第56話 トラブルはいつも予想を越える

「つまりお前達は原因を発見はしたが討伐には至らなかった。そう言う事だよな【レモネーゼ】」


村に戻った【新二】達は【シリウス】が【ワイド】を宿舎に寝かせに行くと、その光景を見ていた【ジルコニア】達に捕まり、質問責めにされたのだった。


【悔しいけどその通りよ】


【レモネーゼ】が今回の演習で標敵を仕留め損なった事を認めると【ジルコニア】の口角が上がる。


「それはそれは大変な事になりましたね。あの【魔手】と言われた【ワイド】が失敗する?。退屈、退屈と調子にのっていた【ワイド】が失敗する?。それは【第五兵士団】の【剣】候補として実力不足と言う事ではないんですかねぇ?」


「【ワイド】は調子になんか乗ってないし、相手が【シーアント】の【変異種】で10万を越える数だったからよ!!」


「【シーアント】?【変異種】?!ハッハッハ!!あんな少しばかり大きな蟻の群れに【ワイド】が負けたと言うのか?それこそ【剣】候補として【ワイド】が実力不足という証拠ではないか!!」


【ジルコニア】の取り巻きも【レモネーゼ】を指先しながら嘲笑う。


「何よさっきから偉そうに!!そもそも8日間全く何の痕跡も見つけられずに荒れていた癖に、なぜ原因を見つけて戦った【ワイド】の事をそんなに悪く言える訳?。それに【ワイド】は貴方達と違って初日で痕跡を見つけてたわ。今まで全く見つけられていない貴方達とは違ってね!!」


「何だとこのアマ!!」


【【黙れ!!】】


【ジルコニア】が【レモネーゼ】に手を振りかざした瞬間。冷たい声と共に二つの【格付け】による威圧が【ジルコニア】を失神させ、取り巻きの仲間達を威圧する。

 【新二】は咄嗟に自分とは別の威圧の出所を見ると、暗闇に包まれた窓の外の景色から視線をこちらに向けた【ワイド】の姿が目に映り。身の毛のよだつような【ワイド】の冷たい眼差しが【新二】の身体に緊張を走らせる。


「【ジルコニア】、前にも言ったはずた。【レモネーゼ】に手を出せば容赦しないと。君達もだよ」


【ヒッ!!】


【ジルコニア】の取り巻きは失神した【ジルコニア】を胴上げするように担ぎ上げる凄い速さでその場を走り去っていった。


バタン!!


【ワイド!!】

【ワイドさん!!】


窓越しに倒れた【ワイド】を見た【レモネーゼ】と【新二】は宿舎に向かって走りだした。


「まぁそう心配する必要は無い、ただの魔力切れだよ」


ベッドで眠る【ワイド】の横で【シリウス】が【レモネーゼ】と【新二】に安心させるように言う。


「それに【五月雨】をあんなに長時間使えばこうなるのは当然さ、本来、弓術の【五月雨】は矢を素早く乱れ射ちするだけの牽制用の技なんだ。しかし【ワイド】はあの速さでも正確に撃ち抜く事が出来てしまう。数千体の獣の群れなら余裕だったが。今回は数百万の蟻が相手で相性が悪かったな、これは【ワイド】にとっても良い勉強になるだろう」


【新二】は窓の外を見るといつの間にか日は沈んでおり、この8日間の調査報告を【ロモッコ】に出さないといけない事を思い出した。


「すみません、そう言えば今回の調査報告を出さないと行けないので自分はそろそろ失礼します」


「分かった、8日間調査を手伝ってくれてありがとう」


「ありがとうございます【マエダ】さん」


【シリウス】と【レモネーゼ】に見送られながら部屋を出ると。【新二】は【駐在所】に向けて歩きだし、8日ぶりとなる【寝ずの間】にて机に突っ伏して寝ている【ロモッコ】を素通りして【新二】は自分の席に座り、報告書を書き始めたのだった。


「いけない!!また寝てしまっていた!!」


【ロモッコ】は森の異常に対し最大級の警戒をしており。外見の監視員の人数を倍にして24時間の監視体制を築き上げていた。


「ううっ・・・」


寝不足で頭痛がする中、【リンド】が作りおきしてくれていた【メリーブ】のお茶を飲みに席を立つと8ぶりに【新二】が机で報告書を書いており驚く。


「【マエダ】君何時から戻ってたの?」


「久しぶりですね【ロモッコ】さん。戻ってきたのはつい先程なのでまだまだ報告書は書き上がりませんよ」


「そうなのか、それで原因は何か分かったのか」


【ロモッコ】は慣れた動作で【メリーブ】のお茶をコップに継ぐと目覚ましがわりに一気に飲み干す。


「ああ、相手は【シーアント】の【変異種】で数は数百万といった所かな」


「ゴホッゴホッ!!数百万?!」


【ロモッコ】は思わず咳き込み、パッチリ覚めた目で報告書を書く【新二】に視線を向ける。


「厄介なのは数だけじゃなく獲物を時間をかけて調査し、包囲する知能もあるって所。移動速度は俺よりも早く。逃げる為には確証は無いけど群れに一定数以上の損害を与えて蹴散らす事」


「何か有効な攻撃法は見つかった?」


「悪いけどそんな余裕は無かった。だけど通常の斬擊や魔法じゃ数に押されて殲滅どころか全滅させられるだろうね」


「そんなのどうやって攻略するのよ」


「余程の大規模かつ、威力のある攻撃をするしか無いね。少なくともまたアレと戦うなら俺は色んな大事な物を掛ける必要がある」


「【マエダ】居るか!!」


「どうした【ケインズ】さん」


【寝ずの間】に凄い形相で【ケインズ】が入ってきた。


「大変だ、【ジルコニア】の野郎が【ダース】を案内人として森に入ったと門番の【ジーンズ】さんから連絡が入った!!」


【【はぁあああ??】】

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