第5話
「ハッ!」
俺はスライムの頭に切り込んだ。
スライムは声上げることなく蒸発して小さい石ころを残して消えた。
この石は魔石でコレが討伐の証拠になる。
「はぁ~コレで終わりかな?」
俺は魔石を拾い空を見上げた。
空はもう夕暮れ…まぁ1匹倒すのにあれだけ時間がかかったらそうなるか
でも序盤では苦労したスライムがキリカさんのおかげでスムーズに狩れた。
と言うのもスライムは状態異常にすれば仲間を呼ばなくなる特性がある。
ゲームだと中盤以降じゃないと状態異常のスキルがない為それまでは回復と物理のゴリ押し戦法しかなかったが今回はキリカさんの炎系の魔法で呼ばれる前に倒す事が出来た。
「お疲れ様でした。証拠品の魔石はこの袋にまとめておきました。」
そう言うと魔石の入った袋を差し出した。
「ああ、ありがとう。」
俺は袋を受け取りヒモ部分をベルトに巻き付けた。
依頼は達成したし後はこの魔石を渡すだけだけどもう暗いし予定通り明日行くかな…
「キリカさんはこの後どうする?」
「私は…昨日泊まった宿に戻ろうかと思っています。」
…と言う事は街に戻るって事だよな?
でももう夜になるよな…
夜になるとウルフやゴブリンがこの辺りを徘徊しだす
一見弱そうだがいずれも群れを形成してるから一人ではまず倒せない
今日初めて会ったとはいえ彼女がいなかったらスライム討伐は無理だったしな…
「あー…もしよかったら家に来ない?すぐそこだし」
俺はさりげない感じで切り出した。
「え?でも…」
「ここまで街に戻るって事になると結構かかるしもうそろそろ厄介なモンスターがこの周辺まで来るからさ…」
「…」
キリカさんは下を向いて何か考えているようだ。
まぁそりゃそうか…今日知り会った男の家に誘うなんて罠としか思えないだろうしなぁ
俺も一緒に行けばいいんだけどそうなると俺が帰れないしどうしようか…
「…あの、ご迷惑ではありませんか?」
「え?」
「いえ…もしご家族の方がいらっしゃるなら…」
「…ああ、大丈夫大丈夫!今は俺一人しか住んでいないし使っていない部屋もいくつかあるから問題ないよ」
「そうなんですね…では恐縮ですがお言葉に甘えさせていただきます…」
お?随分あっさりOKしたな?
まぁこのまま行かれて何かあったら目覚めが悪いし良かったかな?
「OK!じゃあ行こうか」
そうして俺はキリカさんと共に家に帰った。
…一方その頃
ドラゴンの討伐に向かっていた僕達は目的地付近の森林で休息をとっていた。
兵士は戦闘時の立ち回りの確認を行いエリス達は道中の戦いで負傷した兵士の治療を行っていた。
王国の神官は全員回復魔法を使えるがエリスの回復力は群を抜いていた。
通常傷の完治まで10分以上かかる所をエリスは3分もかからない早さで完治させた。
それを見た他の神官たちはエリスを称賛した。
てっきり疎まれるものかと思ったが杞憂で済んで良かった。
アイツは今頃一人寂しく雑草採取のクエストでもやってるんだろうか?
回復薬も満足に買えない状態で討伐クエストに行ける訳も無いし出来るのは採取か運搬クエストぐらいだろう
だが採取はそう頻繁にないし運搬は運搬用の荷台と馬車が無ければまず受ける事が出来ない。
そうなるとレベルなんて満足に上げられないしいくら両親のコネがあっても実力主義のあのギルドじゃ誰からも声をかけられず孤立していくだけ
要はこっちから何もせずとも勝手に自滅して家から出なくなるだろう。
「おーい!みんな集合!」
お、作戦の確認かな?
そう言えば今はアイツの事を気にしてる暇は無かったな。
さてと、僕も行かないとな
僕はみんなが集まっているテントに向かって歩き出した。
一方その頃フィンはと言うと…
あの後、家に帰りキリカさんに部屋を案内した後浴室に向かった。
浴室は白い浴槽と右側にシャワーが設置されていた。
よくよく考えるとこんな森の中の家に水道が繋がっているのかっていうツッコみはゲームしてる時でも言っていたが転生してこの立場になった身としては感謝しかない。
俺はシャワーを浴び汗を流した。
シャワーを浴び終えて居間に行くとキリカさんが調理場で何かを作っていた。
だが調理中でもローブを外さないのは何でだ?
気になるが聞き出すのも何か申し訳ないし俺は一旦自分の部屋に向かった。
「はぁ~」
俺はベットに飛び込み仰向けになって天井を見た。
今日は一昨日の採取よりも激しく動いたからか眠くなってきた。
明日は魔石を渡して報酬を貰った後はどうしようか?
スライムの討伐報酬はたしか500Gだったな。
あれだけ倒して500だけって考えると薬草集めしてた方が楽なんだよなぁ…
だけど採取・運搬じゃ経験値が貰えないからレベルは上がらない。
そもそもレベルってどうやって確認するんだ?
こういうときステータスって言えば出てくるもんだと思ったけど全然違ったし
これが確認出来ない限りスライム以上のモンスターを闘うのは正直怖い
調子に乗って挑んで殺されたら身も蓋もない
大体今日はキリカさんのおかげで討伐できたといっても過言じゃないし今後も一緒に組んでもらいたい
でも最弱レベルであろう俺が頼んでも聞き入れてくれるのかどうか…
それもこれもまさかエリスが王国の僧侶になるとは思わなかったもんなぁ
この後はゴブリン・ウルフの討伐をクリアして最初のボスのブラックオークを倒してギルドから認定バッジを貰ってから冒険が始まるのが本来のシナリオ
スライムは単体行動が殆どだけどゴブリン・ウルフは基本群れで生息している
ゲームみたいに1~2体エンカウントして闘うんじゃなく一気に大勢で襲ってくるのは目に見えているしそうなれば確実になぶり殺しにされる
「…」
マジでどうしよう…このままじゃ最初の国で人生終わる未来しか見えない
だけどこれ以上考えても埒が明かない
こうなったら土下座でも何でもしてキリカさんとギルドの人達に頼み込むしかない
コンコンッ
部屋のドアがノックされた。
俺は起きてドアを開けるとキリカさんが立っていた。
「どうかした?」
「いえ…食事を作ったのでご一緒にどうかと…」
「ああ、ありがとう。じゃあ今から行くよ。」
そう言うとキリカさんは先に下に一階に向かい俺はその後ろについて行った。
一階に降りて居間に行くとテーブルには美味しそうな料理が並べられていた。
「おお…」
いかん…口からよだれが止まらない。
「勝手に食材を使ってしまいましたが泊めてくださるお礼にと…」
「え?ああ、全然良いよ!むしろこっちが感謝してるくらいだし!」
「そう言っていただけると私も嬉しいです。」
早速俺はイスに座り置かれているスプーンを手に取り食事を始めた。
「じゃあいただきまーす」
そうして今日初めて会ったキリカさんが作ってくれた料理に舌鼓を打ちながら一日を終えた。
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