第61話 第五兵士団の剣

「え師匠?!」

「何で貴方様が・・・」

「誰?」


森から村へ戻った【ワイド】【シリウス】【新二】は三者別々の反応で出迎えた人物の顔を見る。


「【シリウス】君【ワイド】君。それから【マエダ】君。【変異種】の討伐ご苦労様。この後は宿舎でゆっくりお休みなさい」


【【お褒めの言葉を頂き誠にありがとうございます】】


【ワイド】と【シリウス】は目の前の老婆に片膝を付いて敬服し、【新二】は訳が解らず自分も敬服するために。片膝を付こうとするとするが、老婆がそれを止めた。


「【マエダ君】、敬服はこの者達が勝手しておる事。そなたまで無理してする必要は無い。話はそなたらが十二分に休息を取った後で聞くとしよう」


【ワイド】【シリウス】は今からでも大丈夫ですと空元気を出していたが、老婆が休息が先と譲らず。二人はペコペコしながら宿舎の自室に入り、ドアを閉めたとたんに倒れ、その場で寝てしまった。

 【新二】は門で待っていた【ダース】、【ケインズ】と共に【駐在所】に戻り【寝ずの間】でまだ頑張っていた【ロモッコ】と【リンド】【サクマ】に無事を報告する。

 そして【ダース】に「これから無理矢理連れてかれそうになったら助けを求めろ」と拳骨を一つ頭に落とし、【新二】は【駐在所】の左端にある【夜の間】で仮眠をとったのだった。


昼過ぎの【空の間】にて。


「それでは皆あつまったようなので話をするとしよう。【第五兵士団】の者達には新ためて名乗る必要は無いが、そうでない者達もいる。だからまず始めに私の自己からするとしよう。

 私は【黒鉄帝国第五兵士団】【剣】【レイナ・ウィーク】と言う者だ」


【剣】


それは帝国の兵士を纏める六人の団長をスポーツで言うキャプテンとするならば、相手チームから得点を取るエース的存在、つまり兵士団の中で最も強い人物に与えられる肩書きである。


「まあ、【剣】と言っても70を越えたただの老婆だ。そう気を使わなくても構わない」


「(ただの老婆が放っていいようなオーラじゃねぇぞこれ)」


【ウィーク】は顔では優しそうな老婆のふりをしているが、眼光は鋭く。ある程度戦闘経験のある者なら気を使わずにはいられない強者の風格があった。

 【新二】は【ウィーク】に得体の知れない恐怖感じ、冷や汗が頬を伝う。


【ウィーク】は本題に入る前に【ファイゼ】村の主だった者の名前を聞きたいのか【新二】を始めとする【ロモッコ】【ケインズ】【サクマ】【サイモン】【メール】【カール】【ロゼッタ】の名前を聞き、今回の件の当事者でもある【ダース】の名前を聞いてから主犯でもある【ジルコニア】に勝手に【ダース】を連れて【変異種】の元へ行き、仲間達を危険に晒した理由を問う。

 その問いに答えた【ジルコニア】の内容は保身に走っているのか余りにも矛盾が多く、【新二】自身も「(何言ってるんだコイツは?)」と思わずにはいられないほど酷かった。

 しかし【ウィーク】は時折罵声のヤジがぶととヤジを飛ばした者に静粛にするよう注意し、何度も何度も頷きながら最後まで【ジルコニア】に話をさせた。


「・・・と言う偶然の連続により起きた事故であり、俺は決して仲間や【ダース】君意図して危険な目に合わせた訳ではありません!!」


【ジルコニア】は冷や汗を下記ながら必死で説明し、仲間達もそうだそうだと相槌を打っている。


「あなた方の言い分は十二分に分かりました、結論から言いますと貴方達は【第五兵士団】の未来を背負うにはまだ幼いと判断します。【剣】の名において【ジルコニア】以下7名の【訓練兵】を実力不足として【第五兵士団】の候補生から除名致します」


【はぁああはあ!!なんでそうなるんだよ、話聞いてなかったのか!!】


「そうよ酷いわ!!」


【【【【そうだそうだ】】】】


【ジルコニア】を含め取り巻き達が騒ぎ、【ウィーク】の「静粛に」を無視して騒ぎ立てる。


【師匠が「静粛に」と言ってるだろ!!】


【ワイド】から放たれた猛禽類を想像させる威圧が【ジルコニア】達の意識を刈り取る。


「少し見ないうちにまた大きく成長しましたね【ワイド】」


「誉めて頂きありがとうございます【師匠】!!」


【ワイド】は気付いていないようだが【新二】が咄嗟に同じ【格付け】で【ロモッコ】達に向かった【ワイド】の【格付け】の片鱗を消さなければ、「ファイゼ」村の代表者達は今頃全員気絶していたほど【ワイド】の【格付け】は強かった。


「しかしもう少し【格付け】を制御出来るようになりましょう。先程も後少しで関係の無い人達を威圧してしまう所でしたよ」


【ウィーク】がわざとらしく【新二】達【ファイゼ】村の人達の方へ視線を送り、【ワイド】は深々と頭を下げて謝罪する。

 【ロモッコ】は若干顔を引き釣らせながら謝罪を受け入れ、【ウィーク】と共に来ていた【第五兵士団体】の何人かは互いに小付きあって意識が飛んでる奴がいないか確認していた。


「さて、【剣】として断罪する時間は終わりました。これからは私達の【訓練兵】が迷惑を掛けたお詫びの話をしないといけないですね」


【ウィーク】のなにか思惑がありそう笑顔に【ロモッコ】は一瞬気が遠くなった。

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