第5話奴隷商人が俺の忠実な犬にジョブチェンしましたw

宿屋で部屋を取ったものの俺はあまり一定の場所にじっとしていることができない。


そわそわしてイライラしてきてしまう。


ましてやそれを抑えておけるような娯楽もない。


読書もできないゲームもないできるのは筋トレくらいだがそんな長時間筋トレできるはずもない。体が死ぬわ!


かといって女遊びする気もない。


俺はいわゆるそっち方面は不能でムラっとも来ない。


ちなみに年齢イコール童貞だ。


天職が殺人鬼だしもしかして俺はそっち方面なのかと少し心配になってきている。


まあそれはそうとこれ以上部屋でじっとしていると気が変になりそうだったため街中に繰り出した。


なぜだかこっちに来てから腹が減らないのであの見るからに食欲を減退させる青や緑の謎肉は食わないで済んでいるが宿でもあれが出るのだろうか。ゾッとする。


そうやって肉を視界に入れないように歩いているとふと人が檻に入れられておりそこに値札らしきものが書かれているのを見つける。


「奴隷か何かか?」


そうつぶやくとガリガリの男がズズイッと詰め寄ってきた。


「お客様ご興味がおありでございますか!?」


どうやら本当に奴隷のようだが奴隷商人なんてしている男がどうしてこんなにやつれているのだろうか。


おれの奴隷商人のイメージと違いすぎて正直困惑してしまう。


そんなおれをみてペラペラと説明しだした。


「お客様はどうやら他国からいらしたのですね。この国では奴隷商は国で経営されており商館で取り扱っている奴隷はすべて国のものとなっております。そういうわけで奴隷を餓死させることも無断に処分することも国の商品として許されることなく私目が給与から自腹で管理費を出しておりましてこのままでは奴隷共々餓死してしまいます。なにとぞご慈悲を貴族様!」


「まあ待ってくれ。とりあえず聞いておきたい。国は奴隷をどうやって仕入れているんだ。あと買ったあとの扱いもおしえてくれ。」



奴隷商人は絶望の中から光を見出したかのように迫ってきた。


「もちろん他の国と同じように犯罪者や借金が払えなかったものでございます!後ろ暗いことなど何一つございません!」


いや、犯罪者って時点で商品として不良在庫だろ。


「それから購入していただければあとは自由になさってくださって構いません。わたしも奴隷を購入できるほどの資金があればすぐにでも購入して魔物の餌にしているところです。」


やべぇよこのおっさんマジの淀んだ目で物騒なことを心の底から本心で言ってやがる。


この国やべぇ。


さすが悪魔が面白半分に送り込むわけだ。


「それでどんなやつがいるんだ。魔物の囮に使うからどんな奴でもいい。」


我ながら俺もすげぇこと言ってんなマジクズだわ。


奴隷商人は従順に答えた。それはもう変な口調になるくらいに。


「金貨10枚の犯罪奴隷が17人!金貨20枚の借金奴隷が6人であります!どんな粗悪品でも一律この値段であります!」


魔物の囮にすると聞いてどんな奴隷でもいいと判断したようだ。


まあ間違っちゃいない。


だけど正直すぎんだろ。


「よし。全員買う。ちなみに奴隷に関して問題は値段だけか?」


「は!ぼろぼろで値段に釣り合っていないだけで住民に奴隷に関する悪感情や差別といったものはありません!」


「よしつれてこい!」


「は!」


なんだか変なテンションで変な悪ノリをしてしまった。


そして悪ノリした奴隷商人は敬礼してぞろぞろと連れてきた。


みんなボロボロでガリガリだな。


老若男女種族もバラバラ。


人間獣人エルフドワーフ。


目や四肢がないものもいる。


これで一律金貨15枚、20枚とかたしかに買う奴いなそう。


見せしめか何かか奴隷っつうのは。


まあいいや色々試せそうだし。


俺は金を支払ってさっさと奴隷を連れ立って去ろうとしたら引き止められた。


「お、お待ちください隷属契約がまだにございます。さあお前たち!早く!」


奴隷商人がそう言って急かすと奴隷たちは胸に手を当てて自分の名前らしいもののあとにか擦れた声で次々と儀式めいたことを言った。


「我、アリア・シュラザーン契約の神に真名を示し、魂を捧げ主の僕となることを誓います。」


そういった感じで次々と宣誓していった。


すると紫色の光が奴隷たちから発せられた。


ちなみにちなみにアリアは体の右半分がただれており顔まで覆われているケモミミの女性だ。


「新入りが入ったら連絡してくれ。俺は孤児院を経営することになったからそこ当てで頼む。今度こそじゃあな。」


そう言って俺はとりあえずあえて見ないようにしていたとんでもない色の謎の肉串屋に行った。


「親父さん在庫のありったけ焼いてくれ。」


それを聞いて奴隷たちが青ざめてこちらを見ている。


無理もない奴隷商館の前であれだけ大きな声で魔物の囮にすると言ったのだ。


最後の晩餐を想像したのだろう。


少なくともあの奴隷商館にいればひもじくても命の危険はないし食いっぱぐれる心配もなかったのだから。


まあそれがわかっていても俺はそれを慮ってやるほどいい人間ではない。


むしろいい人間とは対極の人間だ。


人間失格といっていいだろう。


俺はどこまでも利己的で協調性がない。


一人では人間は生きてはいけない。


俺は一人じゃないと気が狂いそうになる。


だから何も思わない善行もただの独善で気分がよくなるようなら進んでやるが報われないならする気はない。


宿は取ったがとりあえず数日は野宿することになるだろう。


孤児院ができるのは最長で十日と聞いた。


おそらく魔法とかジョブとかスキルの関係からだろう。


もし手抜きで欠陥でもあったら別の大手に依頼して噂を金の力で吹聴する気満々である。


それはともかくアイテムボックスは隠すのをやめた。


もうすでに金とか低レベルなこととかがギルドに知られている。


むしろそれくらいのチートを明かさないと金を持っていることに疑問を持たれる。


それにもしかしたら利用価値を見いだしてくれるかもしれないという打算があったのだが屋台のおっちゃんは何も特別な反応を示さなかった。


つまりこの世界では本当に珍しくもなんともない力だったというわけだ。


そう言ったことにがっかりしながら口に入れたくない見た目の食料を買いだめて道具屋で野宿グッズも買い、俺は奴隷を引き連れて森にあるというダンジョンに向かった。


ダンジョンとか本当にゲームみたいだがもしかしてここは俺が見ている夢なのではないかと今更ながらに思いそれに今更かよと自分に呆れてしまった。

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