第45話 終結

「もう一度言っていたただけませんか?」


【アルテナ】副兵士長は【ベイル】町駐屯地に戻った【バウンズ】兵士長に【アルテナ】は改めて問う。


「何度でも言おう。私は【マエダ】君に《負けた》・・・三人を解放しなさい」


【アルテナ】副兵士長の後方で兵士達がざわめき、【アルテナ】が一睨みして場を正す。


「【バウンズ】兵士長、貴方がそう言うのであればそれは《事実》なのでしょう。しかしここにいる者は《全員》兵士長の強さを知っています。だからこそたった【二等兵士】である【マエダ】に負けると言うのが想像出来ません!!。しかも私達が場を離れるまでは圧倒していたではありませんか!!」


【アルテナ】副兵士長の言葉に【バウンズ】兵士長は目を閉じて考え。【新二】の方へ顔を向ける。


「【マエダ】君。魔力を解放して相手を威圧する。つまり【格付け】をこの者達にしなさい」


「え?」


【新二】は突然言われた内用に驚きの声を上げるが、【バウンズ】兵士長の真剣な瞳に促されて【アルテナ】副兵士長率いる兵士達に向かって立つ。


「一般人である三人は此方に来ようか」


【バウンズ】兵士長は【サイモン】【メール】【カール】の三人を手招きで呼び、三人は監視していた兵士に怯えながらも【バウンズ】兵士長の背後に匿われるようにしゃがむ。


「では始めなさい【マエダ】君。私が負けを認める理由を証明しなさい」


「はい・・・」


【新二】は【千時】を具現化させ、大きく深呼吸し、【グラウス】が自分にしてきた【格付け】をイメージしながら魔力を解放する。


【なっ・・・?!】


【アルテナ】副兵士長は目の前の少年から放たれた獣を連想させる威圧と圧力に片膝を屈し、背後の兵士達が次々失神して倒れる。


「できた・・・」


「これで認めるか【アルテナ】」


「そうですね・・・少なくとも私に匹敵しうる力を持っていると言う事は認めましょう・・・」


「そうか・・・」


【バウンズ】兵士長は【新二】に振り向くと声高らかに宣言する。


「【マエダ・シンジ】二等兵士!!只今から君を【三等兵士】に昇格するものとする!!」


「はい?!」


【バウンズ】兵士長は【アルテナ】副兵士長に新しいバッチを持ってくるように支持すると【サイモン】が不満そうな声で入ってくる。


「なぁ【バウンズ】さん。【旦那】はテメェに勝ってるのにテメェより低い階級なのはちとおかしくねぇーか?」


「確か【サイモン】と言ったかね君は?」


「ああ、そうだ」


「兵士の階級は力が全て出はない。力も重要な要素だが、所属する市町村の大きさ。国に貢献した功績の量。さらに昇格を決めた兵士の階級によっても上がり幅は変わる。【マエダ】君の場合は強さは最低でも私と同じ【五等兵士】、又は【六等兵士】クラスだろうが。昇格させる私は五等兵士止まりであり、先日二等兵士の昇格に村の発展の功績を使った後なのだよ。【マエダ】君の強さは条件を満たしているが、所属する村の規模と国への貢献、私の階級不足による物で申し訳ない・・・」


【力以外全滅じゃねぇーかよ!!】


【バウンズ】兵士長と【サイモン】の会話を他人事のように聞いていた【新二】は話が途切れたタイミングで話しかける。


「【バウンズ】兵士長、【アルテナ】副兵士長からバッチも受け取ったのでもう帰っていいですか?」


「ああ、手間かけさせたな」


【新二】は授業が終わった学生のように素早く門をくぐり抜け、【ファイゼ】村に向かって走り、その後を【サイモン】達は追った。


【ファイゼ】村深夜、焼け焦げた民家に破壊された村の門。野獣達が我が物顔で倒壊した民家や食料倉庫から食い物を奪っていく。


「無茶です、お止めください!!」


【サクマ】の制止を無視して【ロモッコ】が壁伝いに足を引きずりながら【サイモン】の【マイホーム】から出ようとする。


「村がこうなったのは私が【ナリカネ】を甘く見ていたせいだ・・・これ以上村の皆に怖い思いも、野獣の好きにもさせない!!」


「その心意気は立派ですが、自身の身体の事も考えて下さい!!。今出ていっても奴らの餌になるだけだ、悔しいけど命あっての物種だ・・・今は耐えて下さい・・・」


懇願する【サクマ】の泣き顔に【ロモッコ】は膝から崩れ落ち、自身の不甲斐なさに泣き。布団から動く事も出来ない【ケインズ】も【ロモッコ】につられるように静かに涙を流し。【サイモン】の【マイホーム】に避難した村人達は思い思いに涙を流した。


ムカつく、腹立たしい、不愉快。【新二】達は【ファイゼ】村に到着すると破壊された村の門から野獣が侵入しており。大事な村の食料を漁っていた。


「あの畜生め・・・ワイらの食いもん漁ってやがる・・・旦那?」


【サイモン】の脇を通り、【新二】は野獣に張り付けたような笑みを見せ近づく。やがて【新二】に気付き、を獲物ととらえた野獣はヨダレを滴しながら【新二】を囲うように集まり、互いにに威嚇しあって誰の獲物かを決めている。


「魔力も持たない野獣が偉そうに・・・【格の差を知れ】・・・」


【新二】は野獣達に魔力で威圧と圧力をかけ、数十匹の野獣は一瞬で倒れ伏す。まだ健在だった近くの建物に亀裂が入り、半焼していた建物は倒壊した。


「【格付け】と言うのは便利だが、制御が難しいなぁ・・」


【新二】は応急処置で門に瓦礫を積みバリケードを作ると、村の皆が避難している【サイモン】の【マイホーム】へと向かった。

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