第3話 紺、かくれんぼ。

ご主人様とくらし始めてから1週間が経った。

ご主人様はほぼ毎日、朝から夕方まで家にいない。寂しいが、ご主人様に迷惑はかけたくないし、何より嫌われたくない。

「紺、行ってくるね。」

今日は、玄関でご主人様を見送った。

今までは、お留守番の間リビングにしかいられなかった。

どの部屋に行けても、ご主人様がいないんじゃ寂しいのには変わりない。

僕は寂しい気持ちを抑えながらご主人様を見送った。



ご主人様を見送ってから時間はどれくらい経っただろう。

僕はいつもの定位置であるソファで寝たり、ご主人様が用意してくれた餌を食べた。

それでもご主人様はまだ帰ってこない。

早く帰ってこないかな…。

外を眺めるとお日様はまだ真上にいる。

いつもはお日様が見えなくなりそうな時間に帰ってくるから、ご主人様が帰ってくるのはまだまだのようだ。

せっかくお留守番の間もいろんな場所に行けるようになったし、ほかの部屋に行こう。そう思って僕はリビングから出た。



洗面所、キッチンと回ったが特に面白そうなのは何もなかった。

それより、物を落としたりするとご主人様に怒られるから何もできなかった。

最後にご主人様の寝室に入る。

いつも夜は一緒にベッドで寝ている。

早く帰ってこないかな…。

そんなことを考えながら、いつも寝るときみたいにのそのそと布団の中に潜り込んだ。

そこで僕の意識は遠のいていった。




カタカタと物音がする。

ご主人様帰ってきたのかな…?

「紺、どこなの…。」

ご主人様の声が近くから聞こえた。

僕はもぞもぞと布団から出て、ご主人様に返事をした。

「紺…?」

涙を浮かべたご主人様が、驚いたかのように僕を見つめてきた。

「ニャー」

僕の返事で僕がいると認識したのか、初めて会ったときみたいに優しく抱きしめてくれた。

「紺っ、どこにいたの!心配したんだから…!」

「ニャー」

おかえりなさい、ご主人様。

ご主人様が帰ってきた。僕は嬉しくてご主人様の頬にすりすりした。


あの後、ご主人様が僕が布団の中で寝てたと分かり安心しきった顔で笑っていた。

何でそんな顔で笑っているのか分からないが、ご主人様が嬉しいなら僕も嬉しい。

この日からお留守番の間は布団の中で寝るという僕の新たな日課ができたのだった。

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