第60話 目覚める力
「作戦はどうします?」
「作戦立てて勝てるような物量じゃないよな」
「ならいっそのこと撤退も視野にいれるか?」
【ワイド】【新二】【シリウス】はそれぞれの考えを口にする。
「逃げてどうこう出来るレベルじゃないでしょ【シリウス】教官!!」
「こうなったら【死中に活を求める】しか無いでしょ」
「それはどういう事かね【マエダ】君」
【死ぬ気で頑張り、新しい力を開花させるってことですね!!】
【新二】があえてふざけたような言い方をすると、八方から一つで【ファイゼ】村を潰せるような塊が迫り、【新二】は全力で深緑の竜巻を起こし、押し潰されまいと抵抗する。
「一つでも止めるのが精一杯だった【変異種】の塊を、八つも一人で止めるなんて無茶だ!!」
「【シリウス】さん・・・無茶でも生きる為にはやるしかないんだ・・・何もせずに死ぬのと、何かをして死ぬ事は、生きる可能性を作る意味では天と地程の差があるぞ」
【新二】の竜巻はまるでガラスの様に数秒で砕け散り、目前にあの塊が迫る。
【そうか・・・これが死中に活を見いだすと言う事なんだね・・・】
【ワイド】の【魔力感知】は命の危機により更に研ぎ澄まされ。冷静に活路を見いだそうとしていた。【ワイド】には八つの塊の中にいる親玉の位置がハッキリと感知出来きており、静かに狙いを定める。
「ありがとう【マエダ】さん。これは最高のプレゼントだよ・・・【
【ワイド】の大弓から放たれた八つの光はそれぞれの塊を撃ち抜き、遅れて10メートル程のの親玉蟻が地面に墜落して息絶える。
「流石【ワイド】さんだ」
「嘘だろ・・・」
【新二】は【ワイド】ならやってくれるだろうと信じており、当然の顔をし。【シリウス】は目の前の光景が信じられないと口をパクパクさせている。
【【【【ガチガチガチガチ!!】】】】
八つの塊は親玉を失った事で統率力を失い、間一髪で【新二】達は助かった。
「また助かったのか?」
「いや、まだ【変異種】の兵隊があんなに沢山残っている。アイツらを全て片付けなければこの事件は終わらない」
【新二】は安堵の表情をしている【シリウス】にまだ仕事はあると伝えて【千時】を霧散させると、上空に飛び回る【変異種】に目標を定め。呼吸を整える。
「(【千時】・・・お前は俺が考案した筈なのに毎回俺の想像を越えて来やがる。だがそのお陰でまた命拾いをしたよ、ありがとう)」
【新二】の脳裏には扇の姿なのにツンデレヒロインのような態度をとる【千時】の姿が浮かび、思わず口元が緩む。
「なぁ【マエダ】君、アイツら変な動きをしてないか?」
【シリウス】が指差しする【変異種】は【ガチガチガチガチ!!】と耳障りな音を響かせながら無数の太い帯状に飛び回り、やがて【新二】達の頭上に落下してくる。
【シリウス】は剣を握る手に力を込め、【ワイド】は大弓を引き絞り標準を定める。だが、二人の行動は【新二】の次の一撃により必要出なくなった。
【燃え上がれ、【
【新二】が振るった風は真っ赤に燃え上がり、爆風となって上空に飛び回る【変異種】を飲み込んだ。
【回れ!!】
【新二】が【千時】を大きく円を書くように回すと、爆炎も円を描くように回りだし、更に多くの【変異種】を炎が飲み込んで行く。
【千時】の炎に飲み込まれた【変異種】は全身を焼かれ、炎を纏いながら森へ落下していくその光景は。たまにニュースで流れる隕石が空中分解をし、無数の炎を纏った欠片となって落ちていく光景にも似ていた。
やがて全ての【変異種】を燃やした炎は何も無かった様に夜空に消え、そこで初めて【新二】は【千時】の絵柄が変わっている事に気が付いた。
「これが【千時・正炎】か」
通常【千時】は大小2輪の風車の花の絵柄となっている。しかし【正炎】の絵柄は大小の打ち上げ花火の絵柄となっており、纏う魔力も深い緑色から赤に変わっている。
「【マエダ】さん!!それが新しい【千時】さんの力ですか!!」
【ワイド】がキラキラした目で【新二】の持つ【千時】を見つめる。
「ああ、これは【千時】が風でなく炎を操る様になった姿、【千時正炎】まだ完璧には扱え無いけど気に入ったよ」
「信じられん、【心器】は使用者と共に成長すると聞くが複数の属性を操る様になるなど聞いた事がない」
「【心器】はかなり珍しいそうだから何が起きても不思議じゃない、きっと発見がまだされていなかっただけだよ」
【新二】は【シリウス】にそう言うと掌を組み合わせて頭上に伸ばし、肩のストレッチをする。
「さぁ皆の待つ村へ帰ろう。もう東の空が明るくなり始めてるし、さっさと帰って寝よう」
【新二】のその姿は、ついさっきまで命を掛けて戦っていた兵士ではなく。まるで学校帰りの子供のようであり、【シリウス】はまた【新二】も【ワイド】や例の4人同様。に【二つ名】を持つ者になりそうだと感じたのだった。
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