トラブル発生?
屋外でご飯を作れる人って、凄いと思う。
「これって、どうやって火加減を調整するの?」
当たり前だけど、焚き火台にはつまみなんてついていない。火力調整が出来ないし、火の勢いを見て薪もくべなきゃいけない。ハードルが高過ぎます。
「網の中心部が温度高いから、じっくり加熱したい物は端に置けば良いんだって」
これは良い事を聞いた。流石は竜也、頼りになる。
「ありがとう。助かるよ。まずはミズの皮むきだな。これ結構癖になるんだよ」
葉っぱを根の方に向かって引っ張ると、するすると剥けていくのだ。
「これなら僕でも出来るよ」
桃瀬さんが夢中になってミズの皮むきをしてくれている。ここまお任せして次の工程に移ろう。
「ご飯は飯盒で炊くんだけど、竜也に任せて良い?ってか、僕にも教えて」
飯盒でご飯を炊くチャンスなんて滅多にないんだ。この機会にしっかり覚えてやる。
「良いけど、先ずはお米を研いで水に浸す工程なんだ。だから大事な所になったら、声を掛けるよ」
本当はマンツーマンで教えて欲しいんだけど、おかずがミズだけになってしまう。
「信吾君、今日は何の塩釜を作るの?この間の鯛の塩釜美味しかったなー」
秋吉さんは塩釜焼きを気に入ってくれた様だ。
嬉しいけど、僕との思いでって食べ物関係ばかりな気が……スペック的に、他の思い出は厳しいか。いつか遊園地や映画にも二人で行ってみたいです。
「海老と野菜の塩釜を作ろうと思うんだ」
最初は鶏肉を使おうと思ったけど、スペアリブと肉被りになるから変更しました。
野菜はジャガイモとシイタケを使います。
「卵を黄身と白身に分けるんだよね。分かる所までやっておくよ」
秋吉さんからやる気が伝わってくる。寂しいけど、僕は僕で頑張ります。
「次は……徹、ダッチオーブンってどうやって使うんだ」
予習で動画は見ていたけど、実際に見てみるとダッチオーブンはかなりごつい。初めて使う調理器具だからテンションが上がってしまう。
「蓋に炭を乗せて、上下から加熱するんだよ。使う野菜は人参とジャガイモ……こっちは俺と祭に任せておけ」
ちゃっかりしていると言うか何と言うか……竜也は夏空さんと料理をする様だ。
うん、夏空さんは肉料理が得意だから、安心して任せられるよ。邪魔したら、馬に蹴られそうだし、何も言わないでおく……二人共、良い顔で笑っているし。
「さてと、僕は豚汁を作るか」
糸こんを下茹でして、野菜を切っていく。使う野菜は人参・ジャガイモ・ゴボウ・大根・シイタケ。出来るだけ、同じ食材を使い回せる様にしました。
鍋にバターを入れて豚肉を炒めていく。そこへ野菜と糸こんを投入。
「信吾君、この後はどうすれば良い……あれ、豚汁にバター使うの?」
なんだろう、次の工程を聞きにきただけなんだろうけど、救われた感じがします。
「うん、今回は洋風な食べ物が多いからバター豚汁にしようと思って……どこまで進んだの?」
キャンプで汁物と言えば豚汁だと思う。初夏といえ山の夜は涼しい。豚汁はうってつけだと思う。
「秋吉―。皮むき終わったよ……もしかして、僕邪魔だった?」
邪魔?皆で協力して料理しなきゃ駄目なのに、邪魔な訳がない。
僕は残念だけど、秋吉さんは気にしていないと思う。
「陽菜ちゃん、ぜーんぜんそんな事ないよ。大丈夫だからー、ねっ!」
予想通り秋吉さんは気にしてない様だ……少しは残念がって欲しかったです。
「竜也、今手放せる?」
竜也なら任せても安心だ。まあ、簡単な作業だから桃瀬さんも出来る筈……少しでも秋吉さんと二人でいたいんです。
「大丈夫だよ。なにすれば良いの?」
僕は有名人な桃瀬さんと話す時、緊張してしまう。でも竜也は桃瀬さんと緊張しないで話せる。
「ミズを短く切って下茹でしてもらえる?それを塩昆布と和えて。それと根っこは残しておいてね。多かったら、違う料理を作るから分けておいてね」
その後もわいわい騒ぎながら、料理をしていきました。厨房とは違い皆で騒ぎながらする料理も楽しいです。
◇
……果たしてあれを林間合宿と呼んで良いのだろうか?
「にぎやかだし、まるでパーティーだね……あれ、キャンプ飯になるのかな?」
織田君グループは一班一品の料理を作り、パーティー形式にしてご飯食べている。スマホとスピーカーを繋いで大音量で音楽を流していて、かなりうるさい。
「うちも負けていないだろ?……料理のレベルは、確実に向こうを超えていると思うぜ」
徹も渋い顔をしている。注意したいところだけど、先生に任せておく方が安全だ。
「確かにキャンプとは思えない豪華さだね」
出来れば食材は残さず使いたいと思ったら、品数が増えてしまったんです。
今回のメニュー 飯盒で炊いたご飯・バター豚汁・スペアリブ・海老と野菜の塩釜・水の塩昆布炒め・ミズと豚肉の炒め物・ミズの根っこのたたき・大根サラダ。
肉がメインなので野菜料理に品数をふやしました。
「塩釜、私が割る。良いよね?……美味しそうー。ジャガイモにバター乗せたい!」
秋吉さん、バター豚汁に使ったやつが残っているので出来ます。
「スペアリブ柔らかいな……食い応えもあるし、最高だ……徹、顔にソースが付いているぞ」
そう言って徹の口をハンカチで拭く夏空さん。仲が進展しまくってないですか?
「じ、自分で拭けるっての……ミズって美味いな。少し他所に持って行っても大丈夫か?」
友達の所だろうか?多めに作っているから平気だと思う。
「豚汁、温まるね。バターと味噌の相性が良いし……野菜が多めだから嬉しいな」
流石はアスリート。こんな時でも桃瀬さんは野菜中心に食べている。
◇
一日の日程が終わり、コテージでくつろいでいると、グループライソが鳴った。
祭“大変だよ。実が友達を迎えに行ったまま帰って来ない”
なんでも秋吉さん達と同室の子が肝試しに参加。その時に一人だけはぐれてしまったらしく、秋吉さんが探しに行ったらしい。
「急いでいてスマホを持って行っていないのか。でも、なんで一人で……」
ちなみに織田君グループは、気付かずに帰ってきてしまったそうだ。
僕は探しに行こうと思う。でも、徹達を巻き込む訳にはいかない。
「先生にばれたら、怒られるからって一人で探しに行ったらしいな……俺達も行くぞ」
徹が備え付けの懐中電灯を手にしながら立ち上がる。
竜也も来てくれるみたいだ。
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