第46話 再スタート

「キャッ!!」


「うっ・・・」


「なんだ今のは・・・」


実態の無い風が【サイモン】の【マイホーム】を貫通していき、【ロモッコ】と【ケインズ】、【サクマ】だけがその風を感じた。


「何かが来る!!」


【サクマ】は採取用の短剣を出入口に向け構え、【ロモッコ】も壁際に立て掛けられた剣を手に取ろうとふらつきながら歩くが、【リンド】がそれを止めに入る。


「【ロモッコ】さんは安静にしてなきゃダメです!!」


「しかし私は兵士であり、今はまとめ役でもある。この村を守る責任が私にはあるんだ!!」


【ロモッコ】を【リンド】が静止させてる間にも謎の気配はどんどん出入口に近づいて来ており、【サクマ】の額から冷や汗が頬を伝って落ちる。


トントントン!!


「【マエダ】だ、無事【メール】と【サイモン】を連れ戻してきたぞ!!」


【サクマ】が驚きの表情と共に出入口のドアを開ける。


「ご迷惑をお掛けしました」


「ワイの考えの甘さで皆に迷惑かちまった。申し訳ねぇ・・・」


【メール】と【サイモン】はドアが開くと同時に頭を下げて謝罪する。


【いいえ、謝罪する必要はないわ】


杖を付きながら【ロモッコ】が二人の前に歩き、【メール】と【サイモン】は罵声を浴びる覚悟を決める。


【貴方達は村の家族同然、こちらそこ守ってあげられなくてごめんね・・・】


【ロモッコ】は杖を手放し、【メール】と【サイモン】の二人を抱えるように抱き付き、涙を流す。


「【ロモッコ】嬢ちゃんの言う通りじゃよ。生まれは違えど。【サイモン】坊やも【メール】嬢ちゃんだけじゃなく、【ロモッコ】嬢ちゃんも【マエダ】坊やも【ケインズ】坊やも【サクマ】坊やも【カール】坊やだって皆この【ファイゼ】村の家族じゃ。謝るのは家族なのに守れ無かったワシらの方じゃよ」


【ロゼッタ】さんが頭を下げると【グランツ】【ベゼネッタ】夫妻、門番の【ジーンズ】さんに始まり。お世話になった村の人達が続々と頭を下げていく。


「さぁーて、それじゃあ明日に備えて皆仲良く雑魚寝しますか!!」


「「「「????」」」」


【新二】の言葉に全員の頭にクエスチョンマークが浮かび上がる。


「村の建物はほとんど焼けるか壊れてるし、村の門は壊されてる。【ナリカネ】商会と【ベイル】兵士達がある程度保証してくれるとは言え、このままじゃ日常生活もままならない」


「え?!村の復興に補助金がでるの!!」


「ああ、【バウンズ】兵士長が保証してくれたから間違いない」


驚く【ロモッコ】に【新二】は淡々と説明し、「自分は怪我人じゃないから屋根で寝る」と言って外へ出ていった。


「あっ!!いい忘れてた事があったけど村に入ってきた野獣どもは始末して血抜きしてあるから」


「「「「ええええええ!!」」」」


村人達は声を揃えて叫び、鮮やかに煌めく星達の夜空へ響き渡った。


あの事件から一月がたった。元々【ファイゼ】村近隣は上質な薬草が取れる事もあり、連日森で採集に当たった【新二】と治療に当たった【サクマ】、【リンド】のおかげで誰一人後遺症無く無事回復した事には、流石ファンタジーの世界と【新二】は改めて思った。   

 【バウンズ】兵士長は約束を守り、【ナリカネ】の傭兵達を連れて【ファイゼ】村に謝罪に来た。傭兵達は【カール】さんと俺の姿を見るなり顔を青くして平謝りし、賠償として村の労働力になる事が決まって【カール】さんが監視役となった。

 【ナリカネ】商会は【ナリカネ】の失脚に伴い破産し、解雇された従業員を【ロモッコ】さん【ロゼッタ】さん【メール】さん【ケインズ】さんの4人が合同で面接し、従業員の中から何人かを【フィフス】商会へそのまま雇用していた。

 【バウンズ】兵士長は【メール】さんと【カール】さんに【ナリカネ】の事を何か話し、【メール】は涙を流していたが、野暮なので内用は聞かなかった。

 

そして今日、【ベイル】町【ナリカネ】商会のにより【ファイゼ】村は完全に復興し、立派な職場・・・いや。俺達の我が家、【ファイゼ】村の【駐在所】が新しく完成した。


「早く行こうや【旦那】!!新しい【駐在所】で【ロモッコ】嬢の【四等兵士】の就任祝いすっぜ!!【旦那】も【三等兵士】に就任したんやろ?はよ祝われに行こや」


この一月を思い返していた【新二】の肩を軽く叩いて【サイモン】は【駐在所】に入って行き、その後を【サクマ】、【リンド】、【グランツ】、【ベゼネッタ】などの村の人達が次々入って行く。


「早く行きましょう


「おっ、おう・・・」


新たに【ファイゼ】村に着任した【新兵】で銀髪の少年、【ダース】に背中を押されながら【新二】は【駐在所】に入り、一番大きな【天の間】で盛大な祝いの宴が行われた。

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