第57話 更なる変異
「オイオイ何かの冗談だろ!!」
【新二】は素早く席から立ち上がり【ケインズ】の先導にしたがって付いていく。
「私も行くわ!!」
【寝不足のお前は邪魔だ、引っ込んでろ!!】
一目で【ケインズ】に寝不足と見破られた【ロモッコ】は【ケインズ】に頭を捕まれてそのまま椅子に座わらせられる。
「この件は俺と【マエダ】で何とかする。お前は最悪の事態に備えて【第五兵士団】と連絡を取れ分かったな!!」
「はい・・・」
小声で返事をする【ロモッコ】は心なしか少し頬が赤くなっているように【新二】には見えた。
「それで【ダース】達はどの方角に?」
「【ジーンズ】さんが言うには北西の方角らしい」
「よりによって今日【変異種】と戦った当たりじゃねぇかよ!!」
【新二】と【ケインズ】は身体を活性化させ、北門から村を出る。
【こんなハズじゃ無かった・・・】
【ジルコニア】は完全に戦意を喪失し、怯える顔で黄色と白のシマシマ模様に変化した新しい【変異種】の塊を見ている。
始めは【ジルコニア】達の優勢だった。【変異種】を見つけるなり十八番の風魔法で【変異種】の塊を一刀両断。竜巻で継ぎ蹴散らし、更に仲間の雷や水、岩の魔法の援護もあり【変異種】の数はみるみる内に減っていった。
だがその時は唐突に来た。仲間の一人が【変異種】に向かって火属性の魔法を放ったのだ。
野外の戦闘で特に、森の中で火を使う事は山火事を偶発する恐れがあるため。あまり良手とは言えないが、昆虫は火に弱いことも多く彼なりに考えての攻撃だったのだろう。
だがそれは【変異種】の生存本能を刺激し、更なる【変異】を与えてしまったのである。
【変異種】は一度、上空に何十万と言う数の群れを数百は集め。まるで一つの巨大なボールの様に変形すると、互いに【ガチガチガチガチ】と共食いを始めたのだ。
恐ろしくなった【ジルコニア】達は数々の魔法を塊に向けて放つが塊の周りには謎の障壁が築かれて魔法が通じない。
やがて塊は数千匹の一つの塊にまで減少するが、新しくなった【変異種】の一匹、一匹の個体は倍の10センチ程の体長となっており。
【シーアント】の特徴だった赤と黒のシマシマ模様が消え、【変異種】の特徴だった黄色とあらたに加わった白のシマシマ模様に変化していた。
そこからは防戦の一方だった。咄嗟に仲間を守る為、【ジルコニア】は全力で自身と仲間を囲うように竜巻を発生させる。
しかし新しい【変異種】はまるでその竜巻をお菓子を食べるように凄まじさ速さで削っていき、【変異種】と【ジルコニア】の間にあった風の壁が破られるのは既に秒読みとなっていた。
【こんなハズじゃ無かった・・・】
最後の風の壁も突破され、【変異種】が【ジルコニア】達に襲い掛かろうとした時だった。
謎の光が【ジルコニア】の頭上から【変異種】を撃ち抜き、爆風で【変異種】を少し後退させたのだ。
謎の光は【変異種】に囲まれた【ジルコニア】達を守るように降り注ぎ、【変異種】を次々吹き飛ばす。だが【ジルコニア】の【魔力感知】範囲にそんな攻撃をしている人物はいないし、仲間の誰かの攻撃出もない。
そして悔しくも自身の【魔力感知】の範囲外の更に遠くから一ミリの誤差無く標敵を撃ち抜ける人物に一人だけ心当たりがあった。
「【ワイド】・・・」
【ファイゼ】村の宿舎の屋根に登ったワイドは北西の方角に9.5キロ地点に現れた謎の魔力反応に襲われる同期を助ける為、大弓を構えて超超距離狙撃をしていた。
「手応えがあまり無い・・・【マエダ】さん速く・・・」
北西の森に響く無数の爆発音。その音を頼りに【新二】と【ケインズ】は森を走り抜ける。
そして謎の光が人集団の集団を守るように降り注ぐ地点を目視すると【新二】は【千時】を具現化させ、巨木に飛び乗り、彼らの上空に移動する。
【ハァアアアア!!】
深緑の巨大な竜巻が一気に【変異種】の群れを散り散りにし、周囲の巨木は切り払われ。円形状に切り開かれた空間が出現する。
【先輩!!】
「【ダース】この一件が一段落したら覚悟しとけよ」
普段は温厚な【新二】が怒りを含んだ語気で言い、【ダース】の身体が萎縮する。
「【訓練兵】の皆さんはこっちに付いて来てください!!【マエダ】さんが奴らを足止めしている間に逃げますよ!!」
【ふざけんなぁ!!】
【ジルコニア】が突如怒りに任せて叫ぶ。
【俺は【ジルコニア】家の長男。【ラグーン・ジルコニア】!!、たかが辺境の村の兵士に守られて逃げれるか!!】
【ジルコニア】は【新二】に向けて鋭い視線を向け、指差しする。
「【ジルコニア】さん、貴方がとこぞの貴族であり。村で多少の価値観の違いで揉めるは仕方ない事。だが!!、ここは弱肉強食の戦場だ!!」
【新二】は再び【千時】を振るい、再び包囲してきた【変異種】を切り裂きながら吹き飛ばし、さらに【格付け】で【訓練兵】達を威圧して片膝を地面に付かせる。
【弱者はここでは喰われるのみ、死にたくなければさっさと帰れ!!】
【ジルコニア】は半べそをかきながらも仲間に引きずられる様に連れていかれ、【ジルコニア】達に【変異種】が近付かないよう牽制する幾つもの光の攻撃を【新二】は感知し、改めて【ワイド】の狙撃能力の化物っぷりを再認識した。
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