第5話 きっかけ
「もしもし陸太?」
紗耶の泣きそうな声が耳に響いた。
「もしもしどうした?」
陸太はそんなそっけない返事しかできなかった。
「ねえ、もう一回あつまらない?」
紗耶が単刀直入に言ってきたので驚いた。
陸太は正直嬉しかった。戻らないかもしれないけれどやっぱり戻りたいののが本心である。そのきっかけの電話をしてきてくれた紗耶に心底感謝した。あんな状態から連絡してくるのは勇気が必要だったに違いない。
しかし、
「俺はいいけど、雄也がなんて言うかだな。」
本心とは裏腹に、正直な気持ちが話せない。
「あのあと、雄也と言い合いになったんだよ、、、」
紗耶は、俺が怒って帰ってからの居酒屋での2人の様子を話してくれた。
どうやら、過去にしたことがないくらい言い合いになったらしい。
「何で陸太は怒って帰ったのよ!」
「あいつが俺に喧嘩を売ってきたんだ!」
そんな言い合いを30分くらいしたあと、
「もう一生会うことはないだろうね。」
と言い残して紗耶は居酒屋をでたらしい。
「それで、すごく反省したの。せっかく楽しみにして集まったのに、みんながバラバラになっちゃって。この1週間、息子にも変に当たっちゃって。やっぱり仲直りというか、もう一度遊びたいなって、、」
紗耶は電話越しでもわかるくらい泣いていた。
陸太もこの1週間は辛かった。紗耶も同じ気持ちだったんだなと安心した。
そしてやっと本心が言えた。
「俺もあんなこと言って悪かったと思っている。紗耶が来るまでにあんなに喧嘩しててごめんな。やっぱりもう一回集まろう。雄也がいやだって言っても説得する。」
紗耶は嬉しそうに
「うん!」
と言った。
紗耶から、
「この前の居酒屋でいい?」
と聞かれたけれど、中学生の当時に集まっていた場所の方がいいなと思い
「あの、鬼ごっこしていたサトウキビ畑にしよう!」
と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます