第3話どんなにボロクソ言われようと曲げられないものがある!(服装)

はてさて、せっかく金があるのにこっちの世界でも自由に動けないとはなんとも業が深い。


それにしてもみられている。


ものすごく注目を集めている。


先ほどまでは子供達をぞろぞろ連れて歩いた結果だったが今は別の問題、服装で目立っている。


普段は周囲に溶け込んで人ごみに紛れているのが俺の日常の常だったからこうして目立つのは落ち着かない。


とわいえ今の俺は金の鷲が刺繍された黒いジーンズに金色の紅葉柄のついた黒いジャケットに赤いシャツにブーツと日本でも十分目立つ服装な訳だがそこは混沌に満ちた東京の都会、他にも目立つような奴はいるにはいるし絡まれたくもないので注目もしない。


まあ日本の都会は生き急いでいるやつばかりでわきめもふらずごちゃごちゃと働き蟻のようにあまり立ち止まったりはしない。


俺を見ても注目することなく脇目も振らず目的のために移動する。


そんなわけで目立つことなく普段は周囲に溶け込んでいる俺は今居心地が悪い。


しかし服装を変えるという選択肢は俺にはなかった。


なぜなら服とは自分が着たいものをきるという俺なりのこだわりがある。


だから今更服屋をさがして目立たない服に着替えるという選択肢は俺にはない。


仲間内から今まで散々ボロカスに服のことについてはいわれてきたんだ。


だから本当に今更だろう。


それはともかく俺はこれからどう動こうか。


どうやら言葉は通じるし周りを見る限りなぜだか文字も分かる。


でっかく冒険者ギルドだとか商業ギルドだとか書いてある立派な建物もあるし王道にそのどちらかに行くのがいいんだろうが仕事をする気もないのに簡単に身分証が作れそうだからといっていくわけにもいかない。


ならば商業ギルドだろうがそれこそ探られるとまずい腹の中を嗅ぎつけられてゲームオーバーという線もありそうで怖い。


そこでふと景色の違和感に気付いた。


なぜか住民の誰もが武器らしきものを携帯している。


もしかするとこの国では武器を持っていてもなんら疑問に思われない文化なのかもしれない。


ならば俺にとって都合がいい。


レベルという前の世界ではなかった要素がかなり不安だが刃物でも鈍器でも持っていて危険視されないのならばどんなやばい状況でも逃げ切る自信はある。


早速俺は武器屋で短剣を二本買った後道具屋でバールを一本とコバールをありったけ買った。


注目されながらコバールの入った箱をエッホエッホ運んで隠れてアイテムボックスにしまってようやくおれは商業ギルドに入った。


ちなみにバールは肩に下げて短剣はベルトに引っ掛けている落ちそうで少し心配だ。


でもまあこういうお役所じみたところに出入りする機会はなかったので武器を持てて俺のチキンハートが少しおとなしくなった。


「こんにちわ〜。この国に来たばっかりなんだけどできるだけデッッッッカイ家が欲しいんだけど予算は上限なしでいいから紹介してくんない。」


受付の人の表情がこわばったが俺は気にしない。


店員と客の関係というのは微妙なものだ。


お客様は神様とかのたまって同じ人間であることを忘れて思いやりを欠く愚か者もいれば度を越しておまえは金もらって働きに来てるんじゃねえの?最低限は気持ちのいい接客をしろよと言いたくなるような感じの悪い店員もいる。


そんな中働く方も客の方もそんな奴らのことは諦めるしかない。


しかし今の俺は何の気を使う必要もない。


もちろん胸糞悪い客になろうとしてなる気はないが俺は頭が良くないしこの世界初心者だ。


なんか考え込んでいい客になろうとかうまく交渉して目立たずにいるだとかそういう方法は思いつかないだろう。


むしろ考えるだけ時間の無駄だ。


今の俺は金は無限でも時間は有限。


時は金なりというが金で時は買えないのだ。


「この国は初めてとおっしゃいますがなにか身分証のようなものや紹介状のようなものはお持ちではないですか?」


「うん、ないね。どうすればいい?」


俺は正直に答えて素直に聞いた。


「では失礼ですが審判の冠の使用を許可願えますか。」


俺はそれがなんなのかわからなかったが了承した。


すると目を見開いて本当にいいのかとなんども聞かれた後。


イバラでできたような冠を被った職員がやってきた。


「では質問します。あなたは貴族様ですか?」


冠を被った職員は次々と質問してくる。


俺は面白くなってまじめくさった口調で答えていく。


「いいえ、貴族様ではございません。」


「あなたは密偵や間者ですか?」


「いいえ、密偵や間者ではございません。」


「あなたはこの国に何をしにいらっしゃったのですか?」


「いいえ、とくに目的はありません。」


その答えに再び目を見開きお辞儀をしてさろうとした。


おそらくあの人には嘘とかがわかる能力があるのだろう。


そう察したおれは自分の身の潔白のためにこの場に留まってもらった。


「ついでにこの町の孤児達の保護者になりたいんだけど、どうすればいい?誓っていうと何も子供達に悪事を働くつもりも働かせるつもりもないし危害を加えるつもりもない。」


受付さんは冠の職員さんに目をむけると冠の職員さんは頷いた。


「ではまずこの住民登録表に必要事項を記入、つぎにこの孤児院を設立するに至って必要な魔導誓約書にサインをそして最後にこちらの中から物件を選んでご購入を検討ください。」


住民登録表が一番厄介そうだったから順番を逆転させ、まずは物件から選んだ。


「本当にここでよろしいのですか?」


そう聞かれるのも無理はないだろうそこはスラムの地区の中で物件としての利点は本当にただ広いという一点だけだったからだ。


そこは俺がこの世界に召喚された教会の土地だった。

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