第40話 曲げる力
【へぇー俺の一撃を止めるか坊主・・・】
【ザック】は不気味に笑い、一旦距離を取ると【新二】目掛けて拳のラッシュを仕掛ける。
「(確かに速い・・・だが見えない訳じゃない!!)」
【新二】は思考を加速させ、【ザック】のラッシュを見切り、【千時】でいなしきる。
【おらよ!!】
【ザック】の【ガントレット】が光り、爆発する。
「チッ・・・外したか・・・」
【新二】は【ザック】の【ガントレット】の炎が輝いたのを見逃さず、とっさに回避したのだ。
「(なるほど、爆発する拳か・・・厄介だが避けられない訳じゃない)」
両者は再びぶつかり合い、幾つもの爆発と斬擊が倉庫を跡形もなく破壊していく。
【久しぶりに骨のある奴でテンション上がるぜ!!】
【ザック】が叫びながら燃える拳を【新二】に撃ち込み、【新二】は紙一重で見切る。
「目がいいのは分かった、だがコイツならどうだ?」
【ザック】の手の甲から炎が吹き上がり、拳が軌道を変えて加速、【新二】の頬を焼き、爆発する。
「浅かったか・・・」
「(痛い・・・間違いなく見切ったはずなのに・・・)」
【新二】は木箱や鉄屑の瓦礫の中から焼け焦げた顔を上げ、立ち上がる。
「どうした坊主、鳩が豆鉄砲を食ったような顔しやがって」
【新二】が先程の光景を思い出し、原因を思考しようとした瞬間、【ザック】が【新二】と間合いを詰め、再び燃えるラッシュを繰り出す。
【さっきまでの威勢はどうした坊主!!】
変幻自在に軌道を変化させる【ザック】の拳に【新二】は対応出来ず。拳をまともにくらい。【兵士服】はボロボロに焼け焦げる。
【ダイナマイトクラッシュ!!】
【ザック】が両手の拳を掴み合わせ、【新二】の後頭部に振り下ろす。巨大な爆発が起こり、倉庫の壁が爆風で吹き飛ぶ。【新二】は凄まじい速さで床に衝突し、床全体に広がる大きなすり鉢状のヒビの中心に倒れた。
【スッキリしたぜ!!】
倒れた【新二】の側に着地した【ザック】は吹き飛ばされた瓦礫の中から這い出る【メール】【カール】【サイモン】を見つけると、無様な姿で瓦礫に突き刺さる【ナリカネ】を引っこ抜き、床に立たせる。
「これだけ働いたんだ、報酬は倍だせよ【ナリカネ】」
「戦闘狂の金の亡者めが・・・ええい!!払ってやるからさっさとあの二人を殺して女を連れてこい!!」
【ザック】の表情が悪魔の形相に変わり、【メール】【カール】【サイモン】は【ザック】に背を向けて逃げる。
「悪いが俺の金の為に死んでくれ」
【ザック】が【ガントレット】に炎を灯したと時、【ザック】は背後に悪寒を感じて振り返る。
「【千時】・・・」
【新二】は【千時】に深緑の魔力を流し、横一文字に凪ぎ払う。
「おっと?!」
【ザック】は起き上がった【新二】に驚愕するも、反射的に深緑の斬擊を高跳びのベリーロールのように回避する。
【新二】は凪ぎ払った斬擊の端を回転しながら左手で掴み、手が少し切れるにも関わらず鞭のようにしならせ。【ザック】の胴体を切り付ける。
【グハッ?!】
【ザック】の胴体に横一文字の裂け目が出来、赤い血が床に広がる。
「何故だ・・・確かに避けたはず・・・」
【さっきお前の拳が軌道を変えたように、俺も斬擊の軌道を変えただけだ】
「フフフッ・・・そうか・・・たったそれだけの事か・・・」
【ザック】は自身が【新二】にした事をやり返されたと知り、自嘲する。その嗤い声は大きく、空間に響き渡り嗤い終えると同時に【ザック】の瞳は光を失い、その生涯を終えた。
【旦那!!】【マエダさん!!】【マエダ君!!】
全身を火傷に流血、さらに打撲でボロボロの【新二】に【サイモン】【メール】【カール】が駆け寄る。
【まだ気を緩めるな・・・】
決して大きくない声だが【新二】の言葉に三人は足を止める。
【この事件は【ナリカネ】か【ファイゼ】村のどちらかが負けを認めるまで終わらないんだ・・・」
【新二】は【ザック】が倒されたのにも関わらず、まだ余裕が見える【ナリカネ】に向かって歩く。
【もうお前を守る者はいない、負けを認めて【ファイゼ】村の皆と【メール】さんに謝れ・・・】
【新二】は【ナリカネ】に【千時】を向けていい放つ。
【なかなかやるではないか小僧】
【ナリカネ】は大胆不敵に【新二】に向かって拍手を送る。
【その力を俺様の為に使う気はないか?】
「寝言は寝てから言いやがれ」
「報酬も【ザック】の倍を支払おう」
【ナリカネ】は懐から小切手を取り出し、何か文字を記入すると【新二】に向かって投げつける。
「正気かお前・・・」
その額は【ファイゼ】村の収益の数倍であり。もし【ロモッコ】や【サイモン】、【ベゼネッタ】【リンド】などの村の皆と仲良くなっていなければ、迷わず飛び付いていただろう金額だった。
「さぁこちらに来るがいい【マエダ】・・・」
【新二】がこちらに来ると確信し、手を差し出す【ナリカネ】。
「まさか行く気じゃないよな旦那!!」
「【マエダ】さん・・・」
「【マエダ】君・・・」
不安そように【新二】を見つめる【サイモン】【メール】【カール】。
【新二】は深いため息をついて【ナリカネ】の元へ歩き、【新二】の裏切りを確信し、笑顔の【ナリカネ】の前で小切手を破り捨てた。
【なっ!!】
【お前の敗因は俺の仲間を傷付け過ぎた事だ】
【新二】は【ナリカネ】の頭を鷲掴み、床にヒビが入るほど強く押さえつける。
「グウッッ?!」
【ナリカネ】は白目を向いて気絶し、【新二】はゆっくりと押さえつけていた手を離し、立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます