第14話 噂
【兵士長】
それは一つの市町村の兵士を纏めるトップであり、戦闘において数百人の兵士に指示を出し、その戦果において責任を負う者だ。
【ベイル】町に所属する全兵士のトップであり、近隣の治安維持における最高責任者である黄色の髪の中年男性。【バウンズ】【兵士長】は部下からの報告を聞き眉を歪めた。
「ほう、【地竜】と互角以上に戦い、魔物の群れを臆する事なく殲滅する【新兵】か・・・」
「ハッ!!、眉唾物と言いたい所ですが【ラインバック】を始めとする【シルクハット】【ルシェル】【デボン】以下数名の兵士達が現場を目撃しており、状況的にもそう判断せざる追えない事態であります」
【バウンズ】は報告を聞くと伝令兵士に下がるよう伝え、兵士が執務室を出て行くと席を立ち、開いている窓から外の町を眺める。
「【英雄】【武神】【要塞】【賢者】【魔手】・・・。今年は帝国史上稀に見る怪物の年と聞くが、お前もそうなのか?
【マエダ・シンジ】よ・・・」
【新二】は【マットン】につれられて駐屯地の廊下を歩いていた。
「これから【兵士長】の所に行くけどまず着替えようか」
「あっ、あの・・・俺の兵服って・・・」
「ああ、君の兵服はかなり血の汚れが酷くてね。洗濯も意味が無さそうだから新しい【兵士服】をうちの在庫からあげるよ。一様ポケットとか確認したけど何か大事な物とかって入ってなかった?」
「特にはないです。ありがとうございます」
「気にしなくていいよ、【兵士服】は戦闘や訓練でよくダメになるから在庫は多いんだ。もし前の【兵士服】が要るなら早めに言ってね。ゴミとして処分されちゃうから」
【新二】の頭に兵服を貰ったあの時の記憶が甦る。
【ワシは勝てとは一言も言っとらん。【明日の夜明けまで生き延びる事】と言ったのだ。お前は生き延びた、黙って受け取れ】
「【マットン】さん、俺の【兵士服】一様貰っていっていいですか?」
「何か思い出でもあるんだね、いいよ」
「ありがとうございます!!」
【マットン】と話をしている。間に倉庫にたどり着き、【新二】の体格にあった【兵士服】を見つけると【新二】は物陰で素早く着替え、患者着を【マットン】に渡し、二人は【兵士長】の執務室へと向かった。
トントントン!!
「【医療兵士】の【マットン】です。【マエダ・シンジ】をお連れしました」
「入れ」
太く重い声質の返事があり、部屋に入ると40代ほどで上唇に髭を蓄えた男性が机の上で手を組んで待っていた。
「君が【マエダ・シンジ】だね」
その何の脅しも圧力も無い一言。だが【新二】は目の前にいる人物が間違いないなく【ベイル】町所属する何百人の兵士を従える男【兵士長】と思わせるには十分の風格が目の前の人物にはあった。
「あっ・・・はい!!【ファイゼ】村所属の【前田新二】です!!」
「私は【ブレイド・バウンズ】、【ベイル】町の【兵士長】を任されている者だ」
【バウンズ】は敬礼する【新二】を鋭い眼差しで頭の先から爪先まで見定める。
「成る程。要件は【ファイゼ】村に戻りたいと言った所か?」
「はい・・・」
「その件だが、君には少し【ベイル】に滞在してもらう。勿論【ファイゼ】村が心配だろうが、【ベイル】から既に兵士を派遣している」
「ありがとうございます」
「それと例の獣物の死骸についてだが、早急に手を打たないと良からぬ魔物まで誘き寄せてしまう為、獣物の死骸はこちらで処理させてもらっても良いかね」
「あっ、お願いいたします」
「では、君を引き留めた理由だが。君の実力を確認する為だ」
「実力の確認ですか?」
「そうだ、今回の件で【ベイル】を流れる川の一つが血で汚染され、暫く使い物にならない」
【新二】の顔が固くなり口元が若干ひきつる。
「これは【ベイル】の町人の生活にか変わる重大な事件であり、【帝国本部】へ報告をしなければならん。更にその原因が【地竜】を含む魔物の集団を斬殺した事による物で、斬殺した人物がいればとなれば当選責任を追及する対象となろう」
【新二】の顔が青くなり冷や汗がながれる。
「だが、今回の件が【ファイゼ】村の危機的状況であり、やむ終えなかったとなれば責任は少しは軽くなるだろう。すでに【ファイゼ】村の村人から多くの【地竜】の証言は得た、あとは【マエダ】。君が【地竜】を単独で倒しうる実力を証明すれば良い」
「具体的はどうすればいいんでしょうか?」
「兵士の【訓練場】で私と模擬戦をしてもらう」
【兵士長】がニヤリと笑い、【新二】の背中に悪寒が走った。
【ベイル】町から外に出て数十分、露天彫りされた円形の巨大な穴の前に【新二】は連れられてきた。
「ここが【ベイル】の兵士が訓練する訓練場。【ガウス】訓練場だ!!」
【バウンズ】兵士長は一言【新二】に説明すると岩を削られて出来た階段を降りていく。
「今から200年ほど前、当時の【ガウス】兵士長がより高度な魔法を安全に訓練が出来る場所を作ろうとした。【ガウス】兵士長は始め、高く強固な壁や結界やシールドを展開する。など様々な訓練場を試作したが、どれも【ガウス】兵士長の望む耐久性には至らなかった。だが、【ガウス】兵士長は諦めなかった。上官や部下にバカにされても思考錯誤を続け、今の地面を露天彫りし、更に強固になるよう魔法と結界でコーティングしたこの【ガウス】訓練場を作った」
【バウンズ】兵士長は訓練場の中心にたどり着くと【新二】に振り替える。
「ここは帝国でも他に見劣りしないほど強固な訓練場。周りの心配をせず本気で掛かってきなさい」
【バウンズ】兵士長が剣を抜き、【地竜】を越える圧力が【新二】を襲う、【新二】は悪い予感が当たったと冷や汗を流し。拳を強く握り占めた。
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