第36話 村の誇り
【サイモン】の【マイホーム】の一室。恐らく【サイモン】の寝室とみられる部屋で【ロモッコ】と【ケインズ】は寝かされていた。
「【ジーンズ】さんや【ベゼネッタ】さんの話によると、二人は連れて行かれる【メール】さんと【サイモン】さんを守ろうとした所。見せしめにやられたそうです・・・」
「・・・・」
昨日の朝までは元気で小言を言い合ってた二人。【兵士服】はボロボロで至るところに血の染みが出来ており、ミイラのように巻かれた包帯と薬草と血が混ざった表現し難い匂いが【新二】にその怪我の大きさを伝える。
「かなりの重症ですが、幸い【魔光苔】と【治癒草】があったので何とか一命を取り止めました。今日採集してなかった正直手の施しようが無かったでしょう・・・」
「・・・・・」
【新二】は横に並んで眠る二人の間に座り、痛々しい手二人の片手を左右の手で優しく握る。数秒の沈黙の後、何かの決意を固めて【新二】は立ち上がった。
【この落とし前・・・きっちり付けさせてもらうぜ】
自身でも驚くほど冷たい声が【新二】の口から呟かれた。
「【マエダ】さん・・・」
「【メール】さんと【サイモン】さんを助けに行く、どうせ相手は【ナリカネ商会】だ。場所なら分かる」
「どうしても行くのかい?相手は三等兵士の【ロモッコ】ちゃんと二等兵士の【ケインズ】君をこんな目に合わせた奴だよ?」
【新二】の声が聞こえたのか【ベゼネッタ】さんが【新二】の背後から声をかけた。
「ここで大事な仲間も守れない奴が、村を守れるか!!・・!?」
振り替えると【ベゼネッタ】さんも他の村人同様に傷だらけの姿で【新二】は事の主犯の【ナリカネ】に憎悪を募らせる。
「アタシ達の事なら心配しなくていいよ。【グランツ】も大怪我しているが【ロモッコ】ちゃん【ケインズ】君程じゃない。時期にまた元通りになるさ・・・」
口では強がっているが、その声のわずかな震えが【新二】の耳にはしっかり届いた。
「これを持ってきな・・・燃える【駐在所】から【ロモッコ】ちゃんが命からがら持ち出した物だ」
【ベゼネッタ】さんから受け取ったそれは、血と焦げのある手書きの地図で幾つかの場所に丸印が書いてあった。
「(位置的にあまり人が多くない場所だな?、恐らく隠れ家的な何かかな?)」
「これはその紙をアタシに私た時の【ロモッコ】ちゃんの言葉だけど・・・」
【ベゼネッタ】はゆっくり呼吸して息を整える。
「もし【マエダ】君が行くと言ったら伝えて、この中に【メール】さんと【サイモン】君いるはず。そして赤髪の人物とは戦わないで・・・」
【ベゼネッタ】の言葉に涙ながら訴える【ロモッコ】の姿が【新二】の脳裏にハッキリと映る。
「心配すんな、必ず助け出す」
【新二】は眠る【ロモッコ】に向かって約束する。
「【マ・エ・ダ】・・・」
「【ケインズ】さん!!」
無理やり身体を起こそうとする【ケインズ】を介助する形で【サクマ】は【ケインズ】の背中を支える。
「敵の中に・・・元兵士がいた・・・【アルテナ】副兵士長と・・・互角以上に戦えた奴だ・・・赤い髪とは戦うな・・・逃げろ・・・」
【ケインズ】はそう力を振り絞って言うと再び眠りにつき、【サクマ】はゆっくり布団に寝かせた。
「分かった、心配するな・・・」
【新二】は眠る【ケインズ】に向かって言うと部屋を後にする。
「【マエダ】様・・・」
【ロゼッタ】が手に何か折り畳まれたボロ布を持って来た。
「コレは?」
「【ファイゼ】村の誇りじゃよ」
ボロ布を【新二】が広げると巨木に剣とクワがクロスする紋章が書かれていた。
【巨木は実りを表し、剣は魔物にも負けない心を表し、クワは開拓を表す】
「【ファイゼ】村の旗ですか?」
「そうじゃよ、朽ちてく村。せめて最後までこのこ誇りだけは守り通すつもりじゃった・・・。じゃがの・・・お前さんが来てから大きく変わった。死に行くだけじゃった村は息を吹き替えし、皆々の顔にはかつての活気が溢れるようになった・・・お前さん襲ってきた者達の元へ行くのじゃろう?。この村の誇りを持って行くがよい。必ず助けになろう・・・」
【新二】は【ロゼッタ】の真意は分からなかったが。それでも村のまとめ役だった【ロゼッタ】の言う事には何かしらの意味があると感じ、旗を受けとる。
「【マエダ】様コレを持っていってください」
【リンド】が【新二】に二本の小瓶をわたす。
「少量しかありませんが【治癒薬】です。きっと役に立つはずなので持っていって下さい!!」
「【リンド】さんありがとう、では行ってくる」
「「【マエダ】様ご武運を」」
【ロゼッタ】と【リンド】に見送られ。【新二】は【ファイゼ】村を飛び出す。暗闇の道を高速で駆け抜け、魔力で身体強化された身体から淡い緑の光が輝く、その早さは過去一番であり、【新二】が通り過ぎた後には力強い靴後と、草花の葉、花弁が散って舞い上がった。
【もう終わりか?。グフッ・・・!!】
何処にあるか分からない古びた倉庫。その中心に吊り下げられた【サイモン】は覆面達にサンドバックとされていた。
「いつまでその威勢がつづくかな!!」
覆面の一人が【サイモン】の腹に蹴りをめり込ませ、【サイモン】の口から血が吐かれる。
【もうやめて!!【サイモン】さんが死んじゃいます!!】
【メール】の必死の叫びを嘲笑うかのように覆面は【サイモン】の身体に拳を撃ち込み、【サイモン】は呻き声ととっくに空になった胃から血を吐き出す。
「全く・・・コイツのせいで俺達がなんであんな目に・・・」
そう言って覆面は袖を捲ると痛々しい青アザが斑模様のように肩まで走っている。
「まぁ、なにがともあれ無事【メール】と、あのクソガキを捉えたんだ。俺達は死なずに住む・・・」
「ああそうだな・・・」
覆面は溜まったイラつきを【サイモン】にぶつけるように殴り、蹴る。覆面達は【メール】の叫びにも耳を貸さずに攻撃し続け、呻き声を上げていた【サイモン】もやがて攻撃に耐えきれず意識が飛び、力なく項垂れた。
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