第37話 15年の恨み
ギギギギギィイイイ!!
倉庫の大扉が軋みながら開き。中肉中背の男性、【ナリカネ】と、対照的に引き締まった筋肉質の赤髪の男が現れる。
【あの屈辱の日から15年・・・随分時間がかかった・・・】
【ナリカネ】は吊るされた【サイモン】の横を通りすぎ、ロープで後ろ手に身体を縛られた【メール】の元へ行く。
「今でも昨日の事のように思いだす・・・お前の母親【マーネ】が俺様を振った時の事をな・・・」
【ナリカネ】は【メール】の顎を手を掴み、無理やり自身に視線を合わせさせる。
「【メール】からその汚ネェ手を離せ豚ヤロー・・・ペッ!!」
【ナリカネ】の肩に【サイモン】の血を含んだ真っ赤な唾が当たり。【ナリカネ】は上着を脱ぎ捨てると【サイモン】の顔に拳をめり込ませる。
【調子に乗るなよクソガキがぁあああ!!】
【ナリカネ】は【サイモン】に罵声を浴びせながら拳を乱打する。
【今日の溜めに!!どれだけ金を使ったと思ってやがる!!どれだけ殺してきたと思ってやがる!!どれだけ待ったと思ってやがる!!貴様のようなクソガキが!!俺様の15年の努力を!!バカにすんじゃねぇえええ!!】
【やめてぇえええ!!】
【メール】の必死の叫びが倉庫に響き渡り、【ナリカネ】の拳がようやく止まった。
「何でも言うこと聞きます・・・【石灰岩】の件も・・・【ファイゼ】村の特産の件も・・・全て【ナリカネ】様の言う通りします・・・だからこれ以上【サイモン】さんに酷いことしないで・・・お願い・・・します・・・」
【メール】は縛られたまま【ナリカネ】に頭を下げ、床に額を付ける。
「いい心掛けだな・・・そう言えばお前最近【マーネ】に似てきたな」
【メール】は【ナリカネ】の言葉に悪寒を覚える。
「そうだな、お前が俺様の物になり。全ての権利を俺様に献上するのであればこのクソガキは見逃してやろう」
「・・・ありがとう・・・ございます・・・」
【メール】は肩を震わせながら怯える声で言うと【ナリカネ】の口元が嫌らしく上がる。
「よし良い娘だなぁ~さぁ俺様の元へおいで」
【メール】は怯える心を奮い立たせ、これから一生苦痛を味わうであろう【ナリカネ】の元へゆっくり歩く。
【行くな【メール】!!】
【サイモン】の叫びに【メール】の足が止まる。
【テメェ何勝手に諦めてんだよ!!何勝手に自己犠牲になろうとしてやがるんだよ!!村の貿易が上手く行かなかったのも!!襲われたのも!!この豚ヤローのせいでテメェのせいじゃねぇーだろうが!!】
【サイモン】は顔から血を滴らせながらも叫びつづける。
【諦めんなよ!!【メール】!!テメェが犠牲になってワイが救われると思うな!!テメェが救われない未来にワイの居場所はネェエエ!!】
「【サイモン】さん・・・」
【メール】は涙を滲ませて【サイモン】の力強い瞳を真っ直ぐ見つめる。
「まったく・・・せっかくいい気分だったのにコレじゃあ台無しだな」
【ナリカネ】は懐から豪華な装飾のされた短剣を取り出すと、鞘から引き抜き、大きく手を上げて【サイモン】に振り下ろした。
【しっかりと聞こえたよ【サイモン】君の声が・・・】
倉庫の大扉が破壊され、木の棒を地面に引きずりながら歩く【カール】の姿がそこにあった。
【お兄ちゃん?!】
「遅くなってすまない、居場所は分かっていたんだが町は騒音と道が複雑なせいで遅れてしまった」
【ほう、コイツはなかなかの奴が来たな】
赤髪の男が【カール】を見て腕を組ながら呟く。
「さて、君達。村では悲鳴と火の手に邪魔されて取り逃がしたけど、今度はそうは行かない。僕の大事な【メール】を泣かせた罪は重いぞ」
【カール】が木の棒を片手で構えると、【カール】の生意気な態度に激怒した【ナリカネ】が覆面に声を上げる。
「その面、憎き【レジアス】を思い出させやがる!!。殺せ!!殺した者には報酬の倍与えてやる!!」
【【【【オオオオオオ!!】】】】
覆面の者が【カール】に剣を向け、次々襲いかかる。【カール】は覆面をまるで見えてるかのように木の棒を腹、首、股関、脇腹に次々撃ち込み、覆面の者は数秒で地面伏した。
【恐ろしいまでの【魔力関知】能力だな】
赤髪の男が【カール】に称賛の拍手を送りながら【ナリカネ】と【カール】の間に入る。
「相手の魔力の流れを関知し、次の行動を予測。比較的弱い部所にカウンターを決め一撃で沈める。【帝国兵士】でもそこまで関知できる者は多くないだろう」
赤髪の男は両手に【ガントレット】を装着し拳を構える。
【俺を除いてはな】
凄まじい早さで赤髪の男が【カール】に突っ込み、【カール】の木の棒と赤髪の男のガントレットが爆発したような衝撃でぶつかる。
「へぇー【ベイル】で四等兵士だった俺の一撃を防ぐのか・・・面白い」
「この魔力、【ガントレット】と言う武器・・・聞いた事があります。かつて【ベイル】の兵士の中でトップクラスの力を持ち、次期【副兵士長】候補でありながらも。素行の悪さから兵士をやめされられた【ザック】と言う男の話」
「俺をご存知とは随分有名になったものだな」
【ザック】と【カール】は一旦距離を取り、仕切り直す。
「悪名が高まることを喜ぶとは、随分落ちたものですね」
「名声だろうが悪名だろうが広く知られれば同じよ、それにお前の話は少し違っている」
【ザック】は両腕のガントレットに赤い魔力を灯らせ炎に変える。
「俺は【アルテナ】より強いし、次期【兵士長】候補だった」
【ザック】が不敵に笑い先程とは比べ物にならない早さで【カール】に迫った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます