四章 魔手の使い手
第47話 演習
俺は【前田新二】、【ファイゼ】村所属の【三等兵士】。とは言っても俺は元々こことは違う異世界で演劇部だったごくごく普通の中学二年生だった。
ある日、姿鏡の前で次の演目に使う衣装を試着した所、突然現れた謎の手によって鏡の中へ引きずり込まれ、気が付いたらこの世界の戦場におり。【
初めは廃墟同然の村で獣や魔物に教われていた村だったが。リーダーシップがあり、長身で活発な桃色の髪の少女【ロモッコ】四等兵士。ヤンチャ気漂うが仲間思いの紺色の髪の少年【ケインズ】二等兵士。眼鏡でおとなしそうな見た目とは裏腹に植物オタクで薬も作れる黄緑色の髪の少年【サクマ】二等兵士。赤髪の少年で凄腕の鍛冶師見習いの【サイモン】。支援を受けたとは言えたった1ヶ月で破産寸前の【フィフス】商会を立て直した茶髪の少女【メール】。【メール】兄で盲目ながら凄腕の杖使い、白髪の青年【カール】。その他にも多くの村人の助けもあり、【ファイゼ】村は見違える程の活気ある村へと成長した。
「【マエダ】先輩!!、旗を付け終わったら【ロモッコ】先輩が【空の間】に来て欲しいそうです!!」
俺の初めての部下である【新兵】で銀髪の少年【ダース】。が【駐在所】の出入り口から【駐在所】の屋根の天辺にあるポールに、新しく作り直した【ファイゼ】村の誇りである、巨木に剣とクワがクロスする紋章の旗を付けていた【新二】に声をかける。
【分かった、今すぐ行くよ】
【新二】は二階建ての【駐在所】の屋根から飛び降り、空中で紫色の風車の大小二輪の花が描かれた扇。【千時】を具現化させ、着地の瞬間に風をお越して衝撃を和らげると。【駐在所】正面の一番奥にある大きな部屋【空の間】に向かって歩く。
【やっと来たわね、では全員揃いましたのでお話をお願いいたします】
【空の間】に入ると縦に長い大きな机が置かれており、もう顔馴染みとなった何時のメンバーである【ケインズ】【サクマ】【サイモン】【メール】【カール】そして先日正式に【村長】となった【ロゼッタ】が向かい合う様に座っており、何時もと違うのは正面に座っているはずの【ロモッコ】が、左側の席にズレて座っており、正面の席には緑色の刺繍が襟と袖に施された【兵士服】を着る、偉そうな男性が座っていた。
【新二】は何時もの事ながら出口に一番近い空いている席に座ると、正面に座る男性が口を開いた。
【まずはお忙しい中集まって下さり、感謝を申し上げる】
それは当たり障りのないごく普通の言葉、しかし【新二】を含めた兵士の4人は、男性が告げる言葉は既に決定事項であり、反論しようものなら命を掛けろと。武器を突き付けられて要るような錯覚に襲われる。
【私は【黒鉄帝国第五兵士団】所属、【データ・シリウス】七等兵士だ】
「(あの【
【新二】の眼には何もしていなくとも【シリウス】の身体から漏れ出す力強い魔力が見え、手のひらにじんわりと冷や汗をかく。
【単刀直入に話させてもらうが、この度。我々【第五兵士団】は【ファイゼ】村近隣の森にて、次期団員になる予定の【訓練兵】を一月程実技演習の地としてお借りする事を決定した】
【シリウス】の衝撃的な言葉に各面々が驚き顔を見合わせる中、【ロモッコ】が【シリウス】に向かって手を上げ、【シリウス】は視線で発言の許可をする。
【実技演習の件につきましては突然の事で驚きましたが、できる限りの協力はさせていただこうと思います。しかし、あまりに突然の事であり、わざわざ辺境の地である【ファイゼ】村を選んだ理由につきまして、お伺いしても宜しいでしょうか?】
【シリウス】は【ロモッコ】の言葉に相槌を打ち、真剣な顔で答える。
【正直な所、辺境の地であり、多数の野獣、魔物が生息していれば特に何処を選んでも問題はない。強いて言うのであれば【ファイゼ】村は過去に一度も演習を行った事のない地であり、【訓練兵】に過去何百回と行った再調査よりも調査のやる気を引き出させる為という【団長】の考えであろう】
「(何か引っ掛かる嫌な言い方だなぁ・・・)」
【ありがとうございます】
【新二】が眉を動かして何が気になったのか確かめる為、繰り返し【シリウス】の言葉を反復していると、【ロモッコ】が【シリウス】に頭をさげる。
【では他に質問が無ければ一週間後に【訓練兵】を連れて再び来よう。これは【団長】からの正式な依頼書である】
【ロモッコ】は【シリウス】から無駄に豪華そうな封筒を受け取り、ハサミで封を切って書状を取り出すと中身の依頼料を見てふらつき、咄嗟に【ケインズ】が【ロモッコ】の身体を支える。
【シリウス】はそんな二人を何も見なかったかのように椅子から立ち上がると、机の脇を通って部屋から出ていく。そしていつの間にか呼んでいた立派な馬に股がって【ファイゼ】村の中を走り去って行った。
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