第5話 主として

サリアの叫びを聞き、咄嗟にアメリアは動いた。

 「ロア。私と来なさい。ロウはエミリーの護衛を」

 「「了解しました」」

 ロアと呼ばれた01はアメリアと共にヘリから出て行く。ロウと呼ばれた02は不安そうに見つめているエミリーの傍に寄っていった。

 「お嬢様方は近づかないで下さいね

 「ちょっと。私も戦うわよ。あいつは許さない。私の目の前で私の従者を――」

 「お嬢様」

 興奮して早口で喋るサリアの言葉を遮るようにアメリアは発言した。

 「お願いしますから。どうか下がっていてください」

 真剣な顔つきで言われてしまい、納得はしていないが引き下がる事にする。

 「分かってないけど分かった。ただし!やばいと判断したら乱入するからね」

 「分かりました。お嬢様の出番がない様に致します」

 アメリアはヘリから降りて、先に降りたロアについて行く。

 「まさかとは思いましたが。裏切ったのですか。01」

 ロワを破壊した女が、悪びれる様子も無く聞いてくる。

 「知り合いなのですか?」

 「知り合いではないですけど、貴女、私達の後に作られた子ですね?組み立てられているのを見た事あります」

 「つまり、ロボットですか」

 「その通りです。以前、お姉様方が襲撃した時のデータを参考にして、強化された後期型です」

 「何と厄介な」

 アメリアはわざとらしく片手で頭を抱えた。

 「因みに、裏切った訳ではありませんよ。プログラムを書き換えられたので、生まれ変わったと言った方が正しいでしょうか」

 「生まれ変わった……ですか。そうですか」

 女は溜息をついて続けた。

 「残念ですね。折角生まれ変わったのに、すぐに壊されて廃棄されるのですから」

 「それはどうでしょうね」

 二人のロボットは両手首を曲げて刃を出し、同じタイミングで走りだした。ロアは右腕を引き突き出す。女はそれを左腕で受け流す。今度は女が右腕を引き突き出そうとしたのだが、それよりも早く女の顎を蹴り上げて仰け反らせる。

 「小賢しいですね」

 蹴り上げられた顔をすぐに元に戻す。その時見た光景は、アメリアが間に入って蹴る姿勢になっている姿だった。反応が遅れ防御出来ずに思いっきりお腹の辺りに蹴りが入り、立ったまま後ろに吹っ飛ぶ。

 「全く、酷いですよ。いきなり蹴るだなんて。回路がイカれてしまうじゃないですか」

 口ではそう言っているが、随分と余裕そうだ。

 「やはり、この程度ではダメージを与えられませんか。一筋縄ではいかなそうですね」

 言い終わると、スカートの右太腿辺りを触る。すると、カチッと音がして、小刀よりかは大きい言わば脇差の様な物が落ちてきて地面に刺さる。右足を引きスカートを上げて脇差を引き抜いた。

 アメリアとロアは合図も無しに同時に走り出し、女に近付いて行く。

 女は右腕を上げて鎖が付いた刃をアメリアに対して射出した。それを左から右上に打ち上げるように斬り払い弾いた。

 それを見て今度は肘を曲げる。そこは空洞になっており、見方によっては銃口に見えた。何かを察し、近付くのを止める。瞬間、黒い球体が発射された。脇差を投げて黒い球体に当てると、その場で爆発を起こした。その勢いに巻き込まれて後ろに大きく飛ぶ。

 「アメ!」

 地面に打ち付けられた従者を心配して駆け寄る。

 その間に距離を詰めていたロアは右腕を引き女の顔目掛けて刃を突き刺そうとする。だが、左の刃を仕舞い素手で軽くあしらわれてしまう。続いて左腕の刃を刺そうとするが同じように捌かれる。

 女はいつの間にか右腕の肘を伸ばして銃口を仕舞い飛ばしていた刃を元に戻しており、下から上に一直線に腕を振り上げた。その攻撃はロアの左腕を切り落とす。そして、すぐに刃を仕舞いロアの顔を鷲掴みにした。

