太陽系の実情
剣『そういう訳で、新たな宇宙規模の連合が発足したんだけど、ここでお決まりの出来事が起こった』
チ「嫌な予感がするにゃあ……」
剣『主要四か国が主導権の取り合いで喧嘩を始めた』
チ「人の歴史は業が深いんだにゃあ」
剣『その結果、科学型であるアーカム連邦とライオーグ連邦が同盟を組み、魔法型であるブランディールとエクスフィリアが組んで再び大戦がはじまった』
チ「歴史は繰り返されるんだにゃあ」
剣『その戦いはいくつもの星系国家に跨って戦ったが、力は拮抗していたので、戦況が膠着状態に陥っていたんだ』
チ「これは長期化待ったなしなんだにゃあ」
剣『その通りで、元々宇宙の戦争は長期化しやすい傾向にあったんだけど、20年ほど戦っていたら、事件が起きたんだ』
チ「どんな事件かにゃあ?」
剣『アーカム連邦の脇腹とブランディール連邦の脇腹を繋ぐ航路が発見されたんだ』
チ「??? どういう意味かにゃあ?」
剣『わかりにくいかな? 例えるならアメリカとロシアがあるだろ?』
チ「あるんだにゃあ」
剣『東西冷戦中にワシントンとモスクワを繋ぐ地下トンネルが発見されたようなもんなんだ』
チ「……………………とんでもない話しなんだにゃあ! 何でそんなトンネルが今まで見つからなかったんだにゃ! 絶対おかしいんだにゃ!」
剣『これにはこの世界で使われている『アウローラ航行』というのにかかわってくるんだけど、それは後程説明するとして、その結果、互いにこの航路を奪い取ろうとしたんだが……』
チ「奪い取ろうとして?」
剣『その航路に太陽系があったんだ』
チ「間が悪いんだにゃあ!」
剣『そう、非常に間が悪かったんだ。当然ながらこの太陽系を如何にして奪うかが、双方の焦点になったんだけど、もう一つ大きな問題が起きることがわかったんだ』
チ「な、なにがあるのかにゃ?」
剣『この星系で戦うと戦争との経済均衡が崩れてしまうこともわかったんだ』
チ「……経済均衡?」
剣『25年も戦い続ければ、普通は経済が圧迫して停戦になるんだけど、それが出来たのは経済的にほど良いバランスでもあったからなんだ』
チ「……ほど良いバランス?」
剣『例えば、現在起きているウクライナとロシアの戦争なんかがわかりやすいんだけど、ウクライナは勿論のこと、ロシアの経済も恐ろしいレベル圧迫していて、困窮しているのが実情だろ?』
チ「あれは大変なんだにゃあ」
剣『これが例えば物凄く小規模な小さな島での取り合いだけに終わっていたら、むしろロシアは潤っていたんだ。何しろ兵器とか食料とか大量に消費するから』
チ「わかったにゃ! 宇宙戦争はしていたけど、むしろ経済的には好影響だったんだにゃ!」
剣『そういうこと。長期化することで返って好影響があったんだけど、もう一つ星系が加わっちゃうと、そこの取り合いをする戦力を割かないといけないんだけど、それをやると経済的に持たなくなるんだ』
チ「これは難しいんだにゃ!」
剣『互いにそれがすぐにわかり、なるべく戦力を温存して戦わないと行けなくなった。そこで、あることを持ちかけることにしたんだ』
チ「な、何かにゃあ? 不安なんだにゃあ……」
剣『太陽系に対して、『援助するから俺らの代わりに戦え』ってね』
チ「発想がジャ〇アンなんだにゃあ!」
剣『その結果、地球の全ての国々が双方からの圧力が加わることになり、究極の選択を叩きつけられることになったんだ』
チ「絶対にそっちよりも難しい選択だにゃあ! どっち選んでもハッピーエンドになりそうもないんだにゃ!」
剣『だが、一方でこれは地球にとってもチャンスでもあった』
チ「……どうしてそうなるんだにゃあ!」
剣『だって平穏な時なら問答無用で植民地化されるだろ?』
チ「……………………あっ……………………」
剣『彼らの方が経済力の戦闘力も桁外れなんだから、どう頑張っても敵うはずがない。ところが、双方が援助する事で、相手の技術を学ぶ時間も出来たし、独立の芽も出てきた』
チ「……それにしたって酷い話しなんだにゃあ! 自分たちが優れているんなら善意で援助すべきだにゃあ!」
剣『そんなお人よしを当てにしてる時点で国の運営は成り立たないよ?』
チ「にゃ、にゃあ……」
剣『世界は厳しいんだ。そんなことを当てにしてる時点で甘えた子供の発想なんだ。むしろそういったチャンスを得られた時点で幸運に思わないと』
チ「世知辛いんだにゃあ……」
剣『行動しない者には何も言えない。自分の足で立つ国家がどれだけ難しいことか。そんなわけで地球の国々がやるべきことは一つ!』
チ「それはなに?」
剣『戦って独立を勝ち取ること。自由を勝ち取り、自分達で星系国家を作ること。このために色んな事をやってる所から物語は始まるんだ』
チ「こ、怖いんだにゃあ……出来るかわからないんだにゃあ……」
剣『出来なければ植民地になるだけ。自分達の自由も尊厳も無くなって搾取されるだけの世界になる。こういう時は腹をくくって戦うしかないんだよ』
チ「ウクライナの人が聞いたら何と言うか……」
剣『いや、あそこが今、完全にこれと同じ状況だから! ロシアから搾取されるだけの『邦』に戻るのか、自分達で道を切り開く『国』になるのかの瀬戸際なんだから! まあ、外野である日本人がとやかく言う権利はないけど、侵略戦争には常にこういった選択が迫られているんだよ』
チ「戦争なんてやりたくないんだにゃあ……」
剣『それはみんな一緒だよ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます