4話「元ニートのおっさん、溜め込んだものを解放する」
「あぁ~……どうっすかなぁ。まさか転生してまで無職になるとはなぁ」
勇者一行から正式に追放宣言されたあと俺はあの場所から逃げるように飛び出すと、最早この街には長居できないものと考えて近くの村や街に一先ず避難しようと、そのまま街を飛び出すと道なりに沿うようにして歩き始めたのだ。
周りを見渡せば商人らしき男が馬車を引いていり、傷だらけの冒険者がクエストの報告をする為にギルドへと足を運んでいたりと、この辺はまだ俺が先程まで滞在していたカナリウムという街に近いこともあり人通りも多いようである。
「はぁ……。取り敢えず魔王を討伐しないと俺の願いが叶えられることはないし……やっぱり討伐は必須事項だよなぁ」
無職に返り咲いたことに対しては特に危機感も焦りもないのだが、如何せん魔王討伐の決め手でもある勇者から直々にクビ宣告をされると俺としても今後どうするべきかと思い悩んでしまう。
そもそも勇者一行が強くて勝手に魔王を討伐さえしてくれれば何の問題もないのだが、あの三人では精々魔王軍に占領された土地を開放するが手一杯で、肝心の魔王には運良く遭遇しても赤子の手を捻るように返り討ちに遭うのが目に見えて分かる。
何故なら彼女らは明確に断言して弱いのだ。それはもう物凄くだ。
確かに魔物とか人間が相手ならば余裕で勝てるぐらいの力は有している。
だがそれでも到底魔王なんぞという相手には勝てないだろうと、俺は自らの命を差し出して賭けてもいいだろう。
その証拠に俺が大物の相手を敢えて残している意味すらも彼女らは理解出来ていないのだから。
そもそも雑魚を率先して倒すのには理由があり、彼女らが余りにも実力不足だから少しでも体力や魔力を消費させない為であるのだ。
まあ端的に言うのであれば俺が雑魚を狩ることで、無駄に体力や魔力を消費させることなく万全な状態で彼女らを大物とよばれる魔物と対峙させていたのである。
つまり俺が抜けたことであの勇者一行は持って二、三ヶ月ぐらいであろうと予想できるだろう。
そのあとは死者が出るか……下手をすれば全員死ぬか。
もしくはオークに捕まり性奴隷として一生を過ごすかのどれかだろう。
「うーむ、アイツら性格はともかく顔と見た目だけは良いからな。奴隷となればまず殺されることはないだろう」
そんな事を呟きながら勇者一行の今後を密かに気に掛けると、徐にズボンのポケットから一枚の下着を取り出して空に掲げてじっくりと眺め始める。
それは女性物の下着であり色は黒で持ち主は、あの女性大好き勇者様の私物であるのだ。
実はカナリウムの街を出る前に勇者一行が寝泊まりしていた宿屋に立ち寄り、光の速さで全員分の下着を拝借していたのである。
「セシールのやつは貴公子っぽいから清楚な白色を履いていると思ったが……。意外とムッツリなのかも知れんな」
天に掲げて太陽の光と外の空気をたっぷりと下着に吸収させたあと、周囲に顔を向けて様子を伺うと近くに人の気配が無い事を確認した。
そして人が通らなさそうな場所へと一旦移動すると取り敢えず男として、女性の下着を手にしたならば一度はやらねばいけない行為に手を染めようと考えていた。
そう、クンカクンカである! 生前の俺では絶対にできない行為である!
「よ、よし……やるぞ! 性格はクソでも美女が履いていた下着だ。ならば充分にイケるッ!」
下着の端を掴んでいた両手を震えさせながら少し広げると、いよいよそれを自身の顔へと近づけけ始めていく。
「うぉぉぉ! 俺はやるぞぉぉお!」
叫びながらセシールの下着へと顔を一気に近づけて堪能すると、その下着からは果実のような甘い香りが最初に漂い、最後は妙に酸味の効いた謎の匂いが鼻腔を突き抜けていく。
「くっ……! これは今の俺にとって宝剣や魔剣といった伝説級の武器にすら匹敵する品物だなっ!」
妙な背徳感と童貞特有の底なしの性欲が体中に沸き起こる感覚を受けると、自身の下半身が爆発寸前なことに気がついて一旦頭の中をリセットする意味も含めて致すことにした。
無論だがオカズは彼女らの下着である。
身勝手な考えで俺をパーティーから追い出したのだから、これぐらいはしても許されるだろう。
てか誰に止められようとも俺はする。絶対に確実にだ。
――そう決心すると生前の頃から親友の右手をわきわきとさせて高鳴る鼓動を抑えつつ、人が来ても絶対に見付からないような茂みの奥へと進んでいく。
そして周りに生い茂る新鮮な草木の匂いを肌で感じると、一気にズボンを脱ぎ下ろして俺は自然の中で自慢のマイサンを開放するのであった。
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