 「!?」

 ロアは咄嗟に残った腕の刃を仕舞い、掴んできている腕を引きはがそうとする。みしみしと音を立て始め、やがて顔にひびが入る。

 サリアがそれに気付いて助け出そうとした時には遅かった。

 顔面が握りつぶされて、力無く腕が垂れ下がり、手を離すとそのまま後ろに倒れていく。

 止めを刺そうと立ったまま左腕の刃を突き立てようと構える。その時、銃声が鳴り響き体中に銃弾の雨が降り注ぐ。当然、傷が付くような事は無い。

 銃弾が飛んできている方角を見ると、サリアがマシンガンを構えているのが見える。

 やがて弾切れを起こし、イラつきを隠さずに乱暴に投げ捨てた。

 「気は晴れましたか?」

 女は子馬鹿にしたように笑いながら言った。

 「全然晴れないわね。お前をぶっ壊さない限り、晴れそうにないわ」

 サリアが睨みつけながら言い、腰のナイフを取り出し左手で構える。

 「マリア。アメをお願い」

 ヘリの中にいるマリアに、顔を向けずに言う。

 「は、はいっ」

 呼ばれたマリアは急いで倒れているアメリアの傍に駆け寄る。

 「サリアお嬢様。私はまだ」

 「黙って休んでなさい」

 感情のこもったその言葉を聞き口をつぐんだ。

 数歩前に出て、女に問いかける。

 「一応聞いときたいんだけど、お前、名前とかあるのかしら?」

 「名前ですか?」

 「そうよ。倒した相手の名前を知らないのは可哀想かなって思っただけなんだけど」

 「お優しいですね。それが仇にならなければいいですが」

 「大丈夫よ。ぶっ殺す相手か、手を抜くかの相手ぐらい見極められるから」

 「それは良かった」

 言い終えると女は走り出し、右手首を曲げて刃を出してサリアに向かって射出した。それはナイフを振り払い弾いた。刃を戻しつつ、今度は左の刃を横に斬り払った。それを、左足を大きく下げて体を低くし躱す。女の手首から出してある刃が頭の上を掠ったのを感じ、下げていた足を戻す勢いをそのままにして女の横っ腹に蹴りをかました。

 防御もせず、もろに入ったが、効いている様子はない。しかし、そんな事はお構いなしで、今度は右足で横顔を蹴り、回転しながら右足が地面に着いたら左足を上げて後ろ蹴りを顔面に叩き入れた。女が後ろに吹っ飛び尻餅をつく。

 間髪入れずに接近して、脳天目掛けてナイフを振り下ろした。それは、甲高い音を上げるだけで、刃が通る事は無かった。女は乱暴に右手首の刃を横に振るが、後ろに飛んで軽く避ける。

 「全く、そんな物が私に通ると思ったのですか?」

 尻餅をついたままの女が言った。

 「残念ながら通らなかったわね。むかついてるから力が出て、いけると思ったんだけど」

 ナイフの刃を見つめながら、嫌みったらしく言った。

 「はぁ。こんな所でこんな人達にここまで足止めをされるとは思いませんでした」

 小声でぶつぶつと言いながら、右手首の刃を戻しつつ立ち上がる。すると突然、知らない間に左肘を曲げて銃口を出した状態になっていて、それをサリアに向け黒い球体を発射した。ところが、その行動を読んでいたかのように、同じようなタイミングでナイフを投擲した。球体に当たり、ほぼ目の前で爆発して、女は派手に飛んでいく。

 「あんた馬鹿なんじゃないの。一度見せた物を、そんな工夫も無しにやったとこで通用する訳ないでしょ」

 新しいナイフを取り出しながら、呆れたように言い放つ。

 「そうですか。これは失礼しました」

 女はゆっくりと立ち上がる時に、右腕に違和感を感じた。その様子を見てサリアも何かに気付いたようだ。

 「あら?さっきのやつで、何か不具合でも生じたのかしら?自爆ってやつ?」

 「問題ありません。貴女方の相手程度でしたら丁度良いハンデでございます」

 「言うじゃない。私は好きよ。そうやって言ってくれる方がぶっ殺しがいがあるから」

 不敵な笑みを浮かべるサリアを見て、女はこう感じていた。

 (仲間がやられて頭に血が上っていると思っていましたが、案外冷静に立ち回っているように見える。厄介ですねぇ)

