第4話

「えっ?マジっすか?」


「ハイ…申し訳ございませんがご了承下さい」


そう言うと受付嬢は頭を下げた。


マジかよ…ここでリアル要素が出てしまったか


ゲームだと永久に受注で来たから序盤の資金稼ぎに良かったんだがなぁ


他の採取クエストは割に合わないものしかないしなら討伐しかない


初期モンスターのスライム討伐があるけどこのゲームのスライムは群れで暮らす個体しかいないせいで単身じゃ厳しいだよな…


仮に単体でいても少しでも攻撃すれば寄生を上げて仲間を呼ばれるしかなりしんどい


せめてヒーラーがいれば何とかなるけど今いないしどうしたもんか…


「あー…じゃあコレでお願いします。」


俺はあらかじめ剥がしていた依頼紙を受付嬢に見せた。


「スライムですか?可能ですがフィンさん一人では厳しいかと…」


「ですよねぇ…」


とは言っても今ある採取クエストは危険な場所に行かないと無いものしかないしこれしか無いんだよなぁ…


「あっ!そう言えば!」


悩んでいると受付嬢はハッと何かを思い出した顔をした。


「実は昨日夜遅くフィンさんと同い年くらいの女の子が登録に来たんですよ。

もう少ししたら来ると思うので一緒に受けてみたらどうでしょうか?」


「え?」


コレもまたゲームに無い展開だ…一体誰だ?


「ちょっと待っててください」


受付嬢は名簿を開いて確認した。


「えーっと名前はスメラギ・キリカでオウカって国の出身みたいですね…」


「え?」


オウカ!?まさか今その国の名前を聞くとは…


オウカはこの世界での日本の国でゲームでは終盤手前に行く事になる国なんだがいったいどういう事だ?


しかもスメラギ・キリカって名前は聞いた事ないんだよな…一体誰だ?


「ちなみにその人のジョブって何ですか?」


組むとしたらまずはジョブは聞いておかないとな。


確かオウカはサムライとニンジャが殆どだが中に珍しいジョブを持っているキャラがいたような…


「ジョブは…シャーマンの様ですね」


「え!?本当ですか?」


「はい、昨日そう仰っていたので間違いないです。」


「…」


マジか!?もし本当なら序盤で大きな戦力なる。


シャーマンもヒーラーと似たようなジョブだが違いが大きくある


ヒーラーは回復と補助魔法しか覚えないがシャーマンはヒーラーほどの高等な回復魔法は覚えないが攻撃魔法を覚えることができる。


オウカのボスでシャーマンがいたけどマジでめんどくさかったから良く覚えている


で、何でこのシャーマンがレアジョブなのかと言うとシャーマンは特殊な血筋で尚且つその中でも極稀にしか生まれない…って設定だ


それなのに後半は当たり前のように回復使ってくるモンスターも湧いてたからそんな設定も無かったようなもんだったけど


「あっ!来ましたよ!」


受付嬢は入り口の方を指さした。


指した先を見ると白いローブを纏っている女が出てきた。


女はそのままこっちに向かってきた。


「…遅れてしまい申し訳ございません、昨日仰っていたご一緒させていただく方と言うのは…」


「…」


透き通った声に俺は面をくらってしまった。


「いえいえ!タイミングバッチリです!実はご一緒していただく方はこちらの…」


「…」


「フィンさん!」


「!?」


俺はビクッとなって我に帰った。


綺麗な声で思わず固まってしまっていた。


「あの…大丈夫ですか?」


「あっ…ハイ大丈夫です」


イカンイカン…声だけでこの様じゃ顔見たらどうなってしまうんだ。


俺は気を取り直して挨拶をした。


「俺の名前はフィン・ランドール。今日はよろしく!」


そう言って俺は手を差し出した。


「私はスメラギ・キリカと申します。こちらこそどうかよろしくお願い致します。」


彼女は俺の手を握り一礼した。


「パーティー結成ですね!ではクエストは何を受けますか?」


っとそうだ、聞きたいことがあったんだった。


「そうだ…スメラギさんは回復魔法の方は使えたりする?」


「回復魔法ですか?」


回復が使えると言ってもシャーマンの序盤に使えるスキルは一切不明だからここ聞いておかないと後々面倒だ


さて…どうか…


「そうですね…初期の回復魔法であれば…」


ナイス!初期でも使えるなら安心だ…ハア良かった


「そっか、教えてくれてありがとう!」


「いえ…フィンさんの方はどうでしょうか?」


「え?俺?あー…」


そうだ…俺まだ戦闘すらしたこと無いんだ。


やっばいな…でも隠し通すのは無理だし正直に言うしかないか…


「…実は戦闘経験ゼロで…」


「えっ、そうなんですか?」


彼女は驚いたような声を出した。


これは引かれたかな…まぁ切り捨てられても文句は言えないな。


「大丈夫ですよ。私もあまり戦闘経験が無いのでお互い様です。」


…何て良い人なんだ。ちょっと泣きそうになってしまった。


「ありがとう、じゃあコレお願いします。」


俺は入ってきた時に剥がしておいた依頼紙を受付嬢に渡した。


「はい!スライム討伐のクエストを受理しました!それではご検討をお祈りしています!」


「じゃあ行こうか」


「はい、よろしくお願い致します。」


俺とスメラギ・キリカはスライム討伐の為ギルドを出た。


「お?」


ギルドを出ると町の大通りに人が集まっている。


さっきリカルドが言っていたドラゴン(という名のワイバーン)討伐の出発式かな?


ここはゲームでもあったから覚えているけど結構壮観だったんだよな


まぁ相手がワイバーンだって事を知ってると何とも言えないけど…


ま、そんな事より今はスライム討伐だ


幸い討伐隊は南の門から出てまっすぐ向かうからこっちとは鉢合わせする事無いからそこはラッキーだった。(道が一緒だったらリカルドがまた何か言ってくるだろうし…)


だけど初めての討伐だから緊張するな…このゲームじゃスライムですら油断できないし警戒しながら地道にやるしかない


(ハァ…最初から前途多難だな…)


俺は内心不安を抱えながらスライム討伐へと歩き出した。






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