第69話 敵討ちの約束
【新二】がこの集落、もとい竜王の国【レムホワール】に居候する様になって一週間がたった。
初めは【オズ】だけと稽古をしていたのだが、たまには気分転換にと進められたまま。巨体なドラゴン状態のドラゴンを相手に【新二】は切断性能を落とした緑色の風で戦っていた。
【ギャウウウ!?】
茶色のドラゴンはブレスを放った隙に背後に回った【新二】の斬擊を後頭部に貰い。頭から地面に突き刺さる。
「相手が小さい人間だと油断するから手痛い攻撃を貰うのだ、小さき者にも油断しない心を身に付けろこの半人前が!!」
どうやら外回りを終えて帰ってきたやんちゃ盛りの【新兵】にお灸を据える為の稽古だったらしい。
「【マエダ】殿、感触としてはどうだったかね?」
「まぁ、一言で言えばこいつは本当にドラゴンか?だね」
地面から頭を引き抜いた茶色のドラゴンが【グルルル!!】と威嚇してくるが【新二】が一睨みすると直ぐに黙り込む。
「ドラゴンは千年まで年を重ねる事に鱗も硬くなる、こやつはまだ生まれて百年も満たない若造。鱗など樹木のように柔らかいわ。ハッハッハ!!」
【オズ】の高笑いによって茶色のドラゴンは不貞腐れたらしく。何処かに飛んで言った。
「じゃあ【オズ】さんの鱗は硬いから【オズ】さんの年齢は千歳を越えているだね」
「まてまて【マエダ】殿、人をそう年寄り扱いせんでくれ!!。我はまだ九百歳でこれでも若手なんだぞ?」
「九百歳で若手ってドラゴン中堅処やご老公なんて何千歳だよ!!」
そうやって他愛無い会話をしていると【新二】はふとした疑問に気付く。
「そう言えば【オズ】さん。俺は森で【シュー】ちゃんと出会った時。赤色の立派なドラゴンが息絶えていた」
【新二】のその言葉に【オズ】の表情が曇る。
「そして俺の深緑の斬擊でも余裕で切り裂けるドラゴンの群れが【シュー】ちゃんを襲ってきた。俺はあんな雑魚が立派な赤いドラゴンを殺したとは思えないんだ」
「・・・・・」
【オズ】は【新二】の言葉に黙り込み、暫く熟考した後。何かを話そうとするが稽古が終わったと思って【シュー】ちゃんが走ってきた為に【新二】に話は今夜集落でと耳打ちし、稽古を終えたのだった。
「いつもすまないな【マエダ】殿、【シュー】ちゃんは例一件以来、【マエダ】殿と一緒に寝ないとなかなか寝付けないようになってしまっててな」
「別に俺は居候させてもらってるタダ飯食らいだから文句は言えないよ」
「【マエダ】殿の食する量など我らにとっては微々たる物、気にする事ではない」
【新二】と【オズ】は【新二】が泊めてもらってる城の部屋から城の外まで移動すると。適当な石に二人は腰かける。
「これは【シュー】ちゃんが何者なのかにも触れる話なのでな、本人から直接伝えるまでは口止めされている事は話せない事を始めに言っておこう」
「ああ、分かった」
「【シュー】ちゃんはタダの集落の子供ではあるが、【シュー】ちゃんの両親は竜王陛下のお気に入りであり、【シュー】ちゃん自身も竜王陛下のお気に入りの子である」
「(タダの集落の子供が両親と共に竜王のお気に入りになる訳ないだろ!!どう考えても竜王の孫娘だよなぁ。となるとタダの集落の子供とは【シュー】ちゃんが呼ばせていたのか?)」
「ある日【シュー】ちゃんのご両親は【シュー】ちゃんの見聞を広める為に、島から内密で飛び立ったのだ。恐らく竜王陛下が反対するのを理解していたからであろう。
【シュー】ちゃんのご両親が何処へ向かっていたのかは分からない、だがその道中て我らの竜王に不満を持つ島の外のドラゴンが【シュー】ちゃんの両親を襲ったのだ。
いくらドラゴンと言えども、普段から戦わぬ者は例え数百年生きていようとも、数十年の集団には叶わぬ事もある。
苦しかったであろう・・・辛かったであろう・・・数百年生きたドラゴンに数十年のドラゴンが傷を入れるには途方もない数の攻撃が必要だ。
恐らく父を囮に母は【シュー】ちゃんを守りながら島へ向かい飛んでいたのであろう。だが島へたどり着く事なく、道半ばで力尽き、そこへ運良く【マエダ】殿が現れたのだ」
「その後は俺が【シュー】ちゃんを襲ってきたきた若いドラゴンを撃墜し続け、ドラゴン拐いと間違われた【オズ】と戦いになったって訳だな」
【新二】は無意識で右肩を左手で触り、【オズ】は申し訳なさそうな顔をする。
「【オズ】さん、どうやら俺はおもってた以上に【シュー】ちゃんを気に入っているらしい、【シュー】ちゃんの両親を殺したクソドラゴン達の住みかは分かるのか?」
「いや、奴らは国をもたぬはぐれドラゴンの集団。決められた居住区を持たぬ為に捜索は困難なのだ」
「じゃあ見つけたら俺にも知らせてくれ、俺に居候させてくれてるお礼と、【シュー】ちゃんに安心して島の外で飛べる世界をプレゼントしたいからよ」
「【マエダ】殿・・・」
【新二】は笑顔で【オズ】の手を取って握手し、【オズ】は顔に似合わぬ涙を流した。
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