を一つ一つ口にして言う事で頭の中を整理すると、次に自身の愛刀でもある二本の刀を取り出すと刃先から柄の部分まで舐め回すように観察する。
「これ……どうみても街の武具店に売ってるショートソードだよな……はぁ」
俺が選んだギフトは確か最強の二刀流最強セット一式のはずなのだが、どう見てもこの剣からは最強なんて言う二つの文字は微塵も感じられないのだ。
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