第8話 召集
「相変わらず【訓練兵】虐めに精がでますね【ブラウン】」
「それは嫌みか?【ロキット】副団長」
古びた教官室の中で襟と袖に赤の刺繍が施された黒い【兵士服】を身に纏う。銀髪の初老の男性が【ブラウン】教官に声を掛けた。
「嫌みもなにも無いでしょう、凡人のザコの集まりとは言え。【訓練兵】を片っ端から使えなくする貴方にはピッタリの言葉だと思いますが?」
【ブラウン】教官の雰囲気がピリつき、姿がぶれる。
「相変わらず手が速いお方だ」
【ブラウン】教官の拳を人差し指で【ロキット】は止めると張り付けたような笑顔で【ブラウン】教官を椅子に座るように促す。
「今日は貴方に話をしに来たんです。争う気があるのならその後にしてください、もっとも貴方が負けた理由は才能の差と言う事ですが」
「無駄口たたかずに要件を言え!!」
「それでは言わせていただきますね、【ブラウン】が教官を勤めている【訓練兵】を【ファイゼ】に派遣する事が決まりました」
「【ファイゼ】!!【ファイゼ】村だと?!。あそこは既に見放された辺境の開拓地ではないか!!」
「その通り、貴方のような凡人の【訓練兵】が派遣されるのにはお似合いの地だ」
「しかし・・・いや、だが、派遣にしては人数が足らないのじゃないか?」
【ブラウン】教官は何とか【新二】を【ファイゼ】村に送らないですむように思考を巡らせ、苦し紛れに指摘してみる。
「そこは心配ご無用、【派遣した事実】が欲しいだけなので」
「【訓練兵】を使い捨てにするきか・・・」
【ブラウン】の拳が震え、【ロキット】を睨み付ける。
「【訓練兵】を無駄に潰してる人には言われたくないですね、それに凡人はどうあがいても才のある者には叶わない。なら才が無くても使える場所に送り込むのは当然でしょう」
「しかし、まだ【訓練兵】になってアイツは半年も・・・」
ダン!!
【ロキット】が机を叩き【ブラウン】教官を黙らせる。
「これは決定事項であり、命令だ。本来は【訓練兵】から卒業した【新兵】を各々辺境や雑務要員として引き抜きたかったのだが。どこぞの凡人が脱落させてほぼいないためそれで我慢してやってるんだ!!」
【ロキット】は【ブラウン】教官に背を向けると教官室を出る。
「期限は1週間後だ、さっさとお粗末な訓練を終えさせて【ファイゼ】に送れ」
翌朝、早朝グラウンド。
「【マエダ】・・・今日は卒業試験を行う」
普段鼻垂れ呼びが多い【ブラウン】教官が今日は複雑な表情で名前を呼び。【新二】は救急行われる卒業試験に嫌な予感を感じた。
「本当にですか?【ブラウン】教官」
「その通りだ、試験の内用は裏山全域を使って明日の夜明けまで生き延びる事。ワシは手加減するつもりはない。10分間待ってやるからその間に逃げるがよい。では始め・・・」
何時より気迫の無い声で開始の合図をするが、【新二】は一歩も逃げる事なく【ブラウン】教官の前に立つ。
「逃げ無いとはどういうつもりだ?」
「流石に一月も毎日拳骨もらっていれば【ブラウン】教官に何かあったのか分かります。正直俺は【ブラウン】教官が嫌いです、理不尽な訓練、気絶するほどの拳骨。だけど教官は俺に【千時】を与えてくれた。【教官】の言葉を信じれば凡人である俺には生涯体得出来ない【心器】を与えてくれた。昨日も突然巨大蜥蜴と戦わされて死にかけたけど。俺は相手の速い動きを捕らえる集中力を貰った。だから【ブラウン】教官との最後の戦いは逃げたくないんです・・・」
「鼻垂れ小僧が一月で言うようになったな」
【ブラウン】教官の眼に何時の気力が戻り、【新二】は【千時】を具現化させる。
「だが【オオガリヘビ】を倒した位で調子にのるなよ【マエダ】、この世界の中では【オオガリヘビ】の強さなど虫けら以下だ。
そしてお前はまだまだ鼻垂れ小僧だが、戦う前に大事な事を教えよう」
【ブラウン】教官は小石空高く投げあげる
【【死中に活を見いだせ】!!。どんな絶望的の状況でも、生きる事を諦めるな。死線をくぐればくぐる程お前は強くなれる】
高速で落下する小石が地面に弾け、甲高い破裂音が聞こえる。両者は同時に足を踏み出し、卒業試験が始まった。
【新二】は巨大蜥蜴もといい【オオガリヘビ】との戦闘で開花した集中力で、最初の戦闘訓練では避けられなかった拳紙一重でかわし、【ブラウン】教官の脇腹へ【千時】を滑り込ませる。【ブラウン】教官は【新二】の動きを察知し、足に力を入れて地面を割り【新二】の体制を崩させ、【新二】の腹に拳を入れる。【新二】は【ブラウン教官】の拳を【千時】でずらし、【教官】の腕を巻き込むようにして【教官】の顔に後ろ蹴りを入れるが【ブラウン】教官の手に捕らえられ地面に叩きつけられる。
「グフッ・・・」
「【オオガリヘビ】との戦闘でワシの拳を見れるようになったようだが、本体の動きが眼に追い付いていないのう・・・」
【新二】は隆起した地面の先端を【千時】で切り、【ブラウン】教官へ飛ばす。
「小細工に頼るな!!天才どもは小細工程度では倒せんぞ!!」
【新二】と【ブラウン】教官の斬擊と打撃の応酬。【ブラウン】教官は【新二】の一撃、一撃に、ここが甘いと指摘するようなカウンターの打撃を食らわせ、【新二】は既に意識が朦朧とし始める。
【新二、何故教官の拳骨をわざわざ食らうのですか?】
【千時】の言葉が朦朧とする意識の中に浮かび上がる。
何故拳骨を食らうのか?
拳骨が罰であり、避けられないから?
【違う、今は罰ではないし、見えている】
【新二】は斬擊を辞め、【ブラウン】教官の拳を避ける事に集中する。
教官の拳が耳を通り過ぎる度に風圧が【新二】の頬を叩き、【ブラウン】教官の口元が僅かに緩む。
「グッ・・・カァハッ・・・」
【ブラウン】教官の重い蹴りがガードした【千時】ごと押し込まれ、衝撃波が【新二】を貫き地面に血を散らす。
【体術も斬擊同様飛ばす事ができるのだよ】
【ブラウン】教官の拳、足の周りの空気が蜃気楼のようにボヤけ始め。【新二】が避けた拳の先の地面が大砲を受けたように抉られる。
「(おいおいマジかよ・・・)」
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