第2話 『あなたに会いたいです。』

 大学一年生になって二か月が過ぎた頃、秋月あきつきと名乗るアカウントからLINEが届いた。

『突然、連絡してごめんなさい。あなたに会いたいです。返事、待ってます。』

 そのメッセージを読んだ時、悪質な嫌がらせだと思った。相談相手もいないので、とりあえず数日放置してみたが、その後、秋月あきつきと名乗るアカウントからの連絡はなかった。

 もし秋月君が私に会いたいと思ってくれているのなら、私は彼にもう一度会いたい。金銭を要求されるようなことがあったら、すぐにその場から逃げればいい。

 意を決して、私は秋月あきつきと名乗るアカウントに返事を送ることにした。

『久しぶり。いま、どこにいるの?』

『東京。新宿に住んでるよ』

 秋月君は東京に引っ越したのだから、東京にいてもおかしくはない。

『私もいま東京にいるよ。いつ会える?』

 東京に行けば秋月君に会えるような気がしたから、東京の大学に進学しただなんて、口が裂けても言えなかった。

 結局、数日後に私たちは都内で会うことになった。これは夢なのかもしれないと思いながら、その日が来るのを待っていた。


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