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真っ赤な口紅を引く。他の化粧はしない。汗をかいてひどい状態になるだけだし、疲れて化粧を落とす気力があるとは思えない。


左手首にはアメジストと水晶とスモーキークォーツを連ねたブレスレット。

耳元では紫色と緑色のフローライトのイヤリングが揺れる。


守りは万全にしておきたい。とはいえ、背中の中ほどまである、染めていない髪は、邪魔にならないように三つ編みにして赤いゴムで結んでいるだけなのだが。

動きやすさを重視したシンプルなシャツとパンツの上に赤いストールをふわりと羽織れば、準備は完了だ。


戸締まりと火の元だけしっかり確認して、玄関でスニーカーを履く。

カンテラ型のライトと必要なもののみを入れた巾着を持ち、玄関の引き戸の鍵をしっかりとかける。鍵を巾着袋にしまった。


一つ深呼吸をする。


「行こう」


期待と不安に高鳴る胸を抱え、菅原紫翠すがはらしすいは一歩を踏み出した。


***

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