第16話 星
「先程はすまなかったな。私も【マエダ】君があそこまで力があるとは予測していなかったのだ」
【ベイル】駐屯地に戻り、怪我の手当てを受けた【新二】は再び兵士長の執務室に出向き、【バウンズ】兵士長と向き合っていた。
「いえいえ、こちらこそいい勉強になりました」
若干量ぎこちない雰囲気の謝罪会話を済ませると【バウンズ】兵士長が本題を切り出した。
「先程の実力を踏まえて【マエダ】君を【一等兵士】に昇格することが決まった」
「【一等兵士】・・・ですか?」
「そうだ、一等兵士だ。【新兵】だった君には改めて説明するが、【帝国兵士】には皆階級がある。下から順にー
訓練兵<新兵<等級兵士<副団長<団長・・・と続く。
等級兵士は星と呼ばれる等級の多さが階級を表し、一等級から十等級まであり。十等級が最高の階級となる。呼び方は星が一つなら【一等兵士】4つなら【四等兵士】といった具合だな。
そして私のような【一般】の兵士長は【五等兵士】から。魔法兵士長、竜騎兵士長、など特殊な兵士長は【八等兵士】以上の等級兵士の中から選ばれる。理解出来たかね?」
【新二】はコクりと頷き、【バウンズ】兵士長は【新二】に銅制で一の数字がかかれた星型のバッジを【新二】に渡す。
「無くすと一階級ダウンのペナルティがあるから注意するように」
「あっ・・・はい・・・」
【新二】はバッジを受け取り、何処につけるか不安そうな顔で【バウンズ】兵士長を見ると、半笑いの兵士長が自分の襟にある古びた五等級のバッジを指差しし、【新二】は学ランの襟に校章をつように。【兵士服】にバッジを着けた。
「まだピカピカで軽いバッジだが、いつまでもそのピカピカバッジでいないように頑張れよ」
「はい!!」
【バウンズ】兵士長との話も終わり、【新二】は【ファイゼ】村を目指し町を出る。
【ベイル】駐屯地から【新二】が出ていくのを執務室から見送った【バウンズ】兵士長の背後に、一人の人影が現れる。
「【バウンズ】さんに魔法を使わせる程の兵士が一等とは、随分自身の評価が低くありませんか?」
襟に四の文字が刻まれたバッジを着けた赤髪の女兵士【アルテナ】副兵士長が【バウンズ】兵士長にたずねる
「【アルテナ】か」
「はい、例の件で少し【ファイゼ】の村人と揉めましたが無事に事は運びそうです」
「そうか・・・、引き続き頼む」
「了解です」
「なぁ【アルテナ】、君から見てあの兵士は何等級の実力があると思った?」
「低くても三等級は出てましたね。最後の斬擊は私でも少し危なかったかも・・・」
「そうだな【アルテナ】。だからあえて一等級にした。【マエダ】は【窮鼠】、追い詰められれば追い詰められられるほど力を増すタイプだ。ああいうタイプはその特性により早死にする、私は彼の実力を高く評価もしている。だからー」
「だから、一等級にしてじっくり育てたいんでしよ?。久しぶりの有望株だもんね」
【バウンズ】兵士長は【アルテナ】に言葉を取らればつが悪そうに後ろを向く。
「でも【窮鼠】は死にたがりだよ、そうしないと強くなれないから・・・」
「分かっている・・・それでも育てて見たいのだ。もしかしたら私が越えられなかった五等級の壁させも越えてしまう存在かもしれないしな」
【バウンズ】兵士長は【新二】が歩いていった方角の空を見て。深く息を吐いた。
久しぶりに実家に帰ってきたような感覚と言えばいいだろうか。実際は【ファイゼ】村で過ごした日々は数日で、実家と呼べるほどいた訳ではないが。思いの外この過酷な【ファイゼ】村の事が気に入っていたらしい。
【なりませぬ!!】
【ファイゼ】村に到着して早々【ロゼッテ】さんの怒鳴り声が聞こえ。【新二】は声の聞こえのした方向に走る。
「他の獣物なら幾らでも持ち去るがよい。しかーし!!、この【地竜】は【兵士】様、いえ【マエダ】様が我ら村の人を守る為に戦い。仕留めた物。いくら【ベイル】町の兵士様と言えど【マエダ】様の許可無く持ち去ろとすることは許さぬ」
【ロゼッテ】が地竜の亡骸の前に立ち、【ベイル】の兵士達が【地竜】を馬が引く荷台に乗せようとする事を拒否している。
「【ロゼッテ】さん、我らは別に泥棒をしに来た訳じゃない。今回そちらの兵士が【ベイル】町に流れる川の上流で獣物を殺しまくったせいで川の一つが血に染まり使えなくなった。その賠償として魔物の引き取りに来てるんですよ」
「じゃから外の魔物は好きなだけ持っていけと言うとろうが!!それは【副兵士長】様とも話したことだえ!!」
「あの獣数百匹と【地竜】の価値を同じとおもってんのかババァ!!」
兵士の一人が怒りを我慢出来ずに【ロゼッテ】の胸ぐらを掴み上げる。
「今回血で汚れた川を元に戻すのに何日かかると思ってんの?。獣物を町に運び、解体して換金するのにどんだけ手間かかるか分かってんの?。すべての工程に人が多く関わればそれだけ人件費がかかるんだよ!!。更にそれらを差し引いた額でこの件の賠償ができる程安くはないぞ」
【ロゼッテ】が捕まれた手を振りほどこうともがき、村人の男性が次々【ロゼッテ】を助けようと兵士に掴みかかるが、簡単に他の兵士達に取り押さえられる。
「【地竜】の素材は需要が高い。今回の賠償には必須の素材なのだ!!、分かったかクソババァ!!」
兵士は【ロゼッテ】を乱暴に突き放し、【ロゼッテ】は地面に転がる。
「なりませぬ!!、相手が兵士と言えど。恩人が身を削り打ち倒した【地竜】を持っていくなど。絶対になりませぬ!!」
「しつこいんだよ!!」
兵士が這い寄る【ロゼッテ】に足を引き下げる。
「【ロゼッテ】さん。【地竜】は諦めましょう・・・」
兵士と【ロゼッテ】の間に【新二】は入り、鋭く睨まれた兵士は引き下げた足を元に戻す。
「誰だてめぇ」
「俺は【前田新二】【ファイゼ】村に派遣された【一等兵士】だ」
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