第41話 背負う者

【俺が大金積まれたくらいで、大事な仲間を傷付けた野郎に付く訳ないだろ・・・】


「だったらさっさと断れよテメェ!!」


【新二】が笑顔言うと【サイモン】が【新二】の左胸をどつき、肩に手を回して組む。【メール】は安堵の表情で【新二】に向かって歩き【カール】は【新二】と【サイモン】のやり取りに苦笑しながら【メール】の後を追う。


「はぁ・・・これはなかなか面倒な事になったなぁ・・・」


【新二】達が騒いでいると、【バウンズ】が兵士を連れて現れた。


「【バウンズ】兵士長!!」


「久しぶりだね【マエダ】君。出来ればこのような事件とは別件で会いたかったよ」


兵士達が【新二】達の周りを取り囲み、剣を抜く。


「これはどういう事ですか【バウンズ】兵士長」


「本当はこんな事したくないが・・・回りを見てみてみなさい」


【新二】は周囲に視線を向けると、倉庫は跡形もなく大破しており、周囲の錆びれた建物や雑木林、畑も【ザック】との戦闘の余波で無惨にも荒れている。


「ここが町の中心地から離れていたからこの程度の被害で済んだが、町中であれば死者が出ていてもおかしくない程の被害だ」


「すみません・・・」


【新二】は申し訳無さそうに頭を下げ、【メール】【サイモン】【カール】も【新二】に倣って頭を下げる。


【悪いが謝って済む程の事じゃない、も認めよう】


【バウンズ】は力強い足取りで【新二】の前に立ち、【新二】に向かって平手を振るう。


「(ヤバイ!!)」


【新二】が反射的に腕で【バウンズ】の平手打ちをガードするが。【バウンズ】の平手打ちはまるで巨大な岩石のように重く、押しきられて吹っ飛ばされる。


【旦那!!】

【マエダさん!!】

【マエダ君!】


 【サイモン】【メール】【カール】が【新二】が飛ばされた方向を見て叫ぶ中、【バウンズ】は次の標的を【メール】に定め。スローモーションのようにゆっくり【メール】の頬に【バウンズ】の平手が向かう。


【きゃっ!!】


【メール】が悲鳴を上げ、【サイモン】が30メートル程吹っ飛ばされた。


「【サイモン】さんどうして!?」


【うるせぇ・・・【メール】は無理やり連れこられて此処にいるか弱い少女だ!!、なのに大の大人が容赦無しで平手打ちするのは平等じゃねえ・・・】


【いいえ平等です。一人の仲間の失態は仲間全体の責任。組織とはそう言う物です】


【アルテナ】副兵士長が【メール】の背後に回り込み、平手打ちをする。


【大事な妹なんだ、兄として守る義務がある】


【お兄ちゃん?!】


【カール】が【アルテナ】の平手打ちを止め、ピリピリとした空気が場に流れる。


「【バウンズ】兵士長、周囲を荒らした責任は全て俺のせいです。罰なら俺が全て受けます。だから【メール】さん【サイモン】さん【カール】さんへの罰は見逃してください。お願い・・・します・・・」


【新二】はゆっくり地面に四肢を付き、床に頭を擦り付けるように下げる。【バウンズ】兵士長は冷ややかな目で【新二】を見下し冷たい声色で発言した。


【嫌だ、と言ったらどうする?】


【全力で抵抗させて頂きます】


【バウンズ】兵士長の黄色い魔力と【新二】の深緑色の魔力が衝突し、砂埃が巻き上がる。

 

【フゥー・・・】


【ハァア゛ア゛ア゛!!】


【バウンズ】と【新二】が発する魔力の嵐が周囲の瓦礫を巻き上げ、竜巻が通り過ぎたように残骸が降り注ぐ。


「【サイモン】【メール】【カール】さん逃げろ!!。俺が【バウンズ】兵士長を止める」


「【アルテナ】!!【マエダ】は私が相手をする。兵士を連れて3人を拘束せよ!!」


【了解!!】


【させねぇよ!!】


【新二】は【千時】を振るい【アルテナ】副兵士長と【メール】達の間に亀裂を刻み込もうとするが【バウンズ】兵士長が黄色い閃光と共に【新二】の斬擊を止める。


【【アルテナ】の邪魔はさせん】


【新二】の【千時】と【バウンズ】兵士長の愛剣が交差し、一瞬の硬直を生むが。【千時】が更に魔力を纏い。無理矢理振りだされた斬擊は【バウンズ】兵士長を押しきって【アルテナ】副兵士長と【メール】【サイモン】【カール】の間に深い亀裂を作る。


「【バウンズ】兵士長が押しきられただと!!」


「そんな、あり得ない!!」


兵士達の驚く声が【新二】の耳に届き、【メール】達も驚きの表情で【新二】を見つめる。


【成る程、一月程で此処まで成長するとは。やはり逸材であったか・・・】


【バウンズ】兵士長は上着を脱ぎ、引き締まり、幾つもの傷跡と鍛え上げられた上半身をさらして堂々と【新二】の前に立つ。


「本気で戦うなど何年ぶりだろうか・・・、【マエダ】君・・・。君には君の背負う【ファイゼ】村の誇りがあるだろう・・・。だが!!。私には私の【ベイル】町の誇りがある!!」


【バウンズ】兵士長は剣に黄色い雷の魔力を纏わせ、剣先から小さな雷がバチバチ音を立てる。


「お互いに譲れない者同士が武器を持つ。なら、やる事は一つだろう?」


「そうですね・・・より強い方の誇りが通る!!」


【新二】と【バウンズ】兵士長は高速で互いの間合いをを詰め、再び【千時】と【剣】がぶつかり合い。深緑の風と黄色の雷が二人の中心から吹き荒れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る