モテ期は30秒?
僕にもモテ期が来たんだろうか?朝、登校すると満面の笑みを浮かべた女子に取り囲まれたのです。
しかも、いつも織田君達にくっついているカースト上位の陽キャ女子の皆さんだ。
「良里君、祭から聞いたけどレンコンサンドイッチ作れるって本当?」
「私ユウが言っていたサンドイッチ食べてみたいな。食べさせてくれたら、ライソ登録してあげても良いわよ」
「なら私はデートしてあげる。帰りマッグ行こう」
ふと見ると、夏空さんが手を合わせて謝っていた。
うん、そういうオチね。分かってたよ。僕にはモテ期なんて来ないって。
(放課後デートか……一回は体験してみたいっ!)
サンドイッチ目当てだと分かっていても、心が揺らぐ。だって、このままじゃ絶対にデートなんて出来ないし。
どうしようか悩んでいたら、誰かに腕を掴まれた。
「良里君はバイトがあるから、そんな暇ないのっ!食べたいなら、自分で作れば良いでしょ」
秋吉さん、なぜかご機嫌ななめ……僕がバイトをサボると思ったんだろうか?
「実もレンコンサンドイッチを食べたんでしょ?ずるい」
「それで美味しかったの?」
「でも、良く男子の作ったサンドイッチ食べられるよね」
陽キャ女子の興味はサンドイッチの味に移行。僕はもう放置されています……最初からサンドイッチにしか興味なかったんですね。
「おう、お疲れさん。短い夢だったな。」
徹が苦笑いで話し掛けてきた。本当に覚めるのが早すぎです。
「いや、早く終わって良かったみたいだよ」
僕が女子に囲まれたのが気に食わないらしく、陽キャグループの男子が睨んできている。今の流れで怒る要素あったの?
「良里、これが現実だぜ。短い夢見られて良かったな。可哀そうに」
絡んできたのは、沖田零次。織田君の取り巻きで読者モデルをしているっていうイケメン。
「毎日鏡を見る度に、現実に直面しているから平気だよ」
飲食に携わる者として、朝の身だしなみチェックは欠かせない。鼻毛や無精ひげが伸びた人の料理なんて食べたくないだろうし。
「相変わらずネガティブだな。そんなだから、モテないんだぞ」
沖田は僕が落ち込まなかったのが面白くないのか、さらに絡んできた。僕がポジティブになったら、モテる確証でもあるんだろうか?
「僕は現実主義なの。それにポジティブな事を言ったら『調子に乗っている』とか言って絡んでくるんだろ?」
中学時代に嫌って程、経験しました。さっきまで囲んでいた女子が、僕達を見る。
「ま、お前なんか好きになる女なんていないから、傷つかなくて良いのかもな」
こんな性格だけど、沖田は見た目と俺様なキャラが受けてか女子に人気がある。世の中、理不尽です。
沖田は言いたい事を言い終えると陽キャグループへと帰って行った。織田君、佐藤君や田中君の事は叩いたのに、沖田の事はスルーなんだね。
「信吾君、大丈夫?」
竜也が心配そうに話し掛けてきた。まあ、これでも色々鍛えられているのです。
「大丈夫。飲食で働いていたら、もっとひどい絡みをされるから。でも、心配してくれてありがとう」
僕もホールを手伝う事がある。面倒な酔っ払いの相手は、僕の出番になるし。恋路や恵美ちゃんの事もそうだけど、意外と理不尽な目に遭っているのだ。
「もしかしてスリーハーツの事、嫌いになった?」
竜也もスリーハーツのラジオを聞いていたのだろうか?ツーショットを撮ってもらうって事はかなりのファンなんだと思う。
「まさか、悪いのは女子と沖田。スリーハーツは関係ないよ。昨日初めて聞いたけど、ラジオ面白かったから、また聞こうと思う」
上手くいけば秋吉さんとの会話に繋がるんだし……繋がるよね?
◇
裏庭に行くと、秋吉さんと夏空さんが待っていた。
「本当にごめん。まさか、あんなに食いつくなんて思わなくってさ」
夏空さんが苦笑いを浮かべながら謝ってきた。なんでも女子のライソグループで、スリーハーツのラジオの話題になったらしい。
そこで思わずレンコンサンドイッチを食べた事があるって言ってしまったそうだ。
「祭、ちゃんと反省している?本当に口が軽いんだから」
なぜか秋吉さんが一番怒ってくれています。こんな風に怒られたら、僕達は何も言えなくなる。
「それだけスリーハーツの人気が凄いって事さ。俺達三人で花見をする事になったんだけど、二人も来る?ちょっと時期は遅いけど、丁度良い場所があるんだ」
そして徹がすかさず話題転換……怒っていないけど、当事者は僕なんだけど。
でも、今の誘いはナイスだ。全部許す。
「おっ、良いね。このメンツは、話しやすいから楽しみだよ」
夏空さんは、直ぐに飛びついてきた。いつも明るく元気な彼女でも苦手な人がいるのだろうか?
「私も行きたい!でも、良いの?」
やった!秋吉さんも来てくれる……これは気合を入れて弁当を作らねば。
「二人、共歓迎するよ。来週の土曜日、ガス工事で店が休みでしょ。徹達も都合が良いみたいだし……突然だけど大丈夫?」
土曜日が休みなんて何年振りだろう。神様に感謝しなくては。
「私は大丈夫だよ……あの、お弁当は良里君が作ってくれるのかな?」
秋吉さんが期待を込めた目で僕を見てくる。さて、何を作ろう。
「いつも以上に気合を入れて作るよ。皆、食べたい物があったら、ライソして」
どうせなら皆が食べたい物を作ろう。上手くいけば秋吉さんと友達になれるかもしれない。
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