第77話 ファイゼ村のようでファイゼ村じゃない
この一月での【ファイゼ】村の成長、それは一言言って「何処の発展途上国だ!!」っと、思わず何度【新二】がツッコミを入れた事だろう。
まず、始めに【第五兵士団】が安定して【ファイゼ】村に演習をしに来る事により、村の安全性と名前の周知、更に取引できる商会や町村が増え、【メール】が会長を勤める【フィフス】商会がボロもうけ状態になった事が始まりらしい。
【メール】は売り上げた利益の大半を迷惑かけたお礼として村の人々の生活向上の為に使った。すると【ファイゼ】村に住めば様々な生活のサポートを受けられると一気に噂が広がり、連日村に移民の渋滞が起きるようになったのだ。
すると当然【ロモッコ】達や村人達の自警団では頻発する村の揉め事を押さえきれない。村の治安の悪化は【第五兵士団】の演習にも影響すると考えた【チェイン・リザード】団長の指示により【ファイゼ】村は事実上【第五兵士団】の管理下に置かれる事になったのだ。
だがそんな事をすれば当然今まで村を支えてきた【ロモッコ】達が新たに派遣された兵士より地位が低くなり、村人と派遣された兵士との間で揉め事が起こると【チェイン・リザード】団長に【ロモッコ】は伝え、大胆不適にも今【ファイゼ】村にいる兵士全員の階級を派遣される兵士達に負けない物にするように要求し、その代わりに村の上げる一部の利益を【第五兵士団】に納めると言ったのだった。
【チェイン・リザード】団長は塾考の末にその提案を承諾。【ロモッコ】は【五等兵士】となり、目的であった【兵士長】に昇格。更に【第五兵士団】という後ろ楯を得たのだ。
【ケインズ】は【四等兵士】まで昇級し【副兵士長】。【サクマ】は村の食と【薬草】【魔草】の研究成果もあって【ケインズ】と同じ【四等兵士】まで昇級。【ダース】は【新兵】だったので【二等兵士】まで昇級。
「と言うのが大まかな出来事ね」
事実上【ファイゼ】村は【第五兵士団】に乗っ取られたような物だが、肝心な中身はこれまで通り【ロモッコ】が指揮をしている。
複数あった結末の中でも最善の道に行き着いたのは間違い無く【ロモッコ】の村を思う気持ちだろう。
「そうかぁ・・・そうか、よかったなぁ・・・」
【新二】思わずゆっくり笑顔で言う。
「それで【新二】君はどうするの、勝手とはいえ、一様私に報告してから旅立ってるから席はあるけど」
「まるで俺が居ても居なくても良いような言い方だな」
「当然でしょ?、今まで行方不明になっていたんだから。だけどもし戻るとなったら貴方は必然的に【第五兵士団】に所属する事になるわ、それは諦めてちょうだい・・・」
【ロモッコ】の言い分は最もだ、【ファイゼ】村は形式的には【第五兵士団】の管理下となっている。そこで働くとなれば当然【第五兵士団】所属となる訳で・・・
「そうだな、【第五兵士団】に入るのも悪くはない。【ワイド】や【シリウス】さんもいるしな」
その声に【メール】や【サクマ】、【ダース】は喜んでいる。だが、【ロモッコ】と【ケインズ】は無表情だった。まるでこの後【新二】が言う事を知っていたかのように。
「だが、それは旅立つ前の話だ。俺は【ファイゼ】村を出ていくよ」
「それは何故ですか【マエダ】さん!!」
【メール】が机に乗り出して【新二】に訴える。
「俺は気付いてしまったんだ。非日常を求めてるって」
それはひたすら平穏を求めてきた【ファイゼ】村の初期のメンバーにとってはあり得ない事だったろう。
毎日が生きるので精一杯で、金も物資もほとんど無い。森には凶暴な【獣】や【魔獣】が住み着いており、油断すれば村の門を壊して入ってくる。
そんな中、少しでも村に【獣】や【魔獣】が近付かないように森で調査と狩猟を担当していたのが紛れもない【新二】自身なのだ。
「俺はあの【変異種】の一件から森の【獣】や【魔獣】がいなくなり、やっと休めると思った反面。凄く退屈だったんだ、歩いても襲われない、出会う【魔獣】は皆弱い。村にとって、それは良いことだろう。だけど俺にとってそれは生き甲斐を失ったと同然のようにつまらなかったのだ・・・」
「そんな・・・」
【メール】は力を無くし、ガッカリと椅子に座る。
「俺は平和に、安全になった【ファイゼ】村では生きられない。だから出ていく、それだけの事だよ」
「お前ふざけんなよ!!」
椅子が激しく倒れ、【新二】の胸元をつかんだのは青い髪の知らない兵士だった。
「お前がどれだけ【兵士長】や【副兵士長】を心配させたか分かってるんか?。村を安全にするためにどれだけ頑張ってるのか分かってるんか?」
「やめろ【アロト】」
青い髪の兵士【アロト】を止めたのは【ケインズ】だった。
「いや、しかし!!」
「やめろ!!、【マエダ】君は俺や【ロモッコ】、【サクマ】よりも前からこの【ファイゼ】村にいる。それこそ廃村同然で村を守る外壁も無いも同然の頃からだ。彼は誰よりも最初に村に残り、復興させると決めた【ファイゼ】村の兵士だ!!。後から来た【第五兵士団】が口を出して良い事じゃねぇ!!」
ドン!!
机を叩いた【ケインズ】の迫力圧倒され、【アロト】は【新二】の胸元から手を引いた。
「一月で【副兵士長】らしくなったじゃないか【ケインズ】さん」
「今では気楽なお前が羨ましいよ・・・」
【新二】と【ケインズ】はお互いの顔をみて小さく笑った。
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