【第一ノ怪】ジグザグ足 その1
6月
じゃーんけーんポンっ
「だぁああああああぁああ」
今年入学したピカピカの1年生俺こと
「まじか! バイトだってあるのに! 課題だってあるのに!」
なんてこった。まさかの負けてしまった。
なんのジャンケンをしているかって? 調査員を決めるジャンケンをしていたのだ。
「よぉし! 渡瀬! 調査頼んだぞ! オカ研の名に恥じぬようにちゃんと調べてこいよ!」
部長の3年生
「新入り頑張れよ」
見た目は完全にヤンキーだがとても親切で優しい2年生の先輩
「細かい所までしっかりとね〜頑張るんだよ〜」
物腰がやわらかそうなミステリアスなオカ研副部長 3年生
その他部員も声をかけてきた。みな口々に気をつけろよと言ってくる。
(なんでそんなに心配してくるんだ?)
しょぼくれながらもごった返した変な物の片付けもしながら、何故かと不思議に思っているとかねさんが話しかけてきた。
「春翔くんは知らないかもしれないけど、実はね〜春翔くんが調査する道ね、変な噂があるんだよね〜知らなかったでしょ。まぁ変な話があるから調査するんだけどね〜」
かねさんは柔らかな口調でによによしながら言ってきた。
確かに俺は噂のたぐいは全く耳に入ってきたことがない。なぜだか分からないが人の噂など全く俺に回ってこないのだ。不思議だ。
かねさんによるとその道は住宅街にあるらしく、最近になって急に事故が増えたらしい。しかも足に共通の怪我があるらしい。オカ研はなんらかの超常現象が起きたと思っているらしい。とてつもなくあほらしい。
「って事で、よろしくね!」
「えっちょっと待ってくださいよ! 俺調査とか初めてなんですけど! かねさん!」
「うーんまぁどうにかなるさ! ガンバッテ!」
必死に抵抗したが、ポイと追い出されてしまった。というか智也どこだよ。
智也とは
まぁようするに陽キャだな!
それに比べ俺はと言うと地味オブ地味、モブの中のモブをモットーに生きている。キリッ。
***
噂の道に着いた。
「はぁ〜調査って何するんだ? ん?」
ーーざわざわざわ
――ひそひそひそ
「また事故ですって〜! ほんと急に事故が多くなったわね」
「やっぱり今回も太ももに怪我してるのかしら? そうだったらほんとうに何かいるのかも!」
「も〜そんなわけないでしょうが! でも毎回毎回足に共通の怪我があるなんてなんか変よねぇ〜」
「警察の人は凶悪犯に追いかけられて車に轢かれたって言ってるけど、ちょっと無理があると思わない〜?」
そんな主婦たちの井戸端会議を盗み聞きしながらこう思った。
(人の口には戸は立てられないって誰が言ったんだろう。その人天才だな。全くその通りだ)
ふと事故現場を見やった。立ち入り禁止テープが貼られている。
「ええ〜! 調べられないじゃん! どうすんだよ! いつまでにやったらいいんだよ!」
諦めて帰ろうとしたその時、誰かが突進してきた。くるりとかわす。
「わわっなんでかわすの〜受け止めてよ、はるちゃん!」
そう、先程お話した久遠智也だ。
「いや、普通かわすだろ」
ぶつかったら痛いもんな、こいつ馬鹿力だからな。
「ええ〜そんなものなの? まぁいいや! 」
こいつは適当主義なのだ。口癖は「まぁいいや」。俺は全然まぁ良くねぇけどな。
「というか今日のオカ研の定例会なんで来なかったんだよ!」
俺は智也を小突いた。
「ごめん、ごめんて! 普通に忘れてたんだよっ。まぁまぁ、怒りを抑えて、ちょっと近くの商店街寄って帰ろうよ」
否応なしにズルズルと連れていかれる。本当に馬鹿力だ。
実は俺はこの
ああ、ちゃんと行ったことがないってどう言うことかって? 行ったことがないと言うのは、なんというか言葉の綾だ。行ったことは何回もある。
俺はこの辺に住んでいるのだが、買い物は大体、母親と姉貴が行ってくれる。俺はじっくりこの商店街を見回ったことがないのだ。最近は100円ショップとカラオケ、ドラッグストアぐらいしか行っていない。
もう一つは大学から帰る時、この商店街を通って帰ると遠回りになるからだ。近い方がいいじゃない! そう思いませんか?
『
大阪府晴嵐市にあるしがないアーケード商店街だ。結構な賑わいで、主に観光客目当てであるが、普通に地元の人間の方が多い。
おっとここで
『
晴嵐市は泡沫山の麓にある学園都市で、その名の通り学校が多い。この都市は頻繁に霧が発生するという特徴があり、その霧がとても神秘的で霊的だという世間の評価からたくさんの観光客が訪れる。店や学校にも「霧」関連の名前がよく使われている。
地元のみんなの誇りなのだ。
『
その都市に所在するのが翠霞院大学だ。
ここ晴嵐市の高校生はほとんどと言っていいほどの人が受験をする。
綺麗な校舎とは裏腹にこの大学は歴史が長い。
伝統ある大学なのだ。
最近立て替えたばかりで規模も大きく何よりとても綺麗だ。体育、音楽、勉強、研究の設備も充実。全国から生徒を募集しているため、寮も設備されている。
図書館などの色々な施設がある中、サークル棟というものがある。専用の設備を必要としない主に文化系のサークルの部室があり、俺たちオカルト研究部の部室もそこにある。
翠霞院大学のオカルト研究部は有名で、大学創設時からあるらしい。オカ研にはいるために翠霞院大学に入学したと言うやつがたまにいるくらい、ここ晴嵐市はオカルト界隈では有名なのだ。
元々俺はサークルに入る気はなかったが、智也に無理やりオカ研に入部させられた。
俺は基本的に非現実的なことは信じていない。オカ研のメンバーは妖怪だのUFOだのワーワー言っているが、そんなものはいるはずがないと思っている。
***
「へ〜この時間帯ってこんなに活気だったっけ、もっと夜遅くに行ってるからなぁ」
「でしょ〜いいお店が沢山あるんだよ! 美味しいコロッケとか〜唐揚げとか〜後はね……」
智也の話を聞き流して商店街を見て回っていたら古書店に目が止まった。
「どうしたの? あっ古書店がある〜! 俺本好きなんだよね〜何回も商店街行ってるけど、あるの知らなかった〜なんでだろ〜まあいいや! 行こ行こ〜!!」
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