第79話 俺の故郷

翌日早朝、結局【新二】は眠れず。短い間だったがお世話になった【寝ずの間】の机を整理し、村の南門へと向かう。


村人達は皆寝静まっており、誰もいない通りを歩いていく。

 思い返せば、此処にいた期間は四ヶ月と少し程になるだろうか、今は立派な【駐在所】も始めは廃墟同然にボロボロで、村人達は痩せこけ。日々【獣】や【魔獣】に怯えていた。

 鍛冶屋も商会もなく、人々は錆び錆びで刃こぼれしたナイフを使って生活しており。食べ物もなく、森の木一本切るだけでも命がけだった。

 だが、今では村は大きく頑丈な丸太杭をセメントでコーティングし、白く綺麗で強い壁に囲まれており、大通りには酔っぱらって道端で眠っているオッサンもいる。

 たった数ヶ月で凄まじい変わりようだ、【新二】は昔の風景と今の発展した風景を交互に思い浮かべ、小さくニコっと笑いながら気が付けば村の南門へ着いていた。


「見送られるのが気恥ずかしくて早朝にしたんだけどな」


そこには【新二】がお世話になった村人や【ロモッコ】達が待っていた。


「どれだけ一緒にいたと思ってるの?【マエダ】君の思う事くらいお見通しよ」


【ロモッコ】はそう言って【新二】に何かを投げ渡す。


「これは【四等兵士】のバッチじゃないか?!。何故・・・」


「それはこれまでの【マエダ】様の功績を、ワシが【ロモッコ】ちゃんにお願いして形にしてもらった物じゃ、貴方様がこの村を見捨てなかったから今のワシ達と村がある。ありがとう・・・」


「【ロゼッタ】さん・・・」


集まった皆全員が【新二】に向かって深く頭を下げた。


「バカ野郎!!。そんなのされたら涙でるじゃねえか・・・」


【新二】は咳き込みながらも門をくぐり抜け、振り返らずに一旦立ち止まる。


【ここ【ファイゼ】村ワァアアア!!】


突然の事に【ロモッコ】を始めとする村人達は何事かと【新二】を見つめる。


【俺の故郷ダァアアアア!!】


【新二】は【正炎】を具現化させ上空に高く赤い炎を打ち上げ、直ぐに霧散させて【千時】を具現化させる。


「【千時】・・・頼む・・・」


【千時】から放たれた鋭い緑の斬擊は赤い炎を空中で粉々に切り裂き、美しい緑の風と赤い炎の大輪を咲かせる。


【【【【おおおお!!】】】】


それは今の実力で出来る【新二】の精一杯のお礼だった。

 「いつかもっと強く、偉くなって帰ってくる」そう【新二】は自分自身に言い聞かせ、足取り軽く【帝都ハイドラ】を目指し歩いて行ったのだった。


               第一部完 


あとがき


ここまで白黒のコインを読んで下さり誠にありがとうございました。私の諸事情により、この先この作品を書き続ける力が無くなってしまい。切りのいいここで第一部完とし、区切りをつけたいと思います。

 作品をここで終わらせる理由としましては、リアルの仕事が忙しい時期に入ってきたのと、頭の中にある別の作品を書来たいと言う要求でこの作品に集中が出来なくなってしまったからです。

 ここまで読んで、続きを楽しみにして下さった方々には申し訳ありませんが以上の理由でここで物語を一時終らせていただきたいと思います。


最後にここまで読んで下さり誠にありがとうございました。また力が沸いてきたら続きを書こうと思います。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白黒のコイン 木登りブタ @KOMORU0316

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