第67話 竜の王国
「キューキュー!!」
「ガルルル?」
「キューキューキュー!!」
どうやら【新二】には全くわからないドラゴンの言葉で何かを会話しているらしい。
【グアアアア!!】
【シュー】ちゃんが何かを赤黒いドラゴンに言うと、ドラゴンが周囲の砂や木っ端を吹き飛ばす程大きな声で威嚇する。
【きゆゅゅううううう!!】
それに対し、【シュー】ちゃんも激しく鳴いて抵抗。赤黒いドラゴンはこうなったら実力行使と【シュー】ちゃんを三本指の腕で捕まえようとする。
「お前!!」
【新二】が【千時】に黒い風を纏わせ、その腕をぶったぎろうとするが。【シュー】ちゃんが炎のブレスで赤黒いドラゴンの腕を焼く事で手を引かせる。
【ガルルルゥ!!】
【シュー!!】
それは赤黒いドラゴンが「何するのですか?!」と言っているのを【シュー】ちゃんが「お黙りなさい!!」と黙らせた様に感じる動きだった。
【キューキュ、キューキュー!!】
その後はひたすら何かを必死に伝える【シュー】ちゃん。そしてなにか不服そうだが何故か逆らおうとせずに言われるままになっている赤黒いドラゴン。
【キューキューキュー!!】
やがて何かを命令するように赤黒いドラゴンに鳴くと、ドラゴンは何かを諦めた様子で【新二】の方を見る。
「その方の右腕は申し訳なかったな・・・」
「あんた人間の言葉が喋れるのか?」
「喋れる訳出はない、ただ優れたドラゴンは相手の脳に直接自身の思考を伝え。相手の生物が放つ音や魔力、行動から感情を読み取る事が出来る」
「つまりあんたは俺の脳に直接話しかけ、俺の声から感情を読み取っているって事か?」
「おおむね間違い出はない」
「じゃあ聞くが何故【シュー】ちゃんを狙った」
「それはそなたが我がー」
【シュー!!】
突然【シュー】ちゃんが赤黒いドラゴンに向かって威嚇し、ドラゴンは何かを言いたそうにするが。それを【シュー】ちゃんは再び威嚇して黙らせる。
「コホン・・・失礼した。それはそなたが行方不明になっていた【シュー】ちゃんを連れており、てっきり誘拐している犯人だと思ったからだ」
「(なんか、とって付けたような理由だな)」
「だから我はそなたを殺し、【シュー】ちゃんを連れて行こうとしたのだ」
「へぇーそうなんだ。それでこれからあんたはどうするだ?。【シュー】ちゃんを連れて帰るのか?」
「それは当然の事。だが、その方の腕を無くした詫びもせねばなるまい。悪いが共についてきて貰えないか?」
【新二】は先程まで殺し合いをしていた奴に付いて行くなど余り気が進まなかったが、キラキラした瞳で見つめてくる【シュー】ちゃんに根負けして赤黒いドラゴンに付いて行く事にする。
「本来ドラゴンは己の認めた者しか背にの乗せぬが、今回は腕の詫びもある。さぁ乗るがよい」
【新二】は赤黒いドラゴンの背中に乗り、【シュー】ちゃんも後に続く。
赤黒いドラゴンは翼を空高く上げると一羽ばたきで空を飛び、【ファイゼ】村から見えていた北と西の山脈の境目を飛んで行く。
やがて眼下の森を抜け、草原地帯が広がり。米粒のように小さな動物達が赤黒いドラゴンの存在感に怯えて逃げていく。
そしてその草原地帯も終わりを迎え、海を渡り、アンバランスな程尖った山のある島へ赤黒いドラゴンは飛んで行く。
「そう言えばまだ自己紹介してなかったけど俺は【マエダ】【黒鉄帝国】の三等兵士だ。あんたは?」
「我は【オズ】、又の名を【火山を喰らいし者】と言う」
「火山を喰ったのか?」
「アホを言え、我の炎を見た雑魚が勝手に付けた【二つ名】よ」
「(【二つ名】持ちのドラゴンか・・・そりゃ強い訳だ・・・)」
【オズ】は尖った山の中腹に向かって飛び、やがて横幅30メートルはある滝が見えてくる。滝は山に空いた大きな洞窟から流れ落ちており、【オズ】は器用にその巨体を洞窟の壁に擦らせない様にしながら中を飛んで行く。
洞窟はやがて巨大な集落に繋がっており、洞窟を流れていた川は集落の端にある巨大な湖へ繋がって行った。
「ここは我らドラゴンが暮らす国【レムホワール】だ」
それは人間とは違った美しさのある天然の巨大集落だった。
集落のあちらこちらには名前のわからない美しい花が咲き乱れ、【シュー】ちゃんとさほど変わらない子ドラゴンも複数人でじゃれあう様に遊んでいる。
集落の奥には白い岩石を削って作られたであろう城があり、それは飛んでいた時に見ていたあの尖った山をくり貫いて作られたものと、良く良く観察して気が付いた。
「これから【ザラス竜王陛下】の元へ案内する。くれぐれも不注意で島一つ消し飛ばされないように気お付けてくれよ」
「(不注意で島が消えるってどんな化物だよ・・・)」
【新二】は【オズ】に連れられるまま城の中へ入り、全てがドラゴンサイズで【新二】は自分が一寸法師になったような気分になる。
「【グルルル・・・】(【ザラス竜王陛下】、【オズ】でございます。大至急お伝えしなければならない事と客人をお連れいたしました)」
それは【新二】に気を使っての事だろう。ドラゴンの言葉で言った後に【新二】に向けて翻訳してくれたのだ。
上質な石作りの門が開き、タージ・マハルを思い起こさせるような美しい白い石の彫刻と空間の謁見の間は【新二】から言葉を奪った。
【グオオオオ・・・】
中央の玉座には白い鱗が目立つようになった巨大な黒いドラゴンが座っており、両端には屈強な赤と黄色のドラゴンが立っている。
【グルルル・・・】
【ガルルル・・】
【ギャルルル・・・】
【ガオオオ!!】
【グルルル・・・】
流石に【新二】には伝えられない話をしているのか、翻訳は無しで【オズ】は【竜王】と何かを会話している。
【キューキュー!!】
話が終わるのを待っていられなかったのか、【シュー】ちゃんが【竜王】の元へ走っていく。
「あっ【シュー】ちゃん!!」
【新二】が【シュー】ちゃんを止めようとたった一歩前に出た時だった。
竜王を護衛している赤と黄色のドラゴンから凄まじい【格付け】が放たれ、【新二】の意識が薄れ行く。
【きゆゅゅううううう!!】
それは見間違いかも知れない。【新二】が薄れ行く意識の最後に見たのは【シュー】ちゃんが何か激怒し、【竜王】の護衛の二匹向かって炎のブレスを吐いたのだった。
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