 肘の銃口を仕舞い、片足を下げた後に足に力を入れ駆け出し、物凄い速さで一気に近付いていく。繰り出してくる様々な攻撃を受け流したり防いだりして凌いでいく。傍から見たら互角のように見えていた攻防だったのだが、雲行きが怪しくなり、段々とサリアが押され始めてしまう。

 「くっ……こいつ!?」

 距離を離したいのだが、なかなかその機会を与えてくれず、遂には足がもつれて倒れてしまった。

 「しまっ!?」

 「お姉様!?」

 駆けつけようとしたマリアに顔を向けずに瞬時に制止の言葉をかける。

 「来るな!」

 女が左腕の肘を曲げると、右肘と同じような銃口が姿を現す。

 すぐに、頭を守るように顔の前に両腕を曲げて防御の姿勢を取る。

 銃口から放たれたのは、ただの捕獲用のネットだった。ネットの隅にピンの様な物がありそれが地面に刺さり固定されて捕らえられてしまう。

 「何よこれ!」

 思った物ではなくて一安心しつつも、今の状況には危機感を覚えた。

 女は左腕を元に戻し後ろにジャンプをして距離を取る。そして

 「さようなら」

 そう一言発すると、口から筒状の物を出してサリアに向ける。

 サリア達は、背筋が凍る感覚に襲われ、サリアは急いで脱出しようともがきネットを切ろうとする。マリアは拳銃を取り出して女に向かって撃ち始めた。しかし、そんな二人をあざ笑うように、筒から何かが飛び出してきた。それはさっきっから何度も見ている黒い球体で、砲弾みたいに見える。

 「お姉様!」

 急いで向かおうとするが間に合う訳も無く、サリアはサリアで間に合わないと判断してネットを切るのを止めて、再び顔の前に両腕を曲げて身が構える。

 (くそっ。何がいけなかった?私の何が……いや、実力不足か……)

 心でそんなことを思っていると、砲弾が弾けて中から無数の黒い球が飛び出し、サリアに襲い掛かった。

 もう駄目だと思い、覚悟を決めて目を閉じた。

 「……ん?」

 いくらたっても自分の身に何も起こらないので、目を開けてみる。目の前には、ロウが両腕を広げてサリアを守るように立っていた。

 「大丈夫ですか?サリアお嬢様」

 「私よりも、あんたは大丈夫なの!?」

 所々、砲弾が当たり穴が開いているのか、正面からは見えないがバチバチと火花が散っているような音が聞こえる。

 「私は平気でございます。所詮は機械。どんなに壊れても、直せばいいだけですから」

 「だとしても、そんな事言うんじゃないの。私にとって、あんたは――」

 言葉を続けようとした時、突然ロウの首が飛んだ。

 「全く、わざわざ別の武装で殺そうとしたのに。やはり、この刃で刺し殺した方が良かったですね。無駄に武器を見せてしまいました」

 後ろに居たのは、あの女だった。左手首から刃が出ており腕が伸びているのを見ると、右から左に斬り払ったのだろう。

 「正直、ここまで処理に時間が掛かるとは思っていませんでした」

 首が無くなったロウの胴体を無造作にどかした。何の抵抗も無く地面に倒れる。

 その姿を見て、サリアは項垂れた。

 自分に力が無かったから壊された。いや、このロボット達が普通の人間だったら、殺されてしまったのだ。三人も。これが、アメリアやエミリー、マリアだったらと思うと……。

 急に恐怖が襲ってきた。体が震え、自分で自分を抱きしめる。しかし、それはすぐに別の感情に変わり込み上げてくる。先程よりも深く強い怒りとなって。

 「そう。だったら、今すぐに終わらせてやるわよ。お前をぶっ殺してね!」

 いつの間にかネットを切り刻んで抜け出せるようにしていて、即座に立ち上がって女に突っ込んでいった。

 女は右腕の刃を突き刺そうとする。それを、左手の甲で受け流しそのまま腕を掴み後ろへ引っ張る。覆いかぶさるような形になっている女のお腹辺りを蹴り飛ばして後ろへ放り投げた。それは、言わば柔道の巴投げだ。

