第11話
ちよこ4
美紀先生の教育実習期間の終了がとうとう明日に迫っても、私にわかった事と言えばニュースって集中して観ると意外と面白いって事位だ。
いったいどこで間違えたのか、いつのまにかジャニーズのNEWSの大ファンになっていた尚美が携帯画面から視線を外さないまま話しかけてきた。
「ねえねえちよこ、あんたの生年月日教えてよ、すげー良く当たる占いサイトがあんだよね」
「尚美って本当に酷いよね、この前教えたばっかじゃん私の誕生日忘れる人ってあんまいないんだけど」
私の言葉を完全に無視して尚美は携帯をいじり続ける。
「あっコレ相性占いも出来るんだ、ちよこ占ってやるからついでに、テストメガネの誕生日教えなよ」
「誕生日とか知らないよ、それにテストメガネって失礼な呼び方やめてくんない」
言いたい放題の尚美の肩を叩いて言うと、佳緒がお腹に手をあてて笑いながら近づいてきた。
「ほんと仲いいよね、ちよこと尚美って!ねえ尚美、私とアキラ君の愛称占いって出来るかな?」
「彼が何か隠し事してるかも…良く話しあってみてだって」
とてもサイトで調べたとは考えにくいあまりに早い切り返しで尚美から発せられた言葉。
その占いの内容に驚いて尚美を見ると、今までに見た事のないような真剣な眼差しで佳緒をみていて、余計に驚かされる。
「ちょっと飲み物買ってくる」
尚美がそう言い残して席を離れたのだけど、尚美の使っている机の上に置かれた水筒のふたには、最近の尚美のお気に入りの痩せるお茶がまだなみなみと入っていた。
「尚美って本当にいい子だよね、他の子はこそこそ噂してるだけだったのに」
「噂って何?」
聞いちゃいけない、聞かなきゃいけない。佳緒の今にも泣き出しそうな笑顔が、私の中に両極端の2つの気持ちを湧き上がらせる。
「アキラ君に私が二股かけられてるって噂だよ。まあ実際そうだったから噂じゃないんだけどね。女の子と手繋いで歩いてるの見たって子がいるんだってって問い詰めたら、私がなかなかヤラセテくれないから、もうめんどくさくなったって…風見鶏の話もよくあんなの信じたねって笑われちゃった」
「笑わないで!そんな悲しい事言いながら笑わないでよ佳緒!」
今このタイミングで私が先に泣くのは酷い事だって分かっているのに涙を止める事が出来ない。
「何で私が泣いてないのに、ちよこが泣くの?同情してんのなら止めてよ」
「同情なんかじゃない、佳緒がどんなに辛いかなんて私にはわかんないし、ただ何か悔しい…悔しいよ」
こんな人目の多い場所で佳緒の迷惑も考えず、子供みたいに泣いてる私を佳緒が黙って抱きしめて来る。
「あんたら何二人して泣いてんだよ」
尚美が佳緒目当てで心配そうに近づいてくる下心男子達を蹴散らしながらそう言うと、私の大好きな炭酸ジュースとお茶を両手に持ったまま抱きついてくる。
私達三人は、まぶたが膨れ上がり、嗚咽が自分の意思で止められなくなるほど、ただひたすら泣いた。
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