【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その21

――ぼりぼりぼり


 お菓子の袋を開けて何かがお菓子を貪り食っていた。真っ赤なドレスに身を包んだホワイトベージュの髪色の人形だった。こちらが目を点にして見ていると、気付いたのか、ぐんと振り返った。


「何見てんのよ」


 喋ったのだ。

 思わずリュックを落とす俺。

 驚きながらも咄嗟にそのリュックをキャッチする智也ともや

 夢でも見てんのかな! なんで人形がお菓子食ってんだよ!


「何落としてんのさ! 危ないところだったじゃない! ねえ! なんか言いなさいよ」


 続けて人形は話し出す。俺はそれに答えることにした。


「あー……まだ慣れぬこの感じ……ねえ、なんでお菓子食ってんだよ、その菓子どこに入ってんだよ。突然の不思議に俺達びっくりなんだけど!」


 俺は智也をつっこむ時より激しくつっこんだせいで、息切れしていた。


「なんでって……あたし、ただのお人形じゃないもの! 付喪神よ。おばあさんとおじいさんが大切にしてくれたから、目覚めたわけ。今まで動けなかったのに、急に動けるようになったかは、あたしも分からないけど、強力な何かの力のおかげでこうして動けてるわけ! ま、でも絶対におばあさんのおかげよ!」


 マシンガントークで大声で自慢げに話す人形。

 たまたま、人が居ない路地だったから良かったものの……これは他の人が見たらやばいぞ……というかこの人形うるせえな。


「まぁ、わかったよ……幸さんのところに連れて行こう。で、君の名前は?」


 あのうるさい智也が驚きを超えて、冷静になっているところが怖かった。


「名前……? 無いわよ、そんなの……お人形さんとしか言われなかったもの」


 お前、何言ってんのという顔をして答えられた。


「名前ないの不便じゃん! なんかつけてあげようよ。ん〜紅子とかどう?」

「いや、日本名だろそれ……お前、いつも通りネーミングセンスねえな……そうだなぁ……スカーレットとかどう?」

「え、それもそのまんまじゃん……」

「いや、イメージカラーが赤って感じがするわ、話し方とか……」

「スカーレット……いいわ! 気に入ったわ! あたしは今からスカーレットよ!」


 お菓子を片手に空いている手の方で自慢げに胸を叩いた。するとどうだろう。スカーレットが光りだしたのだ。

 光とともにスカーレットの首に首輪のような赤い刻印のようなものが浮かびでた。それと同時に俺の首にまで刻印のようなものが浮かび上がったのだ。

 光が消えると共に刻印も消えた。


「これ、やばいのでは?」

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