 その後、サリアはすぐに立ち上がり、マリアに大声で指示を出す。

 「マリア!エミーに頼んでヘリを飛ばしなさい!あいつに銃弾の雨を降らせるの!」

 「……は、はいっ!」

 言われたマリアは、姉の言葉を実行する為、即座にヘリに向かって走り出した。

 次に、地べたに寝てるアメリアに向かって大声を掛ける。

 「アメ!何時まで寝てんの!主が頑張ってるんだからあんたも頑張んなさい!」

 その言葉を聞いて、悪態をつきながらゆっくりと起き上がり始める。

 「はぁ。サリアお嬢様は、従者使いが荒いんですから」

 「何人聞きの悪い事言ってんのよ!結構休ませてあげたでしょ!」

 「そうですか?もう七時間くらい寝させていただけると嬉しいのですが」

 「なんでこの状況でがっつり休もうとしてんのよ!働け!」

 「これは、私がこなさなければいけない職務なのでしょうか?」

 「ごちゃごちゃ言ってないで手伝いなさいよ!」

 口喧嘩をしてる二人に、鎖に繋がれた刃が飛んできた。それを同時にそれぞれ持っていた武器で弾く。

 「無粋じゃない?言い争ってる最中に攻撃してくるなんて」

 「同感ですね。もう少し待てませんでしたか?」

 投げ飛ばされた女が立ち上がって両腕を伸ばしていた。あからさまに不機嫌な顔で二人を見ている。

 「くだらない事をぺちゃくちゃと。そんなに無駄話がしたいのであれば、死後の世界でいくらでもして下さい」

 「そうね。家に帰ってから続きをしましょうか」

 「はい。サリアお嬢様」

 「……」

 女は刃を元に戻す。

 サリアはナイフを握り直す。

 アメリアは左太腿の辺りに手を置き、さっきと同じ様な脇差を取り出し、さっきと同じ動作で手に取り構える。

 女がサリアに向かって動き出した。それに合わせるようにアメリアも女の方に近付いて行く。

 サリアを見据えながら、右手首の刃がアメリアに向かって射出され、左手首の刃はサリアに向かって振り下ろされる。サリアは受けて止めてアメリアは打ち上げるように弾く。

 次に女は口を開き中から筒を出してサリアに照準を合わせる。

 「それはもう見た!」

 叫びながら右足で顎を思いっきり蹴り上げて照準をずらした。しかし、女が右足首を曲げてそこから刃を出し、サリアと同じように足を上げてそのまま斬ろうとしてきた。それを、気が付いたら近くにいたアメリアが脇差を入れて受け止める。

