6.先輩 おこです

 生徒会室で仕事をしていると、先輩が来た。


「……なんの用事ですか?」


 時間を忘れて集中していたせいか体には疲労感がある。

 薄暗い部屋に橙の西日が差し込んでいた。


 作業用に適当につけていたTVのシーンが変わるごとに部屋の彩りを僅かに変える。


「お疲れ様」


 先輩はくすりと笑って僕の隣に座った。


「何してたの?」


「学校の備品チェックですよ」


「……それ、先生の仕事じゃないの?」


「生徒会顧問の先生はやる気ないんですよ」


 僕はため息を吐いた。あの怠慢女教師め。


 そんな風にのんびり話していると、ドアがノックされた。


「はい。どうぞ」


 立ち上がるのも面倒だった僕は適当に返事をして招き入れる。


 ドアの向こうにいたのは生徒会のOGOBさんだった。


「開けて大丈夫だったの?」


「元生徒会だし問題ないだろ」


 OGさんは少しおっかなびっくりで、OBさんはのんびりした雰囲気だ。


 この2人には何度もお世話になった。

 ちなみに2人はカップルだ。


「お久しぶりです」


 流石に来訪するとは思わなかった2人に、僕は立ち上がって挨拶をした。


 そこでTV番組が変わり、新型車のエキシビジョンが流れ始めた。


「今更だけど車ってすごい乗り物だよね」


 先輩が唐突にそう呟いた。


「ほんとに今更ですね。着眼点も先輩らしいです」


「ちょっと、それって馬鹿にしてる?」


「褒め言葉です」


「ほんとかなあ?」


 先輩と僕のいつも通りのやりとりを見て、OGさんとOBさんは吹き出した。


「え、え、なんですか⁉︎」


 先輩は慌てて2人を見る。


「ふたりとも、付き合ってるの?」


 ……この人達は同時に何を言ってるんだ。


「そんなわけないでしょう」


 疲れていたからか少し棘のある言い方になってしまったけれど、そんな誤解をされてはきっと先輩が困るだろうから否定した。


「あはは。俺らはお邪魔みたいだ」


 OBさんが丸わかりな愛想笑いをしてOGさんの手を引っ張って帰ってしまった。


 何しに来たんだろう。まあいっか。用事があるならまた来るだろうし。


「むぅ……」


 先輩が何やら頬を膨らませている。おこだ。


「どうしたんですか?」


「なんでもないですよーだ!」


 先輩は可愛らしくあっかんべーした。


 不機嫌になる意味がわからない……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

今回の題目は「エキシビジョン、乗り物、OGOB」でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る