2-2
寝坊したし待たせるのは悪いとは思うが、妙齢の女として、いや人として汚れたままの姿で相対するわけにはいかない。きっと警戒心が足りないと呆れているだろうが、これは譲れない。
できるだけ急いで髪と身体を洗い、シャワーを浴びた。
着替えて洗濯機を回し、化粧水と乳液だけつけてドライヤーで髪を乾かす。
ある程度乾いたところで適当に髪を結う。
急いで居間に向かった。
居間に入ると、彼は窓際に
久しぶりに風を感じているらしい。
それならよかったと紫翠は微笑む。
「鬼さん、ごめん、お待たせ。すぐ朝食を作るからもう少し待ってて」
「は?」
驚いた様子の彼を置いて隣の台所に行く。
ご飯は昨日のうちにセットしておいたのですでに炊けている。あとは味噌汁と魚くらいでいいだろう。確か漬け物も冷蔵庫にあったか。
考えながら冷蔵庫を開ける。
鮭を取り出し、魚焼きグリルで焼く。
やかんに水を入れて火にかけた。
今日はもう味噌玉にしよう。
そこで、はっとする。
少し慌てて居間に顔を出し訊く。
「鬼さん、味噌とか豆腐とかって平気?食べられる?」
「平気だが……」
「そう、よかった」
ぱっと笑顔になり、台所に引き返す。
食器棚から二人分の食器を取り出す。彼のための食器も悩みに悩んで買っておいたのだ。
グリルを開け、魚を引っくり返してまた閉じる。
それからぱたぱたと居間を通り抜け、仏間に入った。仏壇にあげてある茶碗とコップを下げて、また居間を抜けて台所に戻る。
茶碗とコップの中身を空けて軽く洗って拭く。
茶碗にご飯を盛り、コップに水を注ぎ、それらを持って再び居間を抜けて仏間に。仏壇にそれらを供えて線香を上げ、りんを鳴らす。
目を閉じて手を合わせ、心の中で彼のことを報告した。
それからまた居間を通って台所に戻るとちょうどお湯が沸いていた。
冷凍庫から味噌玉を二個取り出してお椀に入れ、火を止めたやかんからお湯を注ぐ。残ったお湯は魔法瓶に入れておく。
魚を確認するとちょうどいい具合に焼けていたので火を止め皿に載せた。
冷蔵庫から漬け物を出し、小皿に盛る。
お椀と魚の載った皿と漬け物の載った小皿をお盆に載せて居間に運ぶ。
「鬼さんお待たせ。えっと、ご飯は自分で盛る?適当に盛っちゃっていい?」
「……………………頼む」
「うん」
お椀と魚の載った皿と漬け物の載った小皿をテーブルの上に並べてお盆を持って台所に戻る。
茶碗に適当にご飯をよそい、箸と箸置きとともにお盆に載せ居間に運ぶ。
茶碗を置き、箸置きと箸を並べたところで、
「あっ、お茶!」
台所に取って返す。
お茶を入れて戻るとまだ窓辺にいる彼に声をかける。
「鬼さん座って。これからのことは食事の後に話し合おう?」
「……ああ」
諦めたような顔で返事をし、彼が向かい側に座る。
「いただきます」
食事を始めた。
***
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