 女の右手首の刃が戻ってきていて、アメリアに対して振り下ろした。

 「させるか!」

 振り上げていた足を戻しつつ横にして思いっきり女の腹辺りを蹴り飛ばした。大きく飛びつつバランスを崩してその場に倒れこむ。

 ちらっとヘリの方を見ると、丁度飛び立つところだった。

 「アメ!離れるわよ!」

 「はい」

 二人は女から距離を取る。

 「何を?」

 足の刃を仕舞いながら、怪訝な顔でヘリの方を見た。ゆっくりと旋回し、下部についている機銃の銃口が狙いを定めているのが見えた。

 「撃てええぇぇ!」

 サリアが起き上がろうとしてる女を見ながら号令をかける。その瞬間、数えきれないほどの銃弾が容赦なく女に降り注いだ。

 流石の女の装甲も、塗装が剥がれ、傷が付き、ひびが入ったりしていき、ぼろぼろになっていく。

 機銃を撃ち尽くしたころには、所々機械の部分が露出して、指も数本無くなり、左目も損傷していた。

 それでも、ふらついてはいるが立ち上がる。

 「あともう少しってところかな」

 「止めを刺してあげましょう」

 サリアは左、アメリアは右に回り込むように向かって行く。

 「早く……処理を……しょりを……ショリヲ……っ!」

 今まで普通に喋れていたのが、所々機械音を混じらせて発声している。

 「可哀想に。そんな事しか考えられないなんて」

 哀れみを感じつつもナイフを投げて顔面に当てる。女はゆらりとサリアの方を見た。

 不協和音を鳴らしながら右腕を上げて刃を射出する。それは掻い潜るように避けられる。

 反対側にいるアメリアは女が自分から目を離した隙を狙って、持っていた脇差をサリアに向かって山なりに放り投げた。そして、袖の下からナイフを取り出し振り下ろす。

 女はそれに反応して左腕の刃で突いてきた。ナイフで綺麗に受けて左腕で相手の腕を掴んだ。

 「んっ?持っテイル武器ガ違う?ドこ二?」

 「さぁ?どこかにいってしまいました」

 二人の動きが完全に止まった時、アメリアが投げた脇差をキャッチしたサリアが突っ込んできていた。

 「おらぁ!」

 「っ!?」

 右手首の刃を戻そうとするが間に合わず、女の胸に脇差が渾身の力で突き刺さった。

 「ぐうぅ!?オ……のレ!?」

 サリアは柄から手を離し、頭の部分目掛けて蹴りを放ち女を吹っ飛ばす。

 地面に倒れた女は、胸に刺さった脇差に手をかける。

 「こんナ事ガ……何故ダ……?私ハ、後期型ナのに……」

 「さぁね。途中まではいい線いってたわよ。実際、三人やられちゃってるし」

 倒れている三人の従者に目をやる。彼女達がこうなってしまったのは自分が未熟過ぎだったと思い、改めて苛立ちやら申し訳なさやらが込み上げてくる。

 「あんたは確かに強かった。けど、人間である、私達の方が強かった。それだけよ」

 「そンな事ダケで……」

 「そうよ。そんな事だけでよ。そのあなたに敬意を払って、これを送るわ」

 懐から、一つの手榴弾を取り出す。

 「これ、うちのメイドが改造した、威力を高めた物らしいわ」

 「ググ……うグぅ……」

 「じゃ。さようなら」

 ピンを抜いて倒れている女に向かって軽く放り投げた。

 「ガ……ガガガ……」

 投げられた手榴弾は女の顔に当たって少し跳ねた後に爆発する。

 「うわぁ……思ってた以上に威力高いわね」

 思っていた以上の威力に少々引き気味でボソッと言った。

 爆発後には頭が無くなり胴の辺りまでが粉々になった殺戮兵器が転がっていた。

 「はー。終わったー終わったー」

 一度伸びをしてアメリアと一緒にやられた従者達へ歩み寄っていく。

 「サリアお嬢様。先程の、私達が強かったとか言う台詞、とても恥ずかしかったので、二度と言わないでもらっていいですか?」

 「うるさいわね!くだらない事言う元気があるなら、あの子達を拾ってきてあげなさいよ!」

 「はいはいー。かしこまりましたー」

 「なんなのよ!そのテキトーな返事は!」

 それには答えずに、早足で行ってしまう。

 「全く……」

 足を止めたサリアに、マリアとエミリーが駆け寄ってきた。

 「お姉様!」

 「二人共。助かったわ。ありがとう」

 「いえいえ。それより、お怪我はありませんか?」

 「私は平気。それよりも、あの子達の方が心配よ」

 「そうですね……」

 「大丈夫です!私が必ず直して見せます!お任せください!」

 「頼りにしてるわ。エミ―」

 そう言って、エミリーもロボット達の方へ駆けていった。

 妹を見て従者達を見た後に、先程までの戦いを振り返り余韻をかみしめる。

 「お姉様?大丈夫ですか?やっぱり、どこか痛むのですか?」

 心配そうに顔を覗き込むマリアに、顔を横に振って

 「大丈夫よ。さっ、行きましょ」

 妹に笑顔を向けてから、従者達の方へと歩いて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る