宇宙戦争

@watazakana

里帰り

ある時、母なる星から人類は離れた。俗に言う「地球脱出」というヤツだ。なぜ離れたのか?それを語ろうものならそれだけで12話構成のドラマになってしまうため詳細は割愛するが、少なくとも軽くはない理由であった。歴史の教科書には、説得力のある文章で記述されている。最初は、希望に満ちた旅だったという。25年かけて太陽系を離れた船団は、星を転々としてその勢力圏を拡げていった。地球外生命体とも接触した。侵略者として人間を攻撃した星もあったし、友好の態度で交流を深めた星もあった。その度に人間は勢力を拡げた。宇宙は人類船団という名のコキンスタドールによって、開拓され、征服された。


この開発と開拓のさなかで、歴史家は危惧した。統治者なき船団では、戦争がいずれ起きてしまうのではないか、と。しかし、その危惧は具現化しなかった。既に、船団は全容を把握できないほどに大きく膨れ上がり、また、その船団は散り散りになりすぎたあまり、人類が認知できる「人類」は平均2、3個ほどの惑星からなる共同開発組織の一員である。いさかいは起きないでもないが、戦争をするほど相容れない相手というものがいないのだ。人類が戦争をするには、宙は余りにも広かった。


しかし、それも300年ほど前の話。現在はもっぱら大戦争中である。とはいえ人類の一部も一部、小指の爪の欠片ほどの人口が、ではあるが。いきさつは、とある星を次の植民地としようとしたときのことから始まる。その星は、重力砲で船団を攻撃してきたのだ。ここまではよくある話なのだが、その星の住民はやたらに技術水準が高い。船団と同等かそれ以上の技術水準を有している。おかしい、人類の旅立ちからはや数億と幾万年。開拓した星々に、人類に比肩する技術を持った生き物などいなかった。存在自体が奇跡のような知的生命体の中でもことさら奇跡の知能を持つ人類に、肩を並べるどころか先に立つなど。


ならばと人類船団は武器を手に取る。なんとかしてその知性体の文明を滅ぼし、あわよくば生き残りを解析して奴隷か何かにしよう。きっと高く売れるし他の星もうらやむはずだ。そう信じて星を爆撃しまくった。そうすると、さらに星の住民は団結し、人類船団と似たような船で宇宙へと飛び出した。今度は船を集中砲火した。すると今度は衛星からビームが出て船団は壊滅した。これが第一次戦役である。第二次戦役は、人類船団から傲りが消え、星の住民はより気合いの入った装備で迎え撃った。


それからは、休戦期と交戦期が交互に来て、300年それが続いて……今に至る、というわけだ。


しかし、気になることはひとつある。


「一体どうして、人類船団のとよく似た装備と姿ばっかりなんだろう」




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