第17話 賠償の行く末
「【一等兵士】?あっはっはっは!!、最下等級じゃないか!!」
兵士達が【新二】を嗤うが、【新二】は涼しい顔をして【ロゼッテ】が立つ介助をする。
「【ロゼッテ】さん、【地竜】は確かに俺が死ぬ気でやっと倒せた相手です。だけど・・・」
【新二】の口元が緩み笑顔を【ロゼッテ】に見せる。
【今なら何体でもまた狩れます】
【新二】の一言でその場の雰囲気が冷える。
【嘘ついてるんじゃねぇぞお前!!】
【新二】の後ろで柄の悪い兵士が叫ぶ。
「竜種は子供でも【三等兵士】以上の実力がなければかすり傷一つ付かない最強の生物だぞ!!【新兵】上がりの【一等兵士】が倒せる相手じゃねぇ!!」
【新二】は叫ぶ兵士を無視し【地竜】の亡骸に近くと、身体を活性化させ【地竜】を兵士達が持ってきた押し車に軽々乗せる。
「生憎俺は新兵に成り立てでね。【一等兵士】もさっき【バウンズ】兵士長から貰った物であまり詳しくはないんだ。だけど俺は地竜の鱗を切れるぞ?」
【新二】はポロっと落ちた地竜の鱗を【千時】で真っ二つに切って見せる。
「チッ!!」
兵士は舌打ちすると仲間と共に「行くぞ」と声をかけ、馬が【地竜】を乗せた台車を引いていく。
「【兵士】様本当によろしかったので?」
「さっきも言ったけど、あれくらいなら幾らでも狩れる。みんなを危険にさらしてまで守る物でもないさ・・・。あと向こうの【兵士】と被るからできれば【マエダ】と読んでほしい・・・」
村人達の尊敬の眼差しが【新二】に向けられ、【新二】は気恥ずかしくて地竜の荷台を見る。
【?!】
「どうしたんですか【兵士】・・・【マエダ】様?」
「いや、何でもない(ごめん。下手に不安を煽りたくないんだ)」
【新二】の視線の先には【地竜】の背中に【新二】が付けた物でない一本の深い切り傷があった。
「(今回の【地竜】より強く、もっと大きな存在がこの山にいるのか)」
【新二】は【地竜】がやって来た北西の方角の山を眺め、早急に村の防御力を高める決意をしたのだった。
【新二】が【ファイゼ】村に戻って一週間がたった。【新二】が大量に討伐した魔物は順次【ベイル】町に運ばれ、肉や毛皮などに加工された。
例の【地竜】は肉、鱗、牙、希少部位などどれも高く売れたらしく。今回の【川が血で染まった件】は今後一切責任の追及はしないと正式に【バウンズ】兵士長からのお達しがあり。【ファイゼ】村の人々の不安も少しは軽くなった。
村の防衛能力もこの一週間で大きく変わった、【新二】が【千時】を使い、森の木をバッサバサ斬り倒して作った丸太の杭を、村の外周にどんどん突き刺して新しい防壁を作ったのだ。それ以外にも村人達のご厚意で廃屋と化していた【駐在所】が補修され、【新二】が住むようになったり、村の外に改めて畑を作ったりした。
そして今日、【ファイゼ】村に新しい【兵士】が【ベイル】町より転任されるらしい。
「初めまして、今日から【ファイゼ】村に転任になりました【ロモッコ】二等兵士です」
「【ケインズ】一等兵士だ」
「同じく【サクマ】一等兵士です」
「【ファイゼ】村にようこそ、一等兵士の【前田新二】だ。ここは人も物も何もかもが足りないから【ベイル】町から転任してきて下さった事には感謝しかないです」
長身で活発そうな桃色の髪の少女【ロモッコ】、ヤンチャ気漂う紺色の髪の【ケインズ】、眼鏡でおとなしそうな黄緑色の髪の【サクマ】。三人とそれぞれ【新二】は握手をし、4人での新しい兵士生活が始まった。
【ロモッコ】【ケインズ】【サクマ】の三人が来てから更に一週間がたった。最初は【ベイル】町の兵士と言う事で【地竜】の件もあり、敬遠され気味だった三人だが。人手も食糧も物も足りない【ファイゼ】村の環境がそれを許さず、一度作業を共にすればすぐに村人達と仲良くなった。
【ロモッコ】は今回唯一の女性兵士だがリーダーシップがあり、害獣対策や食糧問題、今後の村の貿易について【ロゼッテ】さんと相談し、尽力してくれている。
【ケインズ】は【ロモッコ】の補佐的ポジションで【ロモッコ】の計画や指示を村人達に伝えに行ったり、【ベイル】町に状況報告もしている。
【サクマ】は植物に詳しいらしく。畑に向いている土地探しや薬草、食べれる山菜やキノコなど探して食糧問題の解決に貢献している。
そして【新二】は村の防衛と食糧確保、近隣調査の目的で魔物や獣を森で狩っていたのだった。
「さて、そろそろアイツを探しに行くか」
【新二】はこの一週間で近隣の森で獣や魔物を狩りまくり。以前は村の近辺にも出没していた獣物達もすっかり姿を見せなくなった為。森の更に奥を調査する決心をしたのだ。
「(本当は一人の調査はあまり好ましくは無いのだろうけど、俺一人なら最悪逃げれるからね)」
【ロモッコ】が聞いたら【危険な単独行動】と叱責されそうだが、森の安全化は全員で相談し、一番戦闘力のある【新二】が請け負う事になったが、まだまだ人材不足の【ファイゼ】村には同行出来そうな人物はすでに仕事を持っており、手が離せないので。結果的に何とも言えない所でもある。
【新二】は、獣道を進みながら何か異常な痕跡がないか探す。大量発生している魔物はいないか?、巨大生物の足跡は無いか?、何者かが戦った痕跡は無いか?。脳内で空白だった森の地図を埋めながら探索する。
数時間後、赤黒い毛並みの巨大熊を仕留め。【新二】は適当に蔓と枝で作ったソリに乗せ、【ファイゼ】村に向けて歩みだした。
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