そんな都合よく閃かない
連休も終わって、学校が始まった。あのデート?以来なにもありません。
僕は、いつも通り徹達とつるんでいます。
「今度のランチ会何食べたい?」
秋吉さん達との昼ご飯は月二回第一、第三火曜日となり、ランチ会と名称が決まった。
「いきなり聞かれてもな……みんなで食べられる物となると、限られてくるし」
普通の弁当なら、色々作れるけど、みんなでつまめるとなると限られてしまう。一人一個作ろうかな。
「イタリア料理を中心にしたお弁当とか出来る?」
イタリア料理か。弁当向きなイタリア料理をピックアップしてみるか。
「とりあえずイタリア料理の弁当が第一候補と……順番にリクエスト形式が無難かもね」
季節に合わせたお弁当っての手もあるけど、毎週だから絶対ネタ切れしてしまう。
「皆、ちょっと良いかな?」
弁当話で盛り上がる僕達に秋吉さんが話し掛けてきた。最近緊張せずに話さる様になった……と思う。
「秋吉さん、信吾に用事?自由に連れて行って良いよ。ほれ、早く行って来い」
徹が手で追い払う仕草をする。なんとも徹らしい気の使い方だ。
「ううん、二人にも確認しなくちゃ、駄目なんだ。陽菜ちゃんの事覚えている?」
桃瀬陽菜さん、秋吉さんの幼馴染みで陸上の特待生。その人気は凄く、いつも周囲に人が集まっている。
「この間、テレビに出てたよな。あれでスポンサーが更に増えたって聞いたぞ」
凄いな。スポンサーなんて付いたら、プレッシャーが凄いと思う。僕は絶対無理です。
「うん……実は陽菜ちゃん、食欲が落ちているみたいんだ。それで良かったら、ランチ会に招待したいなって思って。陽菜ちゃんの分の、お金は私が出すから……信吾君、お願いっ」
この間の花見が楽しかったらしく、何回か話の中に出てきたそうだ。
招待するのは問題ない。問題があるとしたら、なんで食欲が落ちているかだ。招待したけど、やっぱり食欲が湧かなかったじゃ立つ瀬がない。
僕は漫画の主人公みたく、奇跡なんて起こせないんだぞ。
「僕は賛成だな。四六時中、人に囲まれていたら食欲が落ちて当たり前だよ」
竜也は賛成と……いくらファンとはいえ、ずっとつき纏われていたら、ストレスになると思う。
「俺も賛成だ。問題は、どこで飯を食うかだな。ああいう奴等って迷惑を掛けている自覚ないから、どこまでも付いてくるぜ」
好意だけに、注意も難しいのか。それに桃瀬さんのファンから、クラスの陽キャグループに裏庭がばれる危険性もある。
「裏庭以外で人目につかない場所か……難しいね」
入学してまだ一か月しか経っていないから、そんな穴場スポットは分かりません。
(理事長先生なら、どこか知っているかな?)
生徒の健康を守るって建前があるから、無下にはされないと思うけど。
「……俺に任せてもらえるか?信吾はメニュー作りに専念しろ」
徹がなにか思いつたようだ。でも、メニューか。
「桃瀬さんって嫌いな食べ物あるのかな?後、どんな物が食べたいか聞いておいて欲しいな」
食欲がないなら、さっぱりした物が良いと思う。逆に揚げ物は避けたい。後、アスリートだから食事制限もある筈……僕じゃなくて、栄養士さんにお願いした方が良いんじゃないでしょうか?
「嫌いな物はない筈だよ。この間のお花見は、皆でワイワイ話しながら、色んな物を食べられたのが良かったみたい」
色々か。確かに、種類が多いと盛り上がるもんな。量を減らして種類を増やす。
(煮物五種……味そんなに変わらないか)
煮物だけに、既に煮詰まっています。
「信吾、俺も金を出す……まじで頼んだぞ」
徹の目はいつになく真剣だ。まさか桃瀬さんを狙っている?……訳ないか。この間もそんなに話してなかったし。
「僕も出すよ。他人事な気がしないし。信吾君なら、出来るって」
逆に竜也は、花見の時、桃瀬さんと話をしていた。僕と秋吉さん、徹と夏空さん、竜也と桃瀬さんって感じだ。
でも、竜也知っている?期待がプレッシャーになる人間もいるんだよ。僕がそうなんだぞ。
「皆で楽しく食べられるお弁当か……」
料理の才能があったら、直ぐに閃くんだろうな。僕には、そんな特別な才能はない。
でも、最近料理をする事が楽しくなってきた。それは、この場にいる仲間のお陰だと思う……やれるだけ、やってみるか。
◇
今回の買い出しには秋吉さんと夏空さんがついてきてくれる事になった。女子二人とお出掛けなんて漫画やドラマみたいな展開です。
「それで今回は何を作るの?」
僕なりに色々考えてみた。百瀬さんだけに目がいっていたけど、他の四人も楽しめなきゃ意味がないのだ
「それは完成してからのお楽しみって事で。皆のリアクションもスパイスになるんだ」
皆が笑顔で食事すれば、桃瀬さんの食欲も戻る筈。それには自然なリアクションであった方が盛り上がると思う。
「あたい達は陽菜の好き物を教えれば良いんだよな」
秋吉さんと夏空さんは、桃瀬さんと付き合いが長い。これはかなり助かる。生きた情報を持っているって事なんだから。
「うん、今回は二人の手助けが必要なんだ。僕なりに、なんで桃瀬さんが花見を楽しめたのか考えてみたんだよ。あの時って誰も桃瀬さんを特別扱いしなかったでしょ。あれが逆に良かったのかなって」
秋吉さんと夏空さんは、昔と同じ様に接したんだと思う。多分、それが嬉しかったんだ。
「あー、それはあるかもね。庄仁君も相取君も、良い意味で普段通りだったし」
秋吉さんの言う通り、徹達は桃瀬さんを特別扱いしなかった。まあ、僕等の場合は女性ってだけで、特別扱いになるんだけどね。
「信吾君はあまり陽菜ちゃんと話をしていなかったよね。あまり、陽菜ちゃんに興味ないのか?」
確かに僕は桃瀬さんとは、あまり話をしなかった。正確に言うと、仲良く話す自信がないから、距離をとったのです。初対面の女子と仲良く話せなんて、無茶振りだと思う。
「これでも接客業の人間だからね。距離の取り方位、心得ているよ」
うちの店は芸能人や有名人利用してくれている。有名人だからって、テンションが上がる事はない。
あまり親しくない女子や陽キャと話す時は接客モードに切り替えています。そうすれば傷つく事もないし、面倒ごと事に巻き込まれる事もない。
「あたいが見た感じじゃ、良里を、誰かさんが独占していたからだと思っていたけどな。良里、気を付けなよ。誰かさん案外嫉妬深いんだぜ」
夏空さんが秋吉さんを見ながらニヤニヤと笑う。でも、織田君が女子とデートしているのは無関心だった気が……幼馴染みの自信なんでしょうか?
それとも……いつか秋吉さんに嫉妬されてみたいです。
「祭っ!し、信吾君、まずはどこへ行くの?魚屋さん?お肉屋さん?」
最初に行く場所は決まっている。
「まずは百均に行こう」
多分、桃瀬さんは舌が肥えていると思う。正直、味だけで満足させる自信はない。でも、今回の目的は食欲を復活させる事だ。
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