第3話 魔王城居住者が増えた

マリウスが目を覚ますと、そこは檻の中だった。


「え?なにこれ」


腕は鎖で繋がれ、足は地面に埋まっている。


「目が覚めたか」


マリウスが顔を上げるとそこには、背中に黒いコウモリの様な翼を生やし、尖った耳をした褐色の男が立っていた。


「ん〜と、誰?あ、もしかして早速お命ちょうだいされちゃう感じ?!」


「いいか、こちらの質問だけを応えろ。さもないと命はないと思え」


「うぉぉ!やっぱりお命ちょうだいされちゃう感じだ!!」


マリウスが1人で盛り上がっているのを見て、褐色の男は少し引いている。


「お、おかしな人間だな。まぁいい、今の人間界の様子を教えろ」


「え、しらん」


「は?」


「しらねっす。もう何年も帰ってないので」


「…使えない奴め」


褐色の男は呆れる。そして置いてあった長い剣を抜こうとする。


「あ、でも今度勇者の凱旋パーティーをやるって聞いた気が」


その話を聞き、褐色の男は剣を鞘に収める。


「本当か?」


「ん?あれ?あ、違うわ。2年前の話だわ」


「ぶち殺す」


褐色の男は鞘から剣を抜く。

そしてマリウスに突き刺す。が、そこにマリウスは居なかった。


「は?」


「ざんねーん。当たりませんでした〜」


マリウスは地面ではなく天井に立っていた。


「お、お前吸血鬼か?」


「のんのんのん、人間さぁ」


「くそっ、くらえ」


マリウスに当たらない。


「くらえくらえくらえ」


「あっれれ〜?当たんないなぁ」


「ぐっ、貴様ァ」


すると褐色の男が詠唱を始めた。

その時。


「ガレン〜人間は起きたかしら」


奥から桃色の髪色をした女が出てきた。

そして褐色の男はガレンと言うらしい。


「あぁ、起きた。だがなかなかのやり手の様だ。魔王領に来るだけあるぞ」


マリウスは桃色の髪をした女と目が合う。


「あら、中々のイケメンじゃない」


桃色の髪をした女が近寄って来る。


「初めましてお兄さん、私はパメラよろしくね」


「おう、よろしく」


マリウスはパメラと握手を交わす。

するとマリウスが黒いモヤに包まれる。


「男なんてサキュバスである私の前では無力よ」


「その手があったか」


ガレンが関心する。

モヤが晴れると、そこには─


「!居ないだと?!」


「えぇ?!」


そこにマリウスは居なかった。

そして、檻の中天井には大きな穴が空いていた。


次の瞬間、その穴からマリウスを抱えた碧眼碧髪の少女、マリアが降りてきた。


「チッ、誰…だ…え」


「何よもう!貴方!邪魔しない…え?」


「ヨクネタ…エ」


そしてマリアに抱えられているマリウスも共に─


「え?」


そして再び全員で─


「「「「…え?」」」」


暫くその場は「え?」で満たされた。



「ええぇぇ!貴方新しい魔王城の持ち主なの?!じゃあ新しい魔王様!?

それに核ちゃんも久しぶりぃぃ!もう会えないのかと思ってたわ」


『その呼び方も懐かしいですね』


パメラは、マリアの手を握ってブンブン振りながら驚く。


「嘘だ。人間が新しい魔王だなんて…これは悪い夢だ。きっとそうに違いない」


ガレンは現実逃避。


「ハジメマシテ オデ オーガノ ゴリキ マオウサマ ヨロシク」


ゴリキが俺に異様に発達して太くなった腕を俺に伸ばす。


「おう、よろしくな。俺はマリウス。マリウス・エルドラガーだ」


俺はゴリキと握手をする。


「スゴイ! マリウス オデト アクシュシテモ イタガラナイ マリウス ツオイ」


『貴方達、生きていたのですね』


マリアはパメラから手を話してそう言う。


「なんだ、マリア。3人と知り合いなのか?」


「マリア?」


パメラがマリウスのマリア呼びに疑問を抱き質問する。


「そそ、眼と髪の色がマリア石に似ているからマリア」


「へぇ、じゃあ私もマリアって呼ぶわね」


『はい、それよりあの戦火の中でどうやって生き延びたのですか?』


「あぁ、それはね「オデ アナホリトクイ ホッテ ニゲタ!」と言う訳」


ゴリキが身振り手振りしながらそう言う。


「へぇ、ゴリキすげぇな」


「オデ スゴイ?」


「おう!」


マリウスがそう言うとゴリキはあからさまにテンションが上がる。


「オデ スゴイ! パメラ オデ スゴイ?」


「えぇ、おかげで助かったわ」


「オデ スゴイ! オデ スゴイ! ガレン オデ スゴイ?」


「あーうん。すごいすごい」


ガレンは棒読みでそう言う。


「オデ スゴイ!」


マリウスは落ち込んでいる様子のガレンに近づく。


「え〜と、ガレンだったか」


「…なんだ」


「俺は魔王になる気はないからお前がなっていいぞ!」


「貴様!人間の分際で魔王に選ばれたのにならないだと!ふざけるな!」


マリウスの善意で言った言葉が裏目に出てしまった。

そしてマリウスは心の中で「どっちやねん」と突っ込んだとか突っ込まなかったとか。


『3人共、一応もう一度マリウス様に自己紹介しておいてはどうですか?』


マリアが気を使ってかその様な提案をする。


「ん〜、それもそうね。私たちは元魔王八角が3人、サキュバスのパメラと」


「オーガノ ゴリキ」


「…魔人のガレンだ」


「俺はマリウス・エルドラガー。普通にマリウスでいいぞ」


「じゃあマリウス」


「ん?」


「私たちこれから魔王城に一緒に住まわせて貰うわね!」


パメラの提案に少し悩んだマリウスは、マリアに目を向ける。


『…いいのでは?』


「ん〜じゃあ、マリアもそう言っている事だし、まだ修復も何にもして無いけどよろしくな!」


マリウスは特に魔王城で暮らす等は考えていなかったが、一緒に住む仲間が出来たことで魔王城に住むことを決心する。


「なら早速帰って修復作業始めるか!」


『ですね』


「ヒサシブリ ノ マオウジョウ オデ ガンバル」


「ふん」


「レッツラゴー」




〜〜〜〜〜〜

オデ ネムイ







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