【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その22
***
古書店に着いた。
「
「はい……俺なんかしちゃいましたかね……」
「……凄いですよ! 春翔さんは付喪神とは言え神様の主となったんですよ! ほんとに凄いです!」
「……まじ? え、あ、え、ええ?」
「まじです!」
神の主。
それは神の眷属になるということである。神に名前をつけることでその契約は成立する。名付けの親だから"主"と呼ばれている。神の主はその人間が死なない限り、強く名の知れた神ほどその力は強大となる。強運の持ち主になったり、色々だ。
「なんか……嬉しいんか嬉しくないんか分かんねえ……なんだろ、めっちゃめんどくさい事になった気がする。痛っ」
俺が微妙な顔をしていると頭に痛みが走った。スカーレットが俺の頭によじ登り、ボコスカと叩いていたのだ。
「何よ! 嬉しくないわけ?! あたしだってそんなの知らなかったんだから! あたしだってあんたなんかお断りよ! どうせならそこのイケメンが良かったわ」
またまたマシンガントーク。
怒っているみたいだった。
「いや、嬉しいけど……なんかなぁ、こう、なんか、うん……痛いっ」
俺はなんとも言えない気持ちだったが、ほんとに何とも言えなかったので話すのを辞めた。
スカーレットは俺の頭をかじっている。そんなスカーレットを幸さんは俺の頭から離して、ブラシを持ってきて髪の毛をといた。
「あんた……なかなかにいい腕してるわね……認めるわ……」
「うわ……その言葉昨日も聞いた気がする……」
聞き覚えのある言葉であった。そう言えばあいつは……
「幸〜! 僕のブラッシングはまだなのか? 次は僕の番だぞ!」
店の奥から赤い首輪をつけた黒猫が嬉しそうに走ってきた。そして、俺の顔を見るなりげっという様な顔をした。
「なんでお前が居るんだ……」
「いや、こっちのセリフだよ……お前なんで店にいるんだよ……」
バチバチと俺とねこの間に火花が走る。それを遮るようにして幸さんは話し出した。
「そう言えば……猫さんの名前とか考えてなかったですね〜あ、春翔さん、猫さんに名前付けてあげてくださいよ」
幸さんは何か含みのある笑顔で俺に名付けを頼んできた。
「ええ〜俺ですか?! どんだけ嫌いとはいえ名前は大切だからな……ちょっと考えます」
くろ……? いや、さすがに安直すぎるか……黒黒黒……夜……
「夜久……なんてのはどうですかね……」
「いいじゃないですか! ネーミングセンスいいですね!」
幸さんは嬉しそうに微笑んだ。やはり、少し含みのある笑顔で。
「おい、男……」
夜久がプルプルと震えていた。やっぱダメか〜。
「いい名前じゃないか! 僕は気に入ったぞ! 先日のことは解せないが、少し認めてやる!」
嬉しそうに声を高らかにして言った。
その時だった。
――ズキ
右手の甲に鈍い痛みが走った。見ると梵字のような赤く光った刻印がギュルギュルと浮かび上がってきている。
「何なんだ、これ! 痛いんだが!」
夜久の額にも俺と同じ赤色の梵字の刻印が浮かび上がっていた。
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