『小慈羅さん 2』 その伍

 

 博士は、舞鶴保安隊の内部に入った。


 彼女は、必ずしも、よく知られている存在ではないが、さすがはしっかり周知がはかられているらしい。


 『海洋知的生物学の専門家である。』と。


 おかげさまで、失礼な言動をとる輩は、いない。


 小さな部屋に案内されるまでは、多少の面識があった少尉さんが同行してくれた。

 

 小慈羅さんは、やがて、そのこじんまりした飾り気のない会見室に現れたのである。


 壁に、大きめの時計があり、小さなスピーカーが天井にあるだけだ。


 もちろん、かぶらだ、が同道してきた。


 『刑務所みたいだな。』


 博士は思ったが、手錠のような拘束具は無いところが、小慈羅さんの立場を現している。


 『中根博士でしね。』


 小慈羅さんが、うれしそうに、すいすいと近寄り、ヒレに隠れていた手のひらで、握手を求めてきた。


 『どうも。中根です。あなたが、小慈羅さんですか。』


 『はい。そうでし。御目にかかれて、光栄に存じます。あなたは、わが一族でも、お名前がよく知られる人類でし。』


 『祖父の方が有名ですか?』


 『ハシラーさんから伝わった伝説は、わらくしが広めたものです。しかし、あなたは、実在しる方です。』


 かぶらだが、話しに入り込んできた。


 『はははは。まあ、おふたりとも、掛けて話しましょう。』


 小慈羅さんは、椅子にも、器用に座った。


 座高は、それなりに高い。


 中世の修道士のような、フードつきのつなぎのガウンを纏っている。


 

        🐳💺


 

 

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