第3話
「ふわぁ…」
俺はあくびをしながらエリスの村に向かっていた。
今日はエリスの冒険者登録を済ませて武器を買って簡単な討伐クエストをする予定だ。
だけどあんだけ落ち込んでたしもう立ち直っているのかどうか…
でも回復魔法出来るキャラは現状エリスだけだし説得してでも連れていかないと
っと考えてったら着いたな。さて…
「おーい!」
俺は家の外から叫んだが反応は無かった。
「居ないのかー!おーい!」
まだ寝てるのか?でも勝手に家に上がり込むのはな…
一体どうしたもんか…
「おーい!」
農場の方から声が聞こえた。
声の方を向くとエリスの父親がいた。
「あ!オジさん!エリスはいますか!」
そう言うと小走りでこっちに向かってきた。
「一昨日はわざわざ送ってくれてありがとうな!」
「ああいいですよ。それでエリスは?」
エリスの事を聞いたら急にバツが悪そう顔をした。
「エリスか?あーそれがな…」
「?」
「実はフィンに送ってもらった後王国の兵士が来たんだ。」
「え?」
エリスの父親は家まで送った後の事を話した。
聞くとどうやらエリスの回復魔法を聞いた神官長がスカウトに来たみたいだ。
…そしてエリスの魔法の事を話したのはリカルド
この男は俺とエリスと同い年で貴族の息子でエリスの幼馴染である主人公をとにかく嫌っている
嫌っているだけならまだしも中盤辺りから俺を殺そうとあの手この手で襲い掛かってくきたりもした。
そして最後まで和解することなくロクな最期を迎えた。
ここでまたゲームとは別の展開か…しかも厄介な展開
エリスがいなくてもストーリーの進行に問題は無いものの回復担当がいない今討伐クエストの難易度がかなり高くなる。
一応採取クエストで金を貯めて回復薬を貯めこんで討伐クエストに行くことができるが…そんな事じゃ金がいくつあっても足りない。
「そうですか…分かりました。」
「ああ…スマンな」
エリスの父親は何度も頭を下げて謝っていた。
俺は仕方なく一人街に向かい武器と回復薬を買う為街に向かった。
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「よし…これだけあればいいか」
俺は武具店で購入した初期装備のショートソードと回復薬を一旦リングに収納した
残りは500G…装備より高い回復薬ってどう言う事だよ…
鉄製のショートソードは400Gなのに回復薬は1500Gもした
ここはゲームと変わんないのかとぶつくさ言いながら俺はギルドに向かっていた。
「おやおや?君はフィンじゃないか?」
「ん?」
声の方を向くと大通りの向こう側に神官服を着たエリスの隣に騎士の格好をした青髪の男が立っていた。
「ああ…リカルドか」
ここはゲームと変わらないな。エリス以外は
「何だい?今日は買い物に来たのかい?」
嘲笑うかのような態度のリカルドに反してエリスは俺をチラチラ見ている。黙って入団したことを申し訳ないと思っているんだろうか?
「ああ…まぁそんなとこ」
俺は普通に返すとリカルドはまた笑い出した。
「ハッハッハ!そうかい!君は随分と暇なんだな!僕らは今からドラゴンの討伐に向かうんだ!君じゃ一生お目にかかる事は無いだろうがな!」
「…」
ドラゴンか…今の俺じゃ犬死にだろうな。
ってかドラゴンって言ってるけど確か違ったような…何だったかな?
でもそれでリカルドが大恥かくわけなんだけど今回はエリスも大恥かく事になるのは少し可哀想だな…
…まぁ推しキャラでもないし別にいいか…中盤辺りのイベントまでに救出しないと死ぬかもしれないしそれまでには強くならないとな
「おい!聞いているのか!」
俺はハッとしリカルドを見ると何度も足踏みをしていた。
(聞かせたいならこっちに来ればいいのにヘタレなのはゲームと変わらないのか…)
まぁそれならこっちとしては好都合なんだけどね。
「ああ…じゃあ俺は他に用があるからこれで…」
そう言うと俺は振り向いてギルドに向かった。
「クソッ!僕を無視してがって!」
フンッまあいいさ、アイツの隣にいたエリスは僕の隣にいる。
偶然回復魔法が使える人を探していると聞きつけた僕はすぐさま神官長にエリスの事を話した。
エリスは希少な回復魔法を使えるのは子供の頃に知った。
その時は便利だなとしか思っていなかったが後回復魔法を習得できるのは100万人に一人と知り驚いた。
実はその時に先生やパパや学校のみんなエリスが回復魔法を使える事を言ったが信じてもらえなず揚げ句の果てにウソつき呼ばわりする奴も出てきた。
だから俺はどうやったら信じてもらえるかどうかをずっと考えてきた。
それから10年…チャンスは突然訪れた。
その日は騎士団入団試験が開催されエリスが入団を希望していると聞いた。
何でも金銭面でいつ苦労している両親に楽をさせてあげたいとか何とか…
まぁ理由なんてどうでもいい。もうすでに騎士団に入団していた僕はあの男からエリスを引き剥がす為に貴族の特権を余すことなく使った。
町の入り口の兵士に金を渡しておいて二人が来ることを信号弾で伝えるようにして
来たと同時に採用試験を始めた。
もうその時には採用予定の人数を上回る人がいたおかげで10分足らずで試験を終わらせることができた。
あの二人が着いたころには片付けをしている最中だった。
終わった事を伝えた兵士によるとエリスはかなり落ち込んでいたようだ。
だが一緒に来たフィンは落ち込むことなくエリスを抱えて帰って行ったという。
それを聞いた僕は内心いい気味だと思ったがそこで満足する僕ではない。
騎士団に入団できないとなれば次は冒険者になるだろうと考えた僕は冒険者にとって重要な回復薬アイテムの値上げを行った。
だがそれはアイツ…フィンだけだ。
あらかじめ道具屋の店主に金を渡してフィンだけ倍の価格で売るように言っておいた。
アイツの両親は有名な冒険者の息子のおかげでこの町で商売をしている奴らでアイツの顔を知らない人間はいなかった。
だが武具店はアイツの親父と親友だったからと断った。
この店を潰してやろうかと脅しをかけようとも思ったがそうすれば冒険者ギルドの奴らも敵に回す事になる…それだけは御免だ。
そのおかげでクエストの細工も出来なかったがまぁアイツが出来る事と言えば採取と運搬くらいだろうから誰も注目はしないだろう。
…とこんな事してる場合じゃないな
これからドラゴンの討伐に向かうため王国騎士団の精鋭部隊の出発式が始まる。
僕もその部隊に抜擢された。
ま、学校の試験も常にトップで入団テストもオールA評価を得た僕からすれば当たり前の事なんだが
そして今は隣にエリスがいる。最高の気分だ。
「そろそろ式が始まるな…それじゃあ行こうかエリス」
「…うん」
僕たちは出発式の準備の為、王国に向かって歩き出した。
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