第12話 どこかに家出(?)しちゃった中学校は、天空の城になったのかもしれないそうです。おばあちゃん?それって、ラピュタのことですか?

 ただ、痛いことばかりでもなかった。

 興味深いことが、わかってきた。

 偶然出会って、彼女と話をしていたおばあちゃんは、オカダさんという名前の方だったのだ。

 「オカダさん、か」

 好きな先生と同じ名前っていうのは、気持ちの良いことだよ。

 おばあちゃんには、娘がいたそうだ。

 中学校の、養護教諭をしているという。司書教諭という免許も、持っていたようだ。

 きっと、勉強家。

 …あれ?

 「お嬢ちゃんや?」

 「はい」

 「どうして、お嬢ちゃんたちの通う中学校は、いなくなっちゃったのかねえ?」

 「たぶん…」

 「たぶん?」

 「あの中学校は、反抗期だったからでしょう」

 適当に、答えすぎ。

 「そうかい、そうかい」

 適当に、納得しすぎ。

 「困っちゃいますよ、私たち」

 「どうしたの?」

 「男子が、弱くなりすぎちゃったんですよ」

 「そうかい…」

 「そこにきて、先生たちのレベルは、落ちました」

 「そうらしいねえ。生徒よりも、頭が悪い人がいるって、いうからねえ」

 「ええ。一部の世代の先生たちは、運動もできません。身体を動かすことなく、冷房と暖房の中で、実験動物のように育てられてきた結果ですよ」

 「それじゃあ、学校は、疲れちゃうねえ」

 「私たちの中学校は、大きながきんちょを抱え込むのが、面倒になっちゃったんでしょうね」

 「大きな、がきんちょ?」

 「…、ほら、先生ですよ」

 「ああ。あの、チホーコームインかい」

 「あはは…」

 言われているぞ、先生たち?

 「お嬢ちゃんたちの通っていた中学校は、ね?」

 「はい?」

 「トマス・モア、じゃなかった、ユートピアにいったのかもしれないねえ」

 「ゆうとぴあ?」

 「天空の城、じゃな」

 「天空の城?ラピュタですか?」

 ちょっとふざけて、言ってみたつもりだった。

 すると…。

 おばあちゃんの顔が、真剣になってきたぞ?





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