第43話 落とし所
【つまり互いに痛み分けで終わりたい・・・と言いたいって事か?】
「そう言う事です」
「・・・もし断ったら?」
【新二】の表情が固くなり、重い圧力が【バウンズ】兵士長にのしかかる。
「《抵抗》は認めますが、それなりの被害を覚悟してください」
「成る程、言うだけの実力者に成ったか・・・」
【バウンズ】兵士長から戦闘の意識が消え、【新二】も圧力をかけるのを止めた。
【ハッハッハッ!!・・・今後むやみに行動を起こさず、相談して貰う為の教育のつもりだったのだが。どうやら相手の資質を見誤り、より問題を大きくしたのは私の方のようだ・・・】
「????」
【バウンズ】兵士長は何か吹っ切れたかのように穏やかな顔になり、地面に座り込む。そして【新二】にも座るように手招きし、困惑しながらも【新二】は地面に座る。
「まあ、アレだ。もう君を部下や後輩とは思わない。私と対等な実力者として対応しよう」
「えっ?!はい?!」
【新二】は【バウンズ】兵士長の言葉に動揺するが【バウンズ】兵士長は構わずに話し出す。
「実は今回の事件は大方予想がついていたんだ、【ナリカネ】が傭兵をつかって【ファイゼ】村を焼いたのと【ザック】が雇われていた事を除いてはね・・・」
【ならどうしてもっと早く対応してくれなかったんですか!!】
【新二】は立ち上がり【バウンズ】兵士長を見下ろして怒鳴り付ける。
【もっと早く対応してくれてれば【ファイゼ】村は焼かれる事も無く!!【メール】さん【サイモン】さんは連れ去られずに【ロモッコ】さん【ケインズ】さんだって大怪我せずにすんだんだ・・・】
【新二】の声は急速に小さくなり、言い終わる頃には頬を涙が伝った。
「言い訳に聞こえるかもしれないが、【ナリカネ】の調査報告は今日纏まって上がり、精査が終わり次第逮捕する予定だったのだ。間に合わず申し訳ない」
【バウンズ】が頭を下げ、【新二】は【バウンズ】兵士長が逆上して殴りかかってくれば自身の怒りを少しは八つ当たり出来たのにと複雑そうな顔をして力無く座り込む。
「【ザック】の件もそうだ、本来なら私が直接手を下さなければならなかったのに代わりに手を汚させて申し訳なかった」
再び頭を下げる【バウンズ】兵士長に【新二】は怒りや悲しみ、恨みすらまじった複雑な感情を言葉に出来ず、自然と【バウンズ】兵士長の頭が上がるのを待った。【バウンズ】兵士長も【新二】が複雑な表情をしながら自身の言葉で何かを話すのを待ったが、言葉に出来ず困った雰囲気を漂わせたためゆっくり頭を上げた。
「今後【ベイル】町としての対応は【ナリカネ】商会に武装勢力の解体と【ベイル】町への出入り禁止にし、【ファイゼ】村への損害の保証をさせるつもりだ、勿論止められなかった私にも責任があるとして【ベイル】町からと私個人からも支援をさせて頂こう。そして【ナリカネ】本人に対し15年前の【レジアス】【マーネ】夫妻。【メール】ちゃんのご両親の殺害疑惑と【メール】ちゃん【サイモン】君の誘拐の容疑、並びに過去に行った数々の不正と恐喝、殺人についても言及し処罰するつもりだ」
「まぁ、色々保証と支援してくれるなら《俺は》文句はないよ・・・だが、【メール】さん【カール】さんの両親の件は本人達と話してから決め手ください」
「分かった、そうしよう・・・」
「あと大怪我をした【ロモッコ】さん【ケインズ】さんら村の人達に対して治療と、【ナリカネ】と現行犯達による謝罪もお願いします、次は命を取るぞと脅したいので・・・」
「出来る限りの事はしよう」
「ありがとうございます・・・では先程言ってた教育について少し詳しく説明してくれませんか?」
「そうだな・・・」
【バウンズ】兵士長は雲一つ無い夜空を見上げると深く深呼吸をして呼吸を整える。
「【黒鉄帝国】の市町村はそれぞれある種の独立をしており、独自の法や規則を作る事がある程度認められている。
今回は偶々私が【ナリカネ】の愚行を調査していた事もあり、郊外とは言え【ベイル】町内の騒動も私が不問とすればそれ以上の問題にはならない。
だがね、もしこれが他の市町村であり、相手が愚かな考えを持つ権力者だった場合。領域侵犯として【マエダ】君に正当制が有りながらも処罰の対象となる恐れがあるのだ」
「だから正当制が有りながらも処罰の対象となる事を教育しようとして、平手打ちを【メール】さんや【サイモン】さん【カール】さんにもしようとしたと?」
「そうだ、一様部下に対しても他所で問題を起こせば、正当制があっても処罰されると言う事を教える為の物でもあったがね・・・」
【なら何故それをもっと早く言わなかったのですか!!】
「部下の大半は君達の顔を知らない。だから【ナリカネ】の手下でない証明として手早く平手打ちをしても襲い掛かってこないことで証明しようとしたのだ、そのついでに【ベイル】町の領域内で問題を起こした罰も与えたという事実作りもね。詳しい事情は【駐屯地】に連行したあとで説明するつもりだった」
「なら抵抗を認めると言ったのは何故ですか?実際俺はその言葉を聞いて抵抗すると決めたのですから・・・」
「それは先程も言っただろう?。【黒鉄帝国】の市町村では独自の法や規則を作る事がある程度認められていると。【ベイル】町の独自の規則でどんな人物にも《抵抗》を認める事となってるんだ。実際は誤って相手を殺害してしまった時に素直に連行される意志が無く、不幸な事故だったとするためだろうがね・・・」
「そうですか・・・」
【新二】は抵抗した事で問題を大きくしてしまった事と、あの状況では何度やっても抵抗と言う選択肢しか選べなかった事など多くのもしもを考えたが、やがて思考するのも疲れてため息を付く。
「【バウンズ】兵士長そろそろ俺達も戻りましょうか、俺達が行かないと何も始まらないでしょうし・・・」
「そうだな、色々複雑な案件ではあるが。手をつけなければ終わらない。今度は出来れば《抵抗》しないで欲しいがいいかな?」
「はい、あの話しを聞いて今さら抵抗する気何て無いですよ・・・」
【新二】は【バウンズ】兵士長に両手を差出し、【バウンズ】兵士長は【新二】に手錠をかけようとした時。二人は暗闇の中に何者かの気配を感じ戦闘体制に入る。
「何者だ!!」
【バウンズ】兵士長が剣を抜いて声を荒げると。紫色の刺繍が襟と袖に施された【兵士服】を着る人達が姿を表した。一人は美しい白髪の長い女性、もう一人は空色のショートヘアの少女、そして最後に紺色の髪男性が二人の前に現れた。
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