【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その20
***
「本当にありがとうございました! 疑ってすみません!」
一段落してゆうきくんの母親はいきなり俺達に謝ってきた。
「そんな……! いいですよ、こんなの信じてくれって言う方が可笑しいんですから、頭を上げてください! 結局、俺達はなんにもできなかったんですから……やったのは
「あなた達もゆうきを連れてきてくれたじゃない?」
俺が言いかけると、ゆうきくんのおばあさんが遮った。
「あなた達がゆうきを連れてきてくれなかったら、私達はゆうきに会えていないわ。だから本当にありがとう」
『そうですよ!
「それは言い過ぎですよ……」
俺はそれを聞いて涙ぐんでしまった。うるっときた。
「あー! はるちゃん泣いてんの? おもろ」
「うっせ! お前にだけは言われたくねえよ! さっき俺の服で鼻かんでたやつ誰だよ!」
「かんではないよ! 拭いただけだよ!」
俺達がぎゃあぎゃあと騒いでいる様子をみんなは笑って見ていた。
『この事は内密にお願いしますね……私からのお願いはこれだけです。よろしくお願いします』
「大丈夫です! 絶対に誰にも言いません。約束します。だってあなた方はゆうきと合わせてくれた大切な恩人ですもの。約束は絶対に守ります」
幸さん達がやり取りをしている時、おばあさんが俺達にお礼の品にと言ってお金とお菓子、それと綺麗な真っ赤なドレスに身を包んだホワイトベージュ色の髪の人形を渡してきた。
「こんなに……! 貰えません……それとこの人形は? 大切なものなのでは?」
結構な金額が入っていた。それとこの人形……高そうだ。
「その人形はおじいさんから貰ったものなの。日本の有名な人形作家が作った素晴らしい逸品なのよ。その子はね、様々な災い事から私を守ってくれたの……私はもうあとは長くないから、おそらく危険なことに身を投じてるあなた達に受け取って貰いたくて。あなた達のことを守ってくれる筈よ。受け取ってもらわないと私達の気が済まないわ。いいから、ね、受け取ってちょうだい」
俺はおばあさんの圧力に負けて、結局貰うことにした。
外に出ると、さっきまで昼だったのがもう夕方になっていた。橙色の空はさっきのゆうきくんの光の球の色を思わせた。
***
ゆうきくんの家を出て、俺達は八月一日古書店に向かっていた。
「いや〜なんかすごいもん貰っちゃったね……」
「ほんとそれな。なんで人形なんだ?」
こんなふうにたわいも無い会話をしている時、リュックから違和感がした。
「変な感じするよね……」
「おう……嫌な感じしかしない」
俺達は恐る恐るリュックを開けてみることにした。
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