【第二ノ怪】紫陽花の思い出 その6
***
「ああ……そうだ。夕方は
質問することや話したいことを話し合った後、帰ろうとした時にふと
「どういうことですか?」
「雨で暗くなっていて、見分けにくくなっています。ですからどうか気をつけて帰ってくださいね」
幸さんは心配そうに見送ってくれた。
***
ティータイム(実際は質問会)が終わり、外に出ると、もちろんまだ雨は降っていた。
まだ夕方だと言うのに、視界はかなり悪く、夜のようだ。
商店街にはアーケードがあるので、傘をさしている人は見当たらなかったが、商店街の外に出ると、街行く人々の顔はさした傘で見えず、異形たちが闊歩しているかのように感じた。
「ねえ……なんか今日一段と暗くない? まだ夕方なのに」
先に
「それな。やっぱ妖怪とか幽霊がいるって分かったから、本能的に怖がってんのかな……」
『ああ……そうだ。夕方は
ふと幸さんのあの言葉を思い出した。
(あの言葉なんだったんだろ。うわぁ……何もなければいいけどな……怖ぁ)
俺も少し身震いをした。雨が降っているせいか若干肌寒い。低気圧のせいか空気が重い気がする。
「おい、あれって……」
街行く人の中には親子連れもいた。仲良く手を繋いでせっせと帰っている。だが、その中に異様な者がいた。
1人で傘もささずに下を向いている男の子がいたのだ。3、4歳ぐらいで、この雨のせいで肌寒くなっているのにも関わらず、半袖短パンだった。
まぁこのぐらいの雨じゃ傘をささなくとも、急いで帰れば大丈夫だ。友達に先に帰られたか、親と逸れたのだろう。
「お母さんと逸れちゃったのかな?」
「それに、傘持ってないじゃん。急に雨降ってきたっぽいからな……まぁこのぐらいの雨だったら大丈夫だと思うけどさ……」
俺たちはヒソヒソと話し合った。結果、男の子に話しかけることにした。
「ねぇ大丈夫?」
俺たちが話しかけると男の子はゆっくりとこちらを向いた。可愛らしい5歳ぐらいの男の子だった。
男の子は口を開くとこう言った。
「お兄ちゃんたち……僕のこと見えるの……?」
「……っ!」
まずった。
やってしまった。
その言葉を聞いた時、俺たちは理解した。この子は人間じゃないと。よく見れば透けている気がする。
(本気でやばい)
その時、以心伝心でお互いの思っていることがわかったような気がした。
俺たちが逃げようと後ろを向くと、男の子は泣き出した。
「……っひっく……誰も見てくれない……僕、ずっと、ここにいるよって言ってるのに……みんな無視するんだ……ママに会いたいよう……うわぁぁぁぁん」
周りの人には見えていないのか、こんなに子供が大泣きしているのに皆、素通りしていく。
俺はこの男の子が居た堪れなくなった。だが、幸さんが言っていた通り幽霊にはいろんな者がいる。悪意を持った者や、そうでない者。だからそう簡単に話しかけてはいけないのだ。この男の子も悪霊かもしれない。
そんなことを考えていると、智也が話しかけていた。
「誰にも気づいてもらえないのは悲しいよねぇ……でも大丈夫! お兄ちゃんたちには君がいること気付いてるよ! だからさ、なんでこんなところで1人でいるか教えてよ」
「ほんと? 僕のお願い聞いてくれるの?」
「うんうん! なんでもと言うわけにはいかないけど、お兄ちゃんたちができることなら、お願い、叶えちゃおうかな〜!」
男の子は考え出した。その隙に智也に話しかけた。
「おいおい! 大丈夫なんか? 悪霊とかだったらどうするんだよ!」
「も〜はるちゃんは、心配しすぎ! 大丈夫だよ、あの子はそう言うのじゃないと思う。まあ勘だけどね!」
いつもの勘かよと笑って小突きながらも、俺はいい友達を持っているなと思った。
こりゃあみんなに好かれるわけだ。まぁ、こいつは恋というものについては全く理解してないけどな。
「ママに会いたい……おうちに帰りたい」
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