第12話 素敵な夕食
オットーたちが慌ただしく列車に戻ると、間もなく列車は走りだした。走りだしは、やっぱり車内が激しく揺れた。オットーは転ばないように、しっかり椅子に座って、テーブルにつかまっていた。バートとミランダ、アリスは慣れたもので、平然と椅子に座っていた。テーブルの上には、先ほど買ってきたフライパンや夕食のビーフシチュー、大きなパン、ホットケーキの粉なんかが、一箇所に固められて載っていた。それがテーブルと一緒に元気よく揺れた。
列車が出発してしばらくして、窓の景色は温かな橙色の後に、日暮れを迎えた。外は暗くなった。その頃には、引っ越しの家の中に電灯の明かりが点った。
その日の夕食は、とても心地の良いものだった。ビーフシチューは特別に美味しかったし、大きなパンはふっくらして食べ応えがあった。
オットーはアリスにならって、大きなパンに手を伸ばした。楽しい話をすると、食欲も増してくる。つい食べ過ぎてしまうのが玉にきずだ。
それから、これからの旅の話をした。オットーの家庭教師の話も出た。
「何を教えてくれるの?」
お腹一杯で満足したオットーが、後片付けをするアリスのお手伝いをした。
「魔法についての初歩的なことだよ。実はね。小さな子が習うことなの」
アリスが小声で言った。
「ぼくでも分かること?」
魔法のことを何も知らないで暮らしてきた、オットーはそう聞かずにはいられなかった。
「そう難しくなんてないよ。でも、オットーは小さい時から魔法に馴染んでなかったから、最初は戸惑うかもしれないね」
「まあ。オットーは魔法が使えないのだから、それほど注意することも少ないでしょ」
ミランダは、テーブルを布巾で拭いていた。テーブルの上はすっかり片付いていた。
「魔法が使えると、そんなに注意することがあるの?」
オットーはアリスの横に立って、ミランダの方を見た。
「そうね。小さい子は魔法が使えると、ついうれしくなって、人前で闇雲に魔法を使いたくなるものなの。魔法を使うときには、第一に気をつけなければいけないことでしょ」
「なるほど、そういうことか」
オットーにもその気持ちが十分に分かった。オットーだって魔法が使えれば、夢中で使いたくなるだろう